ロン毛の歌うたい君が選挙に出たら?~『「自分ごと」だと人は動く 』

「自分ごと」だと人は動く
『「自分ごと」だと人は動く』
博報堂DYグループエンゲージメント研究会
ダイヤモンド社
1,575円(税込)
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 日々、膨大な量の情報に囲まれている現代の生活者たちは、メディアを通して流れる情報の99%をスルーしています。では、消費者に選ばれるためには何が必要なのでしょうか。博報堂DYグループエンゲージメント研究会が調べました。

 その前にまず、このお話を。
 
 朝、通勤時の駅前にいる2人の若者。どうやら次回の選挙に立候補を予定しているらしい。一人は演説上手。自己紹介からはじまって、どういう活動をしていて、これから何を成し遂げたいか、夢を語りかけてくれます。もちろん身なりもキチンとした「政治家予備軍」。

 もう1人は、ロン毛の不思議君。ギターを弾きながら世の中の問題点を調子はずれの歌に乗せて訴えかけます。選挙の立候補としてはあまり見たことのないタイプです。
 
 どちらにあなたの清き一票を投じるか・・・は別にして、はじめてその2人を見かけた時に、あなたの目と耳とはどちらの若者に向くでしょうか。おそらく、多くの方がロン毛の歌うたい君が気になるはず。「なんで君みたいな人が選挙に出るの??」彼を目にした人全員が、同じようなコトバで「突っ込み」たくなるのではないでしょうか。

 こうした目立ち方、「突っ込みどころ満載で目立つ」ことこそが、今の時代に有効なコミュニケーションの第一歩。

 情報があふれる世の中では、「ちゃんとした候補者のちゃんとした情報」はスルーされがち。生活者は普通の、言い換えれば、どこか既視感のある情報に目をやる暇を持ち合わせていないのです。少々厳しめの言い方をすれば、普通の情報は価値が低い。

 現在活躍している広告クリエイターたちは、生活者を「広告の観賞者」ではなく、「情報体験のユーザー」として意識しています。そして、情報体験してもらうためのキーワードとなるのが「凸と凹」。最近評判の広告にはこの「凸と凹」の要素が多く含まれています。凸とは、生活者が興味や関心のきっかけを持てるような体験への「デッパリ」をつくること。凹とは、生活者が共振・共鳴・参加できるように、関与したくなる「クボミ」を用意して誘うこと。クボミの存在を生活者に委ねて託し、誘いこんでいくのです。参照する、話題にする、口コミする、質問する、クリックする、入力する、保存する、そう、これらの行為は「突っ込み」を入れることと同じ。

 情報をうまく「自分ごと」として受け取ってもらえれば、行動につながります。いまの時代、コミュニケーションのなかに「!」や「?」を仕込み、相手に行動させることが大切のようです。

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