第27回

 10月号の表紙撮りも週明けの月曜日(7/7)に行っている。モデルは、佐藤恵美('69年11月30日生まれ、埼玉出身)。彼女が「投稿写真」の表紙を飾るのは、実は2回目。後になって、アイドルオタク向けに方向転換してからは、同じタレントが何度か表紙を飾るのは珍しくもなくなったが、基本的に女子高生モデル(タレントではない)を使っていたので2度表紙に登場したのは、佐藤恵美が初めてだった。

 最初に登場したのは、'85年の2月号で、渡辺裕美という名前で出ている。彼女が事務所に入るきっかけとなったのは、原宿でのスカウトなのだが、スカウトしたのは事務所の関係者ではなく、所さんの話の中で「いかがなものか」と書いたスタイリストのKだった。少しレズっ気のあるKは、街に出るとかわいい(自分好みの)女のコを見つけては、声を掛けたりしていたらしい。とある日、原宿で佐藤恵美を見かけたKは、あまりのかわいらしさに矢も盾も止まらず、話し掛けてモデルにスカウトしてしまったそうだ。芸能界広しといえども、スタイリストにスカウトされたのは、佐藤恵美くらいだと思う。

 こうした経緯だと、フツーなら水着モデル→下着モデル→セミヌード→(18歳になるのを待って)→ヌード→AV女優と使い捨てられるのがオチなのだが(実際、表紙に続く'85年3月号で「Bathrooom Fantasy」(「BUBLLE SISTERS」の前身)でセミヌードに近い裸身を披露している)、素材の良さが幸いしたのだろう、事務所が正式に決まってからは中山美穂が主演のドラマ「毎度おさわがせします2」や「夏・体験物語2」、CMに出演したり、この年('86)には『キャンパスの恋人』でレコードデビューとアイドル街道まっしぐら。そのため、「投稿写真」とは逆に縁遠くなってしまっていたのだが、8月号でタイアップのフォトコンテストとファンクラブ会員募集告知で復縁と相成った。そして、この撮影の外撮りとグラビア撮りの写真を使って、9月号でダメ押しの告知を行い、10月号では、表紙に再登場(佐藤恵美としては初登場)と大盤振る舞いだ。

 そんな(本誌的には)大プッシュの佐藤恵美だが、実はオレの記憶にはあまり残っていない。確かに、それまで立ち会った撮影のモデルの中では、間違いなく一番の美少女なのだが、("ポワァ~ン"としたコだなあ)という印象のみで、他のアイドル達に感じられるオーラのようなものは全くと言っていいほど感じなかった。決して、性格の悪いコではなかったが、掴みどころがないというか...どう表現していいか分からないのだが、アイドル業界の格言「美少女はアイドルに向かない」を体現していたとでもいえばいいのだろうか? 結果的にだが、佐藤恵美は早々にアイドル界から姿を消してしまった。