第29回

 波乱と怒濤の9月号の進行が終わると息つく間もなく10月号の進行が始まった。スタッフは、(9月号の編集会議の時、知らされた通り)哲也さんとK先輩が抜け、南さんと新規のアルバイトの川崎敦文が入ってきた。人数的には変わらないが、入社4カ月目のオレがスタッフでは最古参なのだから、戦力ダウンは否めない。そのため、抜けた人の分の担当分けで、「小泉優のカレッジGals大活劇」(かわいい女のコがいそうなイベントなら何でもありのレポート企画)と「被写体の時代」("どう写真にカッコよく写るか"を追求するサブカル企画。ライターは、ほりいけんいちろう)の担当が、オレに回って来た(もう肩、重すぎ!!)。

 編集会議では、10月号は、創刊2周年に当たるが、まだ通過点みたいなものなので、特別な記念企画とかはやらないが、せめて読者プレゼントページぐらいは予算を取って少しは豪華にしようということになった。

 プレゼントの目玉は、「スーパーマリオブラザース」に続く「ドラゴンクエスト」のメガヒットで、大人気のファミコン。それまでは、編集部で買い取ったカメラやレンズ、取材したタレントのサイン色紙と「世間流行mono通信」で紹介する告知がらみのサンプルやノベルティだけで、最終ページにチャチャとやってお終いのお気楽ページだったのだが、いきなり片観音に格上げ。担当のオレは、芸能事務所へのアポ撮りと並行して、カメラ・レンズメーカーに協力を電話でお願いすることと相成った。その上、目玉のファミコンが、品薄にして人気を継続させる任天堂商法(というか、これで味をしめて始まった商法なのかもしれないが)のおかげで新宿界隈のショップを何軒ハシゴしても品切れの嵐。物撮り写真を掲載するだけなら、どっからか写真のみ手に入れて間に合わすこともできるが、モデルやアイドルに賞品を持たせた絵を掲載するので、撮影日までに実物を用意しなければならない。背に腹は代えられないとばかりに、ファミコンを持っていそうな知り合いに電話しまくった。

「壊したら弁償だからな」

 ホントに嫌そうな顔をしながら、渋々貸してくれたのは、「本の雑誌」現社長の浜本さんだった。

 プレゼントページで難儀したのとは裏腹にタレントのキャスティングは、順調だった。まず、10月号は記念号だから、巻頭グラビアはアイドルの水着でという編集長の注文(芸能担当になってまだひと月だというのにかなり無茶)には、江戸真樹の事務所がOKしてくれたので、クリア。当時の手帳には、目の不自由な人、蛇に怖じずのたとえではないが、城之内早苗の事務所にアポを取っていたメモ書きがあったりするものの、そんな無茶が功を奏したのか、「FIインタビュー」にサンミュージックの酒井法子、「アイシミュ」に東宝芸能の藤代美奈子と記念号にふさわしい(?)顔ぶれとなった。