第31回

 江戸真樹の撮影のあった同じ日の夕方は、「アイシミュ」の撮影・取材。藤代美奈子('68年11月16日生まれ、東京出身)は、'84年の第一回東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞(ちなみにグランプリは沢口康子、準グランプリは斉藤由貴)受賞というそうそうたる肩書きが付いていた。受賞から2年近く寝かされていたのは、学業優先でじっくり育てる事務所の方針だそうで、その目途がついたのか(翌年東京農大に入学し、ちゃんと卒業している)、'86年春に女優・声優・歌手とトリプル・デビューを果たしたばかりだった。

 そんなコが、なぜ「投稿写真」に出てくれたのか、当時のオレはアポが取れただけで満足していたので、考えもしなかったが、今考えると事務所の東宝芸能は、俳優のプロダクションであって、アイドルタレントの事務所ではない。斉藤由貴のブレイクがなければ、女優+アイドル路線という展開はありえなかったと思われる。だが、人気が出てからの展開と一からの展開では、勝手が違ったのだろう。モデルが主体のボックスコーポレーションと似たような事情が背後にあったのは間違いなさそうだ。

 藤代美奈子は、2年間のレッスンのせいか、受け答えはソツがなくしっかりとしていて、同じ年代のキャピキャピした新人アイドルとは、違った雰囲気を持っていた。しかし、それは逆にいえば、優等生的で引っ掛りがなく、主役を張るようなオーラは欠けている気がした(審査員特別賞という微妙な冠がなんとなくうなずける)。やはり、餅屋は餅屋、女優として地道に育てていれば、よかったのではないかと思う。