8月1日(木)天下を取る
営業を終え夕方会社に戻ると、早川書房のYさんが成生隆倫さんを引き連れてやってきた。成生さんは新宿駅の書店員さんで、今年の本屋大賞で金髪の勇姿が中継配信に映り、「ホストの書店員さん?」と話題になっていたのだった。
前日売り場を覗くと、成生さんはご不在だったが、そこかしこに推しコメントを書いたPOPが立てられて、おすすめ本が展開されていた。
缶ビールを飲みながら、いろいろと話す。駅中書店といえば、かつて上野駅で数々の本をベストセラー仕立て上げた上村さんや長谷川さんという書店員さんたちがいたことを老婆心でお伝えすると、31歳の成生さんは「僕も天下を取りたいです」と真顔で答えるのだった。
あまりに露わにされる野心に思わず笑ってしまいそうになったが、よくよく考えてみると私も成生さんとまったく同じ歳のときに、「出版業界の坂本龍馬になる!」と息巻いて、本屋大賞創設に力を傾けたのだった。
そして目黒さんが言っていた言葉を思い出した。
「若いときは生意気なほうがいい」