8月18日(日)北上次郎の勘
実家で介護しながら、北上次郎さんの『新刊めったくたガイド大大全』(2025年1月刊行予定)のゲラを読んでるのだが(1200ページあるから読んでも読んでも終わらない)、辻村深月『凍りのくじら』(講談社ノベルス)を評した2006年1月号でこう書いているのだった。
「厳しく書けば、まだ未完成だ。しかしここには原石がある。数年後を楽しみに待ちたい。」
辻村深月以外にも、そもそも北方謙三や大沢在昌や意外なところでは島田荘司やらほとんどのエンタメ作家をデビューから見守っており、こうした勘はあちこちで冴え渡っているのだった。池井戸潤の『オレたちバブル入行組』では、「テレビドラマの原作にぴったりなんじゃないでしょうか」とまで書いており、思わず鳥肌が立つ。
それなのに、思い出してみれば北上さんから「ほら、おれの言ったとおりだろ?」みたいな自慢は一切聞いたことがない。
この書評集は、まさしく日本のエンタメ小説の歴史の書になるだろう。