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11月23日(土)金子玲介『死んだ木村を上演』

  • 死んだ木村を上演
  • 『死んだ木村を上演』
    金子 玲介
    講談社
    1,925円(税込)
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金子玲介『死んだ木村を上演』(講談社)読了。やばい。凄すぎだ。

8年前に演劇サークルの合宿中に死んだ木村の死の真相を探ろうと同級生がその日を再演するという脚本が作中作的な構造になっているんだが、たいていこの手のものは読者を置いてけぼりにきたりするものだ。ところが夢中になって読んでしまうのだった。

それはなぜか? デビュー作である『死んだ山田の教室』でもその力が存分に発揮されていたけれど、この作者はとにかく会話文が上手い。鉤括弧の"「"「をさらに"「"でかぶせてきたり、会話の流れがめっちゃリアルなのだった。女優となって人気者の咲本がいう「そだよ」なんて声が聴こえてきそうだし、その一言でキャラが立ち上がってくるのだ。

今年の5月に『死んだ山田と教室』で衝撃的デビューを果たして、その3ヶ月後に『死んだ石井の大群』を、さらにまた3ヶ月後にこの『死んだ木村を上演』を刊行する快挙の中、それぞれの作品に趣向が凝らさせる技量にも驚くが、バラバラの作品の根底に金子玲介の確固たる個性が貫かれているのがすごい。この著者は、後悔の向こうに希望があるこ、いや絶望から生が導かれることを伝えたいのだろう。

2024年は金子玲介の年だったのだ。

週末実家介護。晴れてるものの風が強く、父親墓参りと散歩はとりやめ。

持ってきていた著者校のゲラを書き写し作業に没頭する。

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