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12月17日(火)山田裕樹『文芸編集者、作家と闘う』

「普通なら初版二万部だが、ゲラを読んでみて、やりようによってはかなりの部数まで化けるかもと感じる作品があったとする。販売・宣伝の現場担当者には、後者の方をやりたがるスタッフも少なからず存在した。そういう彼らと仲良くなり信用してもらうと、編集者の仕事は格段にやりやすくなるのである。」

山田裕樹『文芸編集者、作家と闘う』(光文社)読了。

著者本人も「引退した老人の自慢話と読まれても構わない」と言っており、所々そう感じないでもないけれど、それを圧倒する実績と独特な語り口、そして何より小説を愛し過ぎてる姿に引き込まれた。

山田裕樹氏は、北方謙三、逢坂剛、船戸与一...と錚々たる作家と並走した集英社の名物編集者で、その様々なやりとりと小説論、編集ノウハウが記される。

そして上記に引用したとおり、この編集者は社内を巻き込むのが上手い。熱を伝えて、しっかり宣伝や営業をその気にさせて、愛する小説を売っていく。売るからこそ作家に信頼されていったのだろう。

原稿が届くと「いやあ、面白かった」といった後に、「しかし、もっと面白くする方法があります」と続けるのが得意技だったそうだ。

面白くする方法を考えられる編集者が、今、どれほどいるだろうか。

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