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2月9日(日)暗黒の世界

日曜日は実家の各部屋に掃除機をかけ、雑巾掛けをする。そうしていると呪詛の言葉があふれてくる。父親の仏壇に線香を立て、白く立ちこめる煙とともに吐き出す。

なぜに掃除をしているときにあふれてくるのだろうかというと、そもそも実家の掃除自体が無駄な行為であり、その無駄な行為を一生懸命している矛盾にネガティヴな気持ちが起きやすくなるのだろう。

母親と話していて一番暗黒の気持ちになるのは、「この家(実家)もあんたのものになってよかったね」という言葉だ。

母親からしてみたら父親とともに必死に手にした人生唯一の財産を、子供に残せたことを誇りに思っているのだろうが、現在、私は住むところに困っておらず、実家は余計な所有物以外なにものでないのだった。

母親の死後、実家を処分していくばくかのお金を手にしたとしても、その金額の多寡に関わらず、そのためにうまれるだろう山のような面倒を考えると明らかに「負動産」なのだ。

そんなことを一切考えたこともなく、誇らしげに話す母親の言葉は私を暗黒の世界に引き摺り込む。よもやお墓も含めて何も残さないというのが、子供にとっていちばんの幸せなんて考えたこともないのだろう。

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