3月7日(金)佐久間文子『美しい人 佐多稲子の昭和』
夜、ジュンク堂書店池袋本店で開催された『美しい人 佐多稲子の昭和』(芸術新聞社)刊行記念の佐久間文子さんと平山周吉さんのトークイベントに参加。
イベントの冒頭、この本を作った芸術新聞社会長の相澤正夫さんの訃報が告げられる。
相澤さんは75歳という年齢で都リーグに所属する現役のサッカー選手でもあり、私も一緒に出版健保の体育館でボールを蹴ったり、またことあるごとにランチやお酒をご一緒し、出版業界のあれこれを深く楽しく教えてもらった先輩だ。
いや、出版業界の先輩というよりは人として尊敬する人物であり、気持ち的には頼りになる叔父のような、もっと言ってしまえば歳の離れた友達のような、そんな思いで長年ご一緒させていただいていた。
体調不良は伺っていたのだけれども、先週にも本人からイベントの案内が届いており、この日に会えるのを楽しみにしていたのだ。
そんなところに訃報である。
佐久間文子『美しい人 佐多稲子の昭和』は、13年前に相澤さんが佐久間さんに依頼し、去年の11月にやっとやっと念願叶ってできあがった本なのだ。
出版が相澤さんの人生に間に合ったのは行幸である。けれど檜舞台であるはずのイベントの週に亡くなってしまうとは、本の神様はなんて残酷なんだろうと少し呪ってしまった。
相澤さんと古くから親交のある登壇者の平山周吉さんが報告されたところによると、6日前の3月1日に、『美しい人』の書評が朝日新聞に掲載され、「よかったね」と連絡をしたが返信はなかった。実はその3月1日土曜日に相澤さんは体調を崩し、入院されていたというのだ。
また本の神様を呪いそうになってしまったが、平山さんがご遺族に確認したところ相澤さんはその書評を読んだそう。
坪内祐三さんとお酒を飲んだ時に坪内さんがおっしゃっていた言葉を思い出す。
「杉江くん、本はね、墓標なんだよ」
本の神様に感謝。
そして、相澤さんに、たくさんたくさん感謝。