3月29日(土)朝比奈秋『受け手のいない祈り』
明日のイベントのため週末介護はお休み。母親にはショートステイで施設にいてもらうのだった。
朝から朝比奈秋『受け手のいない祈り』(新潮社)を読み出す。読み始めてすぐあーこれ絶対面白い本だとわかった。
「夜の最後尾にいて今から誰よりも遅い睡眠をとるはずが、私はもう朝の先頭に追いやられていた。先に寝た者はその後も私が働いていることを知らず、これから起きる者は私が前から働いていることを知らない。」
主人公の公河は、「誰の命も見捨てない」を院是に掲げる病院に勤務する外科医なのだが、二日も三日も家に帰れず食事もままならぬなか働き続ける様子が恐ろしいほど克明に綴られる。
"プロレタリア文学"というのは、確か工場やブラック企業などて働く労働者の小説だと思っていたのだが、今やエリートであるはずの医者もそれ以上の労働者になっているということだろうか。
なによりも徹夜仕事をこんな文章で表現される小説がつまらないわけないのだった。
その安心感というか喜びというか、今日一日何があってもその本を読んで過ごす時間だけは絶対幸せになると確信する。
夜、読み終え、はじめに想像していた以上の面白さに感服する。なぜか朝比奈氏と芥川賞を同時受賞した松永K三蔵の『バリ山行』(講談社)と共通点があるような面白さだ。
松永氏の提唱する「オモロイ純文学」がとても増えている。