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4月1日(火)一万円

「父ちゃんこれ。鹿島戦と町田戦のチケット代」と言って、晩飯を食べている私に息子が五千円札一枚と千円札五枚の束を差し出してくる。

これまで浦和レッズのチケット代はすべて私が支払っており、もちろんそれを催促することもなかった。

先月より息子は働き出し、どうやら初めての給料がでたらしい。これからは自分のチケット代は自分で払うということだろうか。

この一万円は、「北の国から」で黒板五郎が純を東京まで乗せていってくれるトラックの運転手に渡した泥付きの一万円札に匹敵するのではなかろうか。泥はついていないけれど、寒風吹き荒ぶ中グラウンドに立って、サッカーボールを追いかけて息子が手にしたお金だ。

「おう」と何気なく受け取りつつ、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、グラスに注ぐ。津田梅子と北里柴三郎を眺めながら喉に流し込んだ。

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