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10月15日(水)古書会館に着くまでが買取

朝8時に出社。久しぶりの神保町。京都は木の匂いが、しかも時の経った材木の匂いがするけれど、神保町はどこかしら紙の匂いがするのだった。

出張中に溜まっていた郵便物やデスクワークを片付けるのも大変なのだが、本日は午後にスッキリ隊精鋭部として出動せねばならず、その前に10時からオンラインの座談会の収録と、さらに10月の杉江松恋、マライ・メントライン『芥川賞候補作全部読んで予想・分析してみました 第163回~172回』の初回注文締め作業をしなければならないのだった。

年に1日あるかないかの超多忙日なのだが、中学の同級生から麻雀のスケジュール調整を頼まれるわ(しかも二度再調整させられる)、AISAの渡さんからは忙しいと伝えた2時間後に、「オーストラリアからいとこがくるのでいい居酒屋教えてください」なんて能天気なメッセージが飛んでくるはで、キリキリ舞させられる。

そういえば京都で食事した鴨葱書店の大森さんが、ChatGPTを利用して、将来私が独立したときの出版社の理念を作ってくれたのだった。

す すこし変でも、面白ければいい。
ぎ ぎりぎりまで悩んで、笑って、本を出す。
え えらそうな本より、ええ本を。
よ よむ人も、つくる人も、たのしめる場所を。
し しずかに見えて、実は大騒ぎ。
つ つまらない世の中を、ちょっとひっくり返す。
ぐ ぐっとくる一冊を、今日も探している。

声に出して呼んでいるうちに精神が落ち着き、諸々のデスクワークと座談会の収録を無事終える(トーハンのEN-CONTACTは登録する段になって事前注文の取り出しを忘れていたことに気づくといういつものポカをしたけれど)。

昼過ぎに会社を飛び出し、都内某所へ。立石書店の岡島さんの車に乗り込み、住宅地の一軒家にたどり着く。

引っ越し間近で部屋中段ボールで埋め尽くされているのだけれど、そのすべてが本だそうで、その数約180箱。これらとは別に床からにょきにょきと生えている本タワーが本日の整理依頼分であり、こちらは約4000冊。いったいこのお宅にどれだけの本があるのか想像するも、その前に床がべこべこしていて、足元に気を付ける。

まずは二階からということで、岡島さんが本を縛り、私が運ぶを繰り返す。急な階段を二本の本の束を持って降りるのはかなり不安定なのだが、そこは「階段のファンタジスタ」と呼ばれる私である。足元に力を入れ体幹で踏ん張りながら登り降りを繰り返す。

しばらくすると全身から汗が吹き出し、鼓動が強くなり、息も荒くなってくる。いつ終わるのだと思う気持ちを必死に抑え込み、ただ本を運ぶマシーンになりきるのだ。この無心の瞬間こそが買取の楽しさである。

3時間ほどかけてワゴン車一台分約2000冊の本を運び終える。残りは明日の作業とする。

しかしこれでスッキリ隊の任務が終わったわけではなく、この後神保町の古書会館まで車を走らせ、市場への出品用に本を下ろさなければならないのだった。

「家に着くまでが遠足」ならば「古書会館に着くまでが買取」なのだった。いや、この後、出品用に本の組み替えもあるのだから、古本屋さんの仕事というのはつくづく大変な仕事である。

夜、そんな本の雑誌スッキリ隊がバズる。

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