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10月28日(火)間違う力

夕方、AISAの小林渡さんと高野秀行さんの家に向かい、初出店する「文学フリマ」の打ち合わせ。

今回は高野さんの初ZINE『チャットGPT対高野秀行 キプロス墓参り篇』(B6並製 132ページ 1300円税込)という旅行記と、『寛永御前試合』(B6並製 72ページ 1000円税込)というプロレス剣豪小説を作り、販売することになっている。

作り始めたら写真を入れたり、地図をつけたり、しまいにはカラーページを作ったりと日頃やっている仕事となんら変わりなくなってしまい、もうZINEなんて二度と作らない!と絶叫寸前となっていたのだけれど、高野さんと渡さん曰く、そうなったのは私のせいで、お二人はもっとゆるいものを考えていたという。

ビール片手の高野さんから「なんで杉江さんがこんなに本気になってるのか不思議に思ってたんだよ」と言われ、「完全に杉江さんの間違う力の暴走だよ」と呆れられたときには愕然となった。

そ、そうなのか......。私が一人相撲をとっていたのか......。私はてっきり逆だと思っていたのだが、いったい私はどこで間違えたのだろうか。

ひとつはやはり人のものを作るというところだ。これが自分の日記をまとめたZINEならば肩の力も抜け、売れなくても当然という気分で作れたはずだ。

それが人の本、特に高野さんの本となればやはり通常の仕事モードに突入せざるを得ない。

さらにこれを「売ろう」と思ってしまったところだ。原価計算をして、損益分岐点を出し、何部売れたらいくら利益がでるなんて皮算用をしてしまった。ZINEだから儲ける気もないのに、やはり本を前にすると私は儲けるのが至上命題になってしまう。これはもはや職業病だ。

会場に何冊持っていくか、釣り銭はどれくらい用意したらいいのかなど3人で話し合っていると、高野さんがぽつりともらした。

「50歳過ぎて、こんな文化祭みたいにワクワクことがあるのすごいよね」

そう、そのためにZINEを作っているのだ。

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