実践編 第2回 平台の試行錯誤その2

 前回、弟子ヒラヤナギの平台を試行錯誤してから早1年が経ってしまいました。教えたことも忘れちゃう昔です。
 この間に弟子ヒラヤナギは異動になり、なんと書店の現場を離れて行ってしまいました。いつかどこかで、あの平台で汗をかいたことを思い出してもらえればと思うこの頃...。

 さて、気を取り直して、今回もよりよい平台つくりに挑戦します。どうぞお付き合いください。

 弟子がいなくなっちゃったので、今回のイケニエは薹の立った新人イトーです。
 彼は全く違う畑からリブロ池袋本店にやってきました。社員になって4ヶ月、ビジネス書フロアに配属されています。

 実はビジネス書はワタシの担当ではないので、ときどき様子を伺うくらいだったのですが、あるとき新人イトー曰く「平台をつくったんですけど...」。ということで見に行きました。彼が担当している就職関連書の平台、就活解禁に合わせてつくったところ。

バージョン1<平台部分>

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 この平台は幅120㎝×奥行100㎝、高さは40㎝で低め。大きな柱の前にどんとあります。柱にはシャッターパネルが取り付けられ、パーツを使えばそこに本を面陳することも可能。ただ、柱が大きいので、平台の前に立つと左側も右側も棚が視界に入りにくく、独立した平台のように見えます。

 就職関連書はこの平台の左側通路を入った突き当たりにあります。つまり、本来の棚とは結構離れた位置に大きな平台があるということになります。

 まあキレイに積んであるなーと思いながら見ていくと、少々気になることが出てきました。

ⅰ)商品の高低差がありすぎる。シーズンだからこそ平台をつくったはずなのに最前列左側4点と右側6点はあまりに貧弱な商品量のような気がしますね。

ⅱ)最奥に見え隠れするアクリル台も、いくつも使っているみたいだけどアンコとして本当に必要なのかしら。

ⅲ)最右奥の『業界地図』の不思議な置きかた。どうやって直立しているんだろうか。欲しいと思ったお客様は負荷なく手に取れるのかな。

ⅳ)そしてこれが一番びっくりの、『最新最強のSPIクリア問題集』と『これが本当のSPI2だ!』という2点の本の配置。

 最初はわからなかったのですが、目がSPIの文字づらに慣れてくると、目に飛び込んできます。

 つまり、この2点とも手前2列目に1面だけ積み、1列おいて最奥列に『最新最強~』は3面、『これが本当の~』は1面と再度積んでいる。

 これはいったいなんだろう? 新人イトーはどういう心の動きでこうしたんだろう? これがいちばん売りたいのだろうけれど、最奥列の3面や1面分はどうせ取りにくいのだからとストックのつもりかな。驚きを通り越し、しばし黙考。

 なぜオカシイか説明してあげねば、次もまたやってしまいます。

 売りたいものの面の数を多くすること自体はOK。でも離れて置いては迫力半減、隣り合わせて置いてこその威力発揮なのだから、すぐ直しましょう。

 それに売りたい商品なのだからまだ在庫を持っているはず。在庫があるにもかかわらずアンコ使用ということは労力を惜しんでいる証拠。売るために仕入れた在庫はなるべく店頭へ出し切るようにして。

 ありすぎる高低差も解消しましょう。後ろが高く、手前が低くという原則は間違ってませんが、ギアナ高地のような極端な崖は不自然です。
 最前列はいちばん売りたい商品を置いたはず。ウチは売りたいものは全部在庫僅少です、みたいなちぐはぐな居直りを感じます。
 手に取りにくい『業界地図』4面も平台に積み直しましょう。

 そして、実はこの平台は点数があり過ぎかもしれません。
 ここは柱前の独立した平台で、本来の就職関連書とは遠いと言いました。ということは、この離れた平台に置けるかぎりのたくさんの点数を積んでしまうと、お客様はかえって「就活ってこれだけしか無いのね」と思ってしまうのではないかしら。

 本当は奥の棚にたくさん置いているので、もっと見てみたいわと思ったお客様はぜひ奥に足を運んでください!というメッセージも含んだ平台にしたい。狭い売場に、就職関連書棚と、その10分の1縮尺版の両方をつくっても意味がない。

 ワタシは、棚と棚下平台と、そしてこのような独立した平台、すべて使いかた、というか果たす役割を明解に区別して、そして徹底して使い分け続けることが、より売れる平台に育てる秘訣だといつも思っています。

バージョン1<シャッターパネル部分>

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 これはこの平台前のシャッターパネル。平台で何をやっているかの看板が掲げてあります。

 でもなんだか全体に間延びしていて、ぼんやりした印象。平台に積んでいない商品が2点面陳になっているのも気になります。

 こちらも手を加えていきましょう。

ⅰ)まず、この看板は面陳用パーツを使わずシャッターパネルに直に貼り付け、商品と違う奥行感を出すようにしてみよう。そうすれば、お互いに多少でも目立つようになるのでは?

ⅱ)奥に就職関連書があるという案内も必要ですね。きちんと作って掲出しましょう。

ⅲ)見場をよく考えて、面陳する商品の点数と配置をベストの状態にしよう。ある程度の商品量を想像させる点数とバランスの良い配置。

ⅳ)お客様が手に取れない場所だからこそ、平台と同じものを陳列するようにしよう。
ということで、新人イトーに宿題。数日後にまた見に行きました。

バージョン2<平台部分>

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 あらあ! だいぶ良くなりました。

『最新最強のSPIクリア問題集』と『これが本当のSPI2だ!』は倉庫にあった在庫が全部店頭に出てきました。当然アクリル箱の出番はなくなり、奇妙な平台の隙間もなくなってスッキリしましたね。

 点数も絞られ、売りたいという商品が前に出て、わかりやすい平台になったと思います。

 欲を言えば、

ⅰ)まだ崖が切り立ったままですよ。なんでそんなに在庫が無いのかな。売りたい、そして売れる商品と在庫量が相応してないのではないでしょうね。

ⅱ)積みかたが汚い。最初からこんなに汚いと明日はもっと汚くなる。垂直に積み上げる癖を身に付けて。これはキホン。

ⅲ)今度は、最奥の隙間をなんとかしましょう。もったいない。それにその隙間を放置すると、平台の商品は前に立つお客様に押されてどんどん奥にずれていってしまいます。見た目も美しくなく、直す手間もかかります。

バージョン2<シャッターパネル部分>

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 うーん。看板はパネルに直に貼り付けられました。が、それだけ。
 これはワタシの意図がうまく新人イトーに伝わらなかったのですね。反省せねば。
奥に関連書ありの看板は制作中とのこと。いずれにしても、これはまだまだ課題多し。

バージョン2<全体図>

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 全体を見渡すと、やはりこの柱のシャッターパネル部分はもっと有効的に使えるのではと思います。もともと白っぽいので余計に余白の多さが手の入らなさを感じさせてしまうせいかもしれません。

 奥に繋がる棚に関連付けて陳列することができない場所では、その分、商品力と見せかた並べかたの魅力をより発揮しないと、お客様は素通りしてしまいます。ここはまだお客様の足を止める力が不足している気がします。

 ということで、次回も新人イトーとともにこの平台のブラッシュアップに挑戦します。