「人の死」に迫る大宅賞受賞作
文=東えりか
本年度の大宅壮一賞2作が発表となった。一作は、被災別部落について長く取材を続けている上原善広の『日本の路地を旅する』(文藝春秋)。もう一作は川口有美子『逝かない身体』(医学書院)である。『日本の路地を旅する』は発売当初から注目を浴びていたが『逝かない身体』は積読だったので慌てて読む。「人の死」について多くのことを深く考えさせられる作品であった。
賞発表の直前、朝日新聞にこの本の編集者が紹介されている。医学書院看護出版部の白石正明。少し前から医学書院の「シリーズケアをひらく」が面白いと聞いていた。内田樹や春日武彦などおなじみとともに、実際の看護体験をもつ著者たちを起用ししんどい闘病記を冒険物語として新しい読み手を増やすべく努力していると記事は伝える。
『逝かない身体』も10万人に3.4人というALS(筋萎縮側索硬化症)を患った母とその娘たちの介護の記録だ。明日には患者にも看護する家族にもなるかもしれない可能性。大宅賞受賞で多くの人の目に触れてもらいたい一冊である。
(東えりか)