木内一裕の痛快小説『キッド』をおすすめ!

文=東えりか

「木内一裕」という作家は、どれくらい知られているのだろう。では「きうちかずひろ」と聞いたら?

 そう、あの「ビー・バップ・ハイスクール」を描いた漫画家だ。映画監督や漫画原作なども手がける鬼才が書く小説は、どれもスピード感に溢れ、まさにジェットコースターのようだ。デビュー作『藁の盾』から、すっかりこの作家の魅力に参ってしまい、新刊が出ると同時に読むことにしている。

 で、待望の新作が出た。『キッド』(講談社)は祖父から受け継いだビリヤード場を経営する20歳の青年・石川麒一が主人公。ビリヤード場のリフォームで詐欺にあった麒一は、その犯人を追ううちに、ある殺人事件に巻き込まれる。死体を埋めて帰って来た麒一に謎の一団が襲い掛かる。目端が利いて世知に長けた麒一が、大の大人の鼻面を引き回し、叩きのめしていく爽快感ったらない。

多少の瑕疵や荒さなんて、どうでもいいほどのグルーヴ感で、あっという間に小説の世界に読み手を引きずり込んでしまう。この小説、力こぶを込めてオススメする。

(東えりか)

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