第89回:平山夢明さん

作家の読書道 第89回:平山夢明さん

夜眠れなくなるくらい怖い話、気持ち悪くなるほどグロテスクな話を書く作家、といったら真っ先に名前が挙がる平山夢明さん。ご自身も、幼少時代に相当な体験をされていることが判明。そんな平山さんが好んで読む作品はやはり、何か同じ匂いが感じられるものばかり。そのキテレツな体験の数々を、読書歴に沿ってお話してくださった平山さん、気さくな喋り口調もできるだけそのまま再現してあるので、合わせてお楽しみあれ。

その4「自主映画制作に夢中」 (4/6)

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――映画に対する興味はいつ頃からあったのですか。

平山 : 小学校の頃から。『激突!』を観る前からだよね。昔は今みたいにテレビがまともじゃなかったんだよね。ホラーものも、B級のグロテスクものががんがん放映されていて。ユニバーサルのハマーものとか、バカみたいに。

――ハマー・フィルム・プロダクション。クラシックホラーを作っていたメーカー。

平山 : それでホラーを好きになってさ。吸血鬼とかドラキュラとかフランケンシュタインとか狼男とか。蝿男とかさ、原始プルトニウム人間とかさ。放射能ででっかくなっちゃうんだからね。「ウルトラQ」とかだって、最初はホラーテイストだったんだよ。「マグマ大使」だって、青血病なんていうのがあって、青い血が混じっている人間は劣っているなんて設定があってさ。「スペクトルマン」なんて公害怪獣を倒す話でさ、ノーマンっていうのが出てくるんだけれど、白痴の子が他人の脳を食うと頭がよくなるの。

――あの、差別などいろいろ、なんだか現在では放送できなさそうな内容もありますね。

平山 : 昔はああだったんだよ。結構残酷でさ。『カムイ伝』なんかの白土三平を読むと分かるけれど、忍者モノってプッと吹き矢を吹かれて毒の針が刺さると、その部分をすぐ切っちゃうんだよね。簡単に手足を切るよね。ああいうのをどんどんやればいいんだよ。映画だって昔はよかった。自由だった。そうそう、アメリカって身障者のギルドがあるんだよ、俳優組合。スピルバーグの『プライベート・ライアン』なんか、下半身のない人が出てきたりするけれど、そういうのって組合の俳優さんなんだよ。あの人たちはあの人たちでプライド持って出演しているの。で、向こうはしっかりしていてさ、何年もたって放映されても、ちゃんとお金が入るようになっているの。年金の代わりになるのよ。って、こういうことって原稿に書けるの?

――ええと、かなりの部分を削除しつつ、書けるだけ書いてみます。で、大学に入ってからは自主映画を撮りはじめたんですよね。

平山 : オレらの頃は、四畳半モノ、青春モノが流行っていて。「神田川」みたいな世界をひきずっている先輩がいっぱいいた。四畳半で女の子がトランプで恋占いをしているような話。オレ、全然興味なくてさ。

――しかしホラーとか、血しぶきモノを撮るのは大変だと思うのですが。

平山 : 大変だったねえ。いつも後輩の部屋が血だらけになちゃって。畳は拭けばいいけれど、襖は染み込んじゃってとれないんだよね。「あー」なんていう後輩に「いいんだよ芸術のためだよ」とか言ってさ。

――大学を途中で辞めたそうですが、それからは。

平山 : 撮影ばっかりやっていて、授業もでなかったし、試験もでなかったし。留年2回目で、こいつはダメだと両親も思ったんだよね。アウトって宣言されちゃって。そこからはコンビニの店長をやったりしてさ。

――「三宅裕司のえびぞり巨匠天国」という、アマチュアの映像作家のオーディション番組に「ペキンパーの男」という作品で登場されたそうですが、それは......。

平山 : 30歳くらいの時かな。でも学生時代に撮ったやつだよ。それからは撮っていなかった。

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