作家の読書道 第214回:凪良ゆうさん

引き離された男女のその後の時間を丁寧に描く『流浪の月』が大評判の凪良ゆうさん。もともとボーイズラブ小説で人気を博し、『神さまのビオトープ』で広い読者を獲得、新作『わたしの美しい庭』も好評と、いま一番勢いのある彼女ですが、幼い頃は漫画家志望だったのだとか。好きだった作品は、そして小説を書くようになった経緯とは。率直に語ってくださっています。

その1「漫画家になりたかった」 (1/7)

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――いちばん古い読書の記憶を教えてください。

凪良:小さい頃から漫画が大好きでした。親も「気がつくと漫画を読んでいた」と言っているので、たぶん、いちばん古い読書というと漫画だと思います。もともと漫画家志望だったんです。

――そうだったんですか。それは家に漫画があったということでしょうか。

凪良:姉が2人いて、それぞれが雑誌も買ってくるし、図書館でも借りてくるしで、そういうものを読ませてもらっていたんだと思います。一番上の姉は少女漫画などの女性向けの漫画が好きで、二番目の姉が少年漫画とミステリ系の小説が好きで。だから少年漫画も「ジャンプ」も「サンデー」も「マガジン」も揃っていました。「チャンピオン」もあったかな。姉の影響で、小学生の時に一番熱狂したのはたぶん、『ベルサイユのばら』。『リングにかけろ』とかも好きだったかな。漫画はまんべんなく読んでいましたね。

――お姉さんたちとはどれくらい年齢差があるのですか。漫画を読んでいても怒られない雰囲気のおうちだったのでしょうか。

凪良:一番上が10歳上で、二番目が5歳上なんです。5歳ずつ離れているんです。
 親がまったく本を読まない人たちだったので、普段は放っておかれるんですけれど、あまりにも増えすぎて家がすごいことになると、大噴火みたいな感じで怒られて(笑)、それまでの本を全部バーンと捨てられたりして。たまっては捨てられ、たまっては捨てられの繰り返しでした。

――二番目のお姉さんのミステリ小説好きの影響は受けなかったのですか。

凪良:全然受けなかったです。私もアルセーヌ・ルパンのシリーズとか、江戸川乱歩のポプラ社のシリーズは読んでいたんですけれど。

――なるほど。さきほど漫画家志望だったとおっしゃっていましたが、小さい頃から自分でも描いていたんですか。

凪良:ずっと描いていました。小学校で漫画クラブに入ったんですが、そこは読むクラブではなく、描くクラブだったんです。今考えると全然つたないんですけれど、漫画みたいなことを描けるのが楽しかったんですよ。ただ、描き切るということができなくて、だいたい5ページとか6ページ分くらい、自分の好きなところだけを描いて終わるという。
 記憶に残っているのは、宇宙船が壊れて「私はこれから一体どうすれば」という場面3ページくらい描いて終わっているものです(笑)。

――学校の国語の授業は好きでしたか。

凪良:好きでしたね。好きというか、なんだかよく分からないけれど得意だったんです。すごく嫌な言い方になるんですけれど、他の教科全滅だったのに、国語だけはスッと頭に入ってきたんです。苦も無くできるものって、大概子どもは好きになりますよね。
 一度、登校する前に「感想文の宿題出てたの忘れてた」と気づいて、5分くらいでババババッと書いたことがあったんです。心にもない感動路線みたいなことを、先生に受けるために書いて。それを提出したら「とても良かったのでクラスの代表として読んでください」と褒められてしまい、「自分は嘘をついた」って子ども心に罪悪感が芽生えました。
 逆に怒られることもありました。一生懸命書いた卒業文集の文章を「子どもらしくないから」って言われて、書き直しさせられました。
 だから、国語の授業自体は好きだったんですけれど、文章で何かを書くことについてはその二つの、あまりよくはない記憶があるんです。

――今振り返ってみるとどんな子だったのですか。活発だったのか、それとも目立たないようにしていたのか...。

凪良:全然目立たないです。ずっとクラスの隅っこで絵を描いている子っているじゃないですか。そういう感じでした。

――では、放課後もおうちに帰ってずっと漫画を描いていたりとか。

凪良:そうですね。漫画を読んでいるか描いていました。

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