第8回:BOOK MARKET 安西純氏・小島奈菜子氏

7月30(土)・31(日)に神楽坂の日本出版クラブ会館で開催されるBOOK MARKET。
主催者であるアノニマ・スタジオの安西さん、小島さんに会うために蔵前へ行ってきました。
ここ数年で若いお客さんが増えてきている蔵前。お洒落なカフェや気になるお店が点在する一角にあるアノニマ・スタジオの事務所。
訪れた日は猛暑の始まりを予感させるような強烈な日差しが私たちを直撃。お陽さまから逃げるように到着し、
趣のあるビルの2階に上がり扉を開けたのですが、そこにはなんだか海辺にいるようなゆったりと落ち着いた空間が広がっていました。


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―BOOK MARKETいよいよ今月開催ですね。そもそもこのイベントが始まったきっかけはどういったことだったのですか。

安西さん:2009年2月からスタートしたのですが、その頃は5、6社での開催でした。ちょうどこのビルの1階がスペースとして使えたので、親しい出版社同士で始めることにしました。


―どうして出版社主体でやることにしたのですか。


安西さん:その頃私たちの会社も東京国際ブックフェアに出展していました。出展することの意義はあったのですが、自分たち主体でやってみるとまた違った面白いことができるのではないかと思い、やってみることにしました。
当時はまだSNSも浸透していなかったので、各社がホームページで告知したり、DMを作成して書店さんや取引先に配布したり地道に宣伝して集客しました。


小島さん:以前は1階が自社スペースだったので、もともと常に何かイベントはやっていたのです。


安西さん:地道な宣伝だったので心配だったのですが、蓋を開けてみたらかなりお客さんがきて安心しました。2009年から2012年までは自社の1階で開催していたのですが、手狭になったので、2013年から昨年までは、ここの近くのCielo y Rioというイベントスペースにしました。


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―お客さんが他のブックイベントに比べてもかなり若いですよね。特に女性が多い。


安西さん:去年はファッションプレスというサイトで取り上げていただいたこともあり、特に女性の方が多かったですね。


―所謂本のイベントとはちょっと違う客層なので驚きました。だいたいどれくらいのお客さんが来場されたのですか。


安西さん:2日間で約3,000人です。


小島さん:去年は2月開催で、真冬で外は寒かったのに、イベント会場の窓が曇ってしまうくらい、満員な状況でした。冷房もかけていたほどです。


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安西さん:出展希望の出版社さんも年々増えてきていて、お陰さまで去年が21社、今年は32社の出展になりました。


小島さん:思いの強い版元さんが沢山出ているのも熱気に繋がっていると思います。


―ずっと蔵前で開催していたのですか。


安西さん:以前紀尾井町にあったCOOK COOPという料理本専門の書店さんから依頼されて出張BOOK MARKETを実施したことがあります。
あと、秩父でも、出張版を開催したこともあるんです。


―それは何か秩父のほうからお声掛けがあったのですか。


安西さん:秩父の藤村書店さんから「うちにイベントスペースがあるからやってみない」と言われたのがきっかけです。秩父に行ったことがなかったので、何社かで視察に行きました。そうしたら町自体がとても面白くて。味わい深い建物が多く、若い人たちが新しいお店をポツポツと出しはじめていて。どうせなら町全体も含めて何か面白い仕掛けができないかと思いました。街の方々も参加できるように町歩きマップを作成したり、スタンプラリーを実施したりしました。お陰さまで大変好評で、秩父でも毎年開催してほしいと、オファーを受けています。


―今年は神楽坂ですね。


安西さん:昨年までの場所でも入りきれなくなって、かもめブックスの柳下さんにご相談したところ、
日本出版クラブ会館を勧めていただき、神楽坂での開催ということになりました。全く新しい土地なので、どんな方に来ていただけるか、不安と楽しみでいっぱいです。当日は神楽坂で阿波踊り大会があるらしく、街中含めてにぎやかな2日間になりそうです。


―昨年伺ったら本はかなり売れていたように見えましたが。


安西さん:各社さんともこだわりの本を販売しますからね、ここぞとばかりにまとめ買いをされる方が多かったようです。
会場で3冊以上購入するとエコバッグを進呈していたのも効果があったのかもしれません。


小島さん:お客様の単価としては比較的高かったです。今日を逃したらいつこの本に出会えるかわからないからというのもありますね。
あと、作り手と直接話して、裏話などを聞くと、つい買いたくなるというのもあるんじゃないでしょうか。


―今後の展望は何かありますか。


これ以上大きくすることは考えていないです。それよりも、規模をキープしつつ、質を高めていきたいと思っています。
大手の出版社さんでも、会社全体としてではなく、編集部単位の出展が増えても面白いかもしれません。


今日は有り難うございました。7月30日、31日は、我々も遊びにいきます。楽しみにしています。

BOOK MARKET2016

http://www.anonima-studio.com/book_market_2016/

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第7回:京都ブックフェスティバル実行委員長 洞本昌哉氏

京都市役所前の階段を降りるとそこは広大なショッピング街が。ここが京都ではじめての本格的な本のイベントである 「京都ブックフェスティバル」の会場です。

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―どういう経緯でこのイベントが開催されることになったのですか。

もともと3年ほど前から京都の出版社さんの正月の会合などで、活性化対策として何かイベントができないかという話は あったのです。では何故出版社さんのイベントを我々書店がやることになったかというと、本の値引き販売イベントを 出版社さんが自ら主催するのは、新刊書店さんへの配慮もあり難しい。それなら神保町ブックフェスティバルのように 街興しの一環としてやる分には問題なかろうという事で、僕が会長になっているZEST御池会を 京都ブックフェスティバル実行委員会(京都府書店商業組合・日本書籍出版協会京都支部)の中に入れることにしました。 そういう経緯もあり、私が責任者になり、この場所で開催することになりました。

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―それにしても、これだけの本をかなりな特別価格で販売できているのは、凄いことですね。

街おこし、商店街の活性化のためでもあるので、出展料はワゴン・ポスター等実費分しかかからない設定にしました。 負担を減らすことでなるべく多くの地元の出版社さんに参加して頂きたかった。倉庫に眠っていた本、 再出荷する予定のない本を再販制度の弾力的運用とご理解頂き特別価格で販売し、1人でも多くの地元の読者に 本と出合って頂きたかった。そして出版社自らが対面販売することで、作り手の想いがダイレクトに読者に伝わる イベントにしたかったのです。中には茶道の専門書や仏教書など普段書店ではあまり店頭で販売していないような出版社さんにも 参加してもらっています。

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正月に思いついて説明会を開いて、4月開催という、あまりにも時間がないスケジュールでしたが、 実行委員会である書店組合・書協の両トップが理解を示して頂き、18社の地元出版社さんが趣旨に賛同して、 参加していただくことができました。様子見で来年は参加したい、という社もかなりありますので、 今後は更に大きな規模での開催になる手ごたえを感じています。

実は本屋大賞の京都版である「京都本大賞」も私が中心となって仲間と作ったのですが、そのメンバーがいてくれたことが、 今回の企画を進めるうえでも非常に助かりました。

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―広くて雨や風の心配もないし、ここは本のイベントにはもってこいですね。

広場は全部で4つあります。今年はまだそのうち1.5カ所しか使用していませんから、今後はアイディア次第で もっともっと規模を拡大できます。児童書の広場、一箱古本市やコミックなど、いろいろな意見が出ています。 東京の出版社さんの参加希望もあります。

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出版社さんは在庫を活用できるし、商店街は割引券を配布してもらうことで、お客さんの呼び込みになる。 読者は普段あまり目にすることができないような地元の出版社さんの本を安く手に入れることができる。 皆が幸せになれる仕組みにできたのかな、とおもっています。正直物凄く大変で、その割に儲かるのかと言われれば、 書店組合の事業の一環としては、あまりお金にはならないかもしれません。 でもこれによって地元の出版社さん、作家さん、商店街、読者の輪が出来てきて、人が集まるようになり、 今後ますます活気が出てくると信じています。まずは動き出すことが大事だと思っています。

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とにかくエネルギッシュでスピーディーな洞本社長。商店街を一緒に歩いていても、あちらこちらから声がかかり、 地元でも愛されている方なのだな、ということがよくわかります。今後も洞本社長の動向には注目していきたいと思います。

<プロフィール>

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洞本昌哉

京都府出身。1969年生まれ。大学卒業後銀行に勤め金融を学ぶ。3年務めた後、家業である「株式会社ふたば書房」に入社。 書籍担当、店長職を経て社長に就任。JPIC読書アドバイザー・絵本専門士の資格を取得し、 各方面にて読み聞かせ活動にも積極的に参加している。KBS京都 「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」 「そうだ、本屋さん行こう!」に月1回レギュラー出演。

京都ブックフェスティバル

4/23(土)~24(日)ゼスト御池河原町広場・市役所前市場

主催:京都ブックフェスティバル実行委員会

後援:京都府書店商業組合・日本書籍出版協会京都支部・京都新聞・KBS京都