第6回:BOOKOKA 実行委員 大井実氏・藤村興晴氏(後編)

10年間で育ててきたこと

―ブックオカを10年間やってみて、街の若者の反応や本の読み方が変わったというようなことはありますか。

藤村:一箱古本市にはとにかくビックリするくらい人が来ます。商店街の方々も「こんなに人が来たのは見たことがない。」と仰っている。出版界はとかく明るくないニュースが多いですよね。ですので、これだけ本に人が集まるというのは、見ていて僕らも元気がでます。  近所に女子高校があるのですが、そこの女子高校生が「あ、今日は古本市の日や。お金とりに帰って早よ来な。」と言っているのを聞いたりするのは嬉しいですね。そこで買った本がもしかしたらその後の彼女らの人生を左右しているかもしれないなんて想像したりもします。

―ここまで続けてきて苦労したことはありますか。

藤村:まず、メンバーの転勤が多くて。ほんとに多いので「ブックオカの呪い」とか言っているほど(笑)。ちょうど30代40代が多くサラリーマンとしても働き盛りなので、転勤も多いのですね。

―毎年続けている定番の企画について聞かせてください。

大井:「激オシ文庫フェア」ですね。毎年テーマを決めて、それに沿った文庫を各店で選んで共通帯を巻いて展開するフェアなのですが、手法もだいぶ変わってきました。以前は印刷した帯がなくなったらその店のフェアは終わりだったのが、今はデータをサーバーにアップしておけばいくらでも各書店で印刷できる。配本もトーハンでいえば桶川の倉庫の稼働など、かなり文庫をタイミング良く配本してもらえるようになってきました。私の店でも激オシ文庫フェアは、今年もかなり売れ行きが良かったです。参加している書店員さんも150人ほどになりました。このフェアがきっかけで重版になった文庫もあります。

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藤村:「激オシ文庫フェア」は長年かけてかなり企画も運営方法も磨き上げられてきたな、と感じています。呼称ですが、「福岡文庫大賞」のようなご当地的な賞にすることを検討した時期もあったのですが、あえてそうしないほうが選ばれた本が全国に平広がっていくのではと考えて、現状のスタイルを続けています。

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大井:「書店員ナイト」も第1回から続けているイベントです。やはり書店員は本が好きだし、それでいて意外と横のつながりがなかったりするので、皆が交流できるようなことをしたかった。白石一文さん、西加奈子さんなど作家の方や、もしドラの加藤編集長、ミシマ社の三島さんなどいろいろな方が来てくれています。こういった横の交流が盛り上がるのも、福岡らしいのかな、と思っています。

藤村:佐賀や大分、熊本、沖縄の書店の方々が視察にこられて、その後それぞれの地域ではいろいろな取り組みをはじめるようになってきました。そうなってくると作家のほうも、それぞれの地域を繋いでトークツアーを組むことも可能になってきますよね。

これからのブックオカ

―今後のブックオカについてお聞かせください。

藤村:来年は一旦お休みする予定なのです。始めるときに、やるなら10年は続けようと決めて今回がちょうど10年目になります。めちゃめちゃしんどい10年でしたね。僕らも10年分歳をとって、このまま権威化していってしまうのもいやですしね。ある一定の時期にまとめてやるという方法以外にもやり方はあるのかな、と思っています。これからゆっくり考えて行きます。

大井:10年で培ったノウハウを使いたいという方が全国各地で出てきてくれれば、それはありがたいし、地域が変わって行くきっかけになるのかなと。本はそういう力を秘めていると思います。

<プロフィール>

大井実(ブックスキューブリック代表)

藤村興晴(忘羊社代表)