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2月2日(月)

 私には絶対できないと思っていたことが3つあった。

 ひとつは禁煙で、これは中学校のとき裏番の主ちゃんとサッカー部の部室で吸って以来20年以上吸い続けていた。食後の一服はもちろん、サッカーのハーフタイムに吸うタバコの美味さは何ごとにも変えられない幸せだと考えていたのだが、2人目の子供を妻が身ごもった時、主に経済的な理由で禁煙せざるえなかった。あれからすでに5年のときが過ぎ、私の人生からタバコは必要なくなった。

 次にできないと思っていたのは、長距離走、すなわちマラソン・ジョギングだ。私はサッカー部ながら基礎体力練習が大嫌いで、それらの練習のときはやはり裏番主ちゃんと部室でエロ本を眺めていた。高校は持久走大会のないところを選んで受験した。

 それなのに宮田珠己さんが水泳をはじめたのを知り、何を突然とち狂ったのかジョギングを始めたのである。自分でも続かないだろうと思っていたのだが、いつの間にかすでに半年近く続いており、土、日は1時間、平日も帰宅後30分はジョギングしているのだ。恐るべき宮田珠己。って宮田さんはとっくのとうに水泳を辞めたらしいけど......。

 というわけで絶対できないと思っていたことのふたつを人生半ばにしてクリアーしたのであるが、最後のひとつ、偏食だけは治りそうにない。

 もし私が寿司を食ったら、おそらく私は生まれ変わってしまうだろう。違う生き物になって、おそらくそれは海辺に漂う昆布だと思うが、そうなったら娘や息子と会えるのは海水浴のときだけだ。しかしそれだって、私が車を運転しないと海水浴に行けないのだから、寿司を食った時点で、家族と今生の別になってしまう。

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 9時、銀座・教文館に直行。本日から始まる「とことん本の雑誌」フェアの品出し手伝い。担当のYさんは「いいのよ、こっちでやるから」と言ってくれたが、そういうわけにもいかない。

 開店前の店内に入り、事前に送っておいた「本の雑誌」バックナンバーや単行本を並べる。事務の浜田が号ごとにきちんと段ボールに詰めてくれたので、作業はあっという間に終わる。自社本ながらこんなにいっぺんに並ぶのはなかなか見られるわけもなく、うれしいかぎり。1階のショーケースに創刊号や思い出の品々を並べ、準備完了。

 しばらくすると他の店員さんたちが、古い号を手にして話し出す。
「この頃は、椎名さんが直接納品に来ていたよね」
「そうそう。目黒さんも来たね」
「あーおれ、川崎に住んでいたらか、横浜ルミネの本屋さんまでバックナンバー買いに行ったんだ」

 それは、ものすごく幸せな時間であった。

 五反田、目黒と営業するが、ことごとくお休みや出張で、撃沈。会社に戻って、教文館のフェア飾り付けようのポップを書く。

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