2月10日(火)
- 『秋月記』
- 葉室 麟
- 角川グループパブリッシング
- 1,836円(税込)
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- 『奇想遺産〈2〉世界のとんでも建築物語』
- 鈴木 博之,隈 研吾,松葉 一清,木村 伊量,藤森 照信
- 新潮社
- 3,024円(税込)
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- 『セルフビルド SELF‐BUILD―自分で家を建てるということ』
- 石山 修武
- 交通新聞社
- 2,592円(税込)
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通勤中に読んでいた角川書店のPR誌「本の旅人」2月号の縄田一男さんの書評を読んで思わず笑ってしまった。葉室麟『秋月記』(角川書店)に対する書評なのだが、書き出しがすごいのだ。
「私はこの稿を記すに当たって編集部のY氏に、一日締切りを延ばしてもらった。その理由は他でもない。『秋月記』のゲラを読了し、葉室麟が2005年、歴史文学賞を受賞した『乾山晩愁』から4年という僅かな歳月の間に達した境地の深まりに驚き、ほとんど興奮状態に陥ってしまったからである。これでは、頭を冷やす時間がなければとても客観的な書評は書けない──それ故の締め切りの延期であった。それでも、原稿用紙の升目にはじめの一文字を記す前に深呼吸する必要があったのである。」
北上次郎の「いやはや、すごいぞ、ぶっとぶぞ!」に匹敵する、いやそれ以上にインパクトのある書き出しだ。でもこんな言い訳を茶木則雄さんに知られたら大変だ。いつも締切を過ぎて、病気になったとか、パソコンが壊れたとか言い出すのが、本が良過ぎて書けないと言われたら、こちらは何も言えないではないか。
ちなみに私はこの興奮の書き出しではなく、「──現時点において、葉室麟は藤沢作品を超える可能性を持った唯一の存在である、と。こう記すと藤沢周平の熱心な読者は、まさか、というかもしれない。が騙されたと思って読んでいただきたい。私も伊達に20年以上、時代小説評論をやって来たわけではないのだから。」という言葉を信用し、『秋月記』を読むことにした。
それともうひとつ本の話とはまったく関係ないのだが、角田光代さんのエッセイ「幾千の夜、昨日の月」にもビックリした。これは昨年2月に角田さんが香港の文学フェスティバルに行ったときの顛末が書かれているのだが、なんとそのなかにこんな一文があるではないか。
「私にとってたいへん幸運なことに、某出版社某編集部の人々5人が、私の香港行きを聞きつけて、それぞれ休暇をとって便乗してくれることになっていた。5人も編集部を留守にしてだいじょうぶなのか? と思ったが、でも、何がどうなっているのかよくわからないフェスティバルにひとりで参加する不安は、彼らのおかげでだいぶ薄らいだ。」
5人も編集部を留守にして大丈夫な編集部ってどこなんだろうか。うちの会社で5人休んで香港に行ったら、それは間違いなく社員旅行と呼ばれるだろう。
★ ★ ★
明日からはじまるジュンク堂書店池袋本店の「本の雑誌」応援フェアの確認にいく。1階の雑誌売り場ではとんでもない号からバックナンバーが並び、3階の文芸書ではなぜか「We are 本の雑誌! ダダッダダッダ」というネーミングの単行本フェアがはじまる。応援するのは慣れているが、応援されるのは慣れておらず、戸惑うことが多い。
サンシャインのS書店Yさんとは今日はあまりサッカーの話をせず、本の話をしていたら「杉江さんと仕事の話をしたのは久しぶりですね」と笑われる。Yさんだけでなく、そういうことをしょっちゅう言われるのだが、私の本職はサッカーバカでなく、本の雑誌の営業です。
リブロのYさんからは建築本読みの同志としての面白本を教えていただく。
『奇想遺産2 世界のとんでも建築物語』(新潮社)
『セルフビルド』石山修武(交通新聞社)
『奇想遺産』の2が出ていたのは知らなかった。即買いしたい気持ちをぐっとこらえ、本日8歳の誕生日を迎えた娘のために、『黒魔女さんが通る!!--ライバルあらわる!?の巻』石崎洋司(講談社青い鳥文庫)を買って帰る。
今年から息子とふたりで「ハッピーバースデイ」を歌う。
「私はこの稿を記すに当たって編集部のY氏に、一日締切りを延ばしてもらった。その理由は他でもない。『秋月記』のゲラを読了し、葉室麟が2005年、歴史文学賞を受賞した『乾山晩愁』から4年という僅かな歳月の間に達した境地の深まりに驚き、ほとんど興奮状態に陥ってしまったからである。これでは、頭を冷やす時間がなければとても客観的な書評は書けない──それ故の締め切りの延期であった。それでも、原稿用紙の升目にはじめの一文字を記す前に深呼吸する必要があったのである。」
北上次郎の「いやはや、すごいぞ、ぶっとぶぞ!」に匹敵する、いやそれ以上にインパクトのある書き出しだ。でもこんな言い訳を茶木則雄さんに知られたら大変だ。いつも締切を過ぎて、病気になったとか、パソコンが壊れたとか言い出すのが、本が良過ぎて書けないと言われたら、こちらは何も言えないではないか。
ちなみに私はこの興奮の書き出しではなく、「──現時点において、葉室麟は藤沢作品を超える可能性を持った唯一の存在である、と。こう記すと藤沢周平の熱心な読者は、まさか、というかもしれない。が騙されたと思って読んでいただきたい。私も伊達に20年以上、時代小説評論をやって来たわけではないのだから。」という言葉を信用し、『秋月記』を読むことにした。
それともうひとつ本の話とはまったく関係ないのだが、角田光代さんのエッセイ「幾千の夜、昨日の月」にもビックリした。これは昨年2月に角田さんが香港の文学フェスティバルに行ったときの顛末が書かれているのだが、なんとそのなかにこんな一文があるではないか。
「私にとってたいへん幸運なことに、某出版社某編集部の人々5人が、私の香港行きを聞きつけて、それぞれ休暇をとって便乗してくれることになっていた。5人も編集部を留守にしてだいじょうぶなのか? と思ったが、でも、何がどうなっているのかよくわからないフェスティバルにひとりで参加する不安は、彼らのおかげでだいぶ薄らいだ。」
5人も編集部を留守にして大丈夫な編集部ってどこなんだろうか。うちの会社で5人休んで香港に行ったら、それは間違いなく社員旅行と呼ばれるだろう。
★ ★ ★
明日からはじまるジュンク堂書店池袋本店の「本の雑誌」応援フェアの確認にいく。1階の雑誌売り場ではとんでもない号からバックナンバーが並び、3階の文芸書ではなぜか「We are 本の雑誌! ダダッダダッダ」というネーミングの単行本フェアがはじまる。応援するのは慣れているが、応援されるのは慣れておらず、戸惑うことが多い。
サンシャインのS書店Yさんとは今日はあまりサッカーの話をせず、本の話をしていたら「杉江さんと仕事の話をしたのは久しぶりですね」と笑われる。Yさんだけでなく、そういうことをしょっちゅう言われるのだが、私の本職はサッカーバカでなく、本の雑誌の営業です。
リブロのYさんからは建築本読みの同志としての面白本を教えていただく。
『奇想遺産2 世界のとんでも建築物語』(新潮社)
『セルフビルド』石山修武(交通新聞社)
『奇想遺産』の2が出ていたのは知らなかった。即買いしたい気持ちをぐっとこらえ、本日8歳の誕生日を迎えた娘のために、『黒魔女さんが通る!!--ライバルあらわる!?の巻』石崎洋司(講談社青い鳥文庫)を買って帰る。
今年から息子とふたりで「ハッピーバースデイ」を歌う。