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3月24日(火)

 突如野球ファンになった浜本と浜田が、インターネットの一球速報を見ながら「おっ!」「なにやってんだよ!」と騒がしい。あまりにうるさいので2階のテレビで見ればいいじゃないですかと進言すると、仕事しなきゃという。どうみても仕事が出来ていると思えないのだが......。しかしそんな大騒ぎを、浮世離れ松村が「なんかやっているんですか?」と質問を投げかけ、一同を沈黙させる。

 WBCにはまったく興味がないので、営業に出かけるが、街中では携帯を手にワンセグ放送を食い入るように見つめるサラリーマン多数。三省堂書店神保町本店の入り口でも、何かちょうど野球関係の店頭販売をしていたようで、そのモニターでWBCを放映しているから、黒山の人だかりであった。その黒山が、会社にいる浜本や浜田のように「うお!」とか「やったー!」とか叫んでいるではないか。どうせ叫ぶならアメリカに届くくらい大きな声で叫びなさい。

 と思っていたら神保町の谷底に嘆きの寒風が吹きすさび、どうも最終回に同点にされたようであった。いやはや大変ではないか。私も黒山の仲間入りをすると延長に突入し、その後は誰もが知るイチローのヒットになるわけだが、私はそのときカズこと三浦知良のことを考えていた。

 あれは98年のフランスワールドカップ。そのアジア予選でカズは不振を極め、当時はまだ日本代表の試合を見に行っていた私は、カズを外せと叫んでいたひとりであった。確かバスを囲んだときもあった。それでもやっぱりワールドカップ直前合宿にカズは呼ばれ、そのときには私はここまで来たらカズは残したほうがいいんじゃないかと思っていたのだが、加茂周から監督を引き継いだ岡田武史は、カズを外したのであった。

 黒山の隙間から、イチローの打ったボールがセンターに抜けたとき、「岡ちゃんあれはやっぱりカズを残したほうが良かったんじゃないか」と思ったのである。スーパースターっていうのはそういう星の下に生まれたからスーパースターであって、後にゴン中山がジャマイカ戦で日本人初のワールドカップで得点した男になったことを考えてもやっぱりそうだったよ、岡ちゃん。

......って営業だ、営業。

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