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5月27日(水)

  • ときどき意味もなくずんずん歩く (幻冬舎文庫)
  • 『ときどき意味もなくずんずん歩く (幻冬舎文庫)』
    宮田 珠己
    幻冬舎
    586円(税込)
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  • 続 怪しい雑魚釣り隊―サバダバサバダバ篇
  • 『続 怪しい雑魚釣り隊―サバダバサバダバ篇』
    椎名 誠
    マガジンマガジン
    1,572円(税込)
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 宮田珠己さんのところへ訪問し、7月の新刊『スットコランド日記』の著者校正原稿をいただく。

 宮田さんはお遍路帰りで真っ黒に日焼けしており、しかもいつになく前向きで、これはもしかしたら高野秀行さんから変な薬をもらったのではないか。ところが話を伺うと、なんと『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)が、また重版がかかったとのことで、わっしょいわっしょい、であった。

 私のほうも今朝のNHK「おはよう日本」で、児玉憲宗さんが紹介され、そのなかで『尾道坂道書店事件簿』も取り上げられていたので、わっしょいわっしょい。ふたりで喜びを分かち合うが、宮田さんと別れた後、書店を訪問すると店頭は『1Q84』で大騒ぎであった。

 会社に戻って仕事をしていたら、妻から電話があり、咳がひどくて幼稚園を休んだ息子が高熱を出してしまい、どうしたもんかと相談される。電話の向こうの妻はかなり動揺しており、おろおろした様子であった。よく考えてみると妻と電話で話すというのはほとんどないことで、もしかしたら独身時代以来なのではないか。妻の声はこんな声だったのか。

 とにかくこんなときこそ亭主の威厳、父親の偉大さを見せつけないといけないと思い、医学的なことを考えるが、健康保険証すらほとんど使わない私にそんな知識は皆無であった。

 仕方なく知人友人で医療関係者がいないか思い出してみるが、相棒とおるはしょっちゅう病院に行っているがそれは会社をさぼるためであって、親友下沢はナース好きが高じて、ナースと結婚したが、そのナースは単なるナースではなく大酒飲みのナースで、現在旦那である下沢が単身赴任なのを良いことに、完全にキッチンドリンカーになってしまい、本人が病院に入るのが間近であると、先日サッカーで会ったときに泣きながら訴えていた。

 どちらにしてもまったく役立ちそうになく、ついに幼なじみが医者になったことを思い出したが、産婦人科医であった。

 いま高熱といえばインフルエンザなのであるが、朝の感じからそれは考えられず、これでも一応娘を8歳まで育てている経験値のある父親らしく閃いたのは、突発性発疹であった。あれは突然高熱に襲われるのだ。

 父親の偉大さを見せつけようと、滑舌よく「突発性発疹じゃない?」というと、携帯の電波が悪くなったのか、電話が切れた。インターネットで「突発性発疹」を調べてみたら乳幼児の病気とあった。

 私の息子は4歳半である。

 しばらくして今度は妻からメールが入り、「近くの病院に電話したところ連れて来なさいと言われたので診せに行ったら、インフルエンザじゃなく、単なる風邪だって。いま熱がでる風邪が流行っているんだって」とのこと。紛らわしい風邪だ。

 待ちに待った怪しい雑魚釣り隊の新刊『続 怪しい雑魚釣り隊 サバダバサバダバ篇』椎名誠著(マガジン・マガジン)が出たので、むさぼるように読む。腹を抱えて笑ってしまう。

5月26日(火)

 どこかで突然スイッチが入り、営業が確率変動、爆裂連チャンモードへ突入。
 今日のオレはメッシのドリブルなみに誰にも止められないだろう、って誰も止めないだろうけど。

 新小岩、本八幡、船橋、津田沼、千葉など。
 ただしどこへ行っても5月の売上不振の話。そして明日発売の村上春樹の待望の新刊『1Q84』(新潮社)に藁をすがる思いのようだ。

 千葉ではかつて柏のS書店で散々お世話になっていたMさんが、CD売場で復帰したと聞いていたので訪問したが、残念ながらお休みだった。

 帰り際に松戸の良文堂書店でやっていただいているフェアを覗くと、Tさんから「年配のお客さんがバックナンバーを見てすごく懐かしがっていますよ」と報告を受ける。ちなみに名古屋のリブロでも同様のフェアをやっているので、名古屋近辺在住の方はぜひ覗いてみてください。

 散々歩いたせいで脹ら脛が痛くなったが、帰宅後すぐに短パンに着替え、マラソンへ。
 私も走っていれば、いつか村上春樹になれるだろうか。

5月25日(月)

 レッズ仲間のぶっ殺すぞ!社長の会社を訪問。

 何も恐いばっかりでなく、社長になるからには当然猛烈に働いており、私が知っているかぎりでは、朝7時半には出社し、すべてのデータに目を通している。またメールの返信は誰よりも素早く返事がなければ催促をする。ただし厳しい言葉を吐きながらも気遣いの達者な人で、私が前日抽選で早朝から埼玉スタジアムに並んでいると必ず「お疲れさん!」とメールをくれる。

 自分が人の上に立つ人間になるとは思わないし、できれば横か後ろに立ちたいのであるが、人の上に立つ人には、法則がある。仕事ができる人と言い換えた方がいいのかもしれない。真似できるものは真似したいが、なかなかできるもんじゃない。

 夜、飲み会で、某氏よりカズのサイン入りTシャツをいただく。

5月24日(日)  炎のサッカー日誌

 試合は夕方4時スタートなのであるが、大宮アルディージャがホームの埼玉スタジアム開催は前日抽選がないので、試合開始6時間前に向かわなければならない。そこでくじを引いて、入る順番を決めるのだ。その列で雨に濡れながら仲間達と缶ビールを飲んでいると、試合が夜でも朝から並んでいた駒場スタジアム時代が思い出される。

 あの頃、サッカーを見るのは肉体的にも時間的にも一日仕事だった。気付いたらビールを5、6本飲み、その後は紙パックの安ワインを飲んで道路にぶっ倒れていた。それでも試合は始まらず、延々と駒場スタジアムのサブグランドで過ごしたのであった。

 今朝、埼玉スタジアムに向かおうとすると、妻からマスクを渡された。その手には赤いマジックもあり、「白じゃ嫌でしょう? 赤く塗っていきなよ」と妙に気を利かせてくれるのであった。妻よ、マスクをマジックで塗ったら確かに赤くなるけど、私はシンナー臭でレレレのおじさん化してしまうだろう。「ハレハレハレフワハー♪」

 試合開始間際まで白マスクをしていたのであるが、よく考えてみるとゴール裏は全員ピッチを向いているわけで、私にツバがかかるとしたら後ろに座るぶっ殺すぞ!社長のツバであるけれど、それだって後頭部や背中だ。

 そして私がツバを飛ばす相手は、私の前にいる野次ばかり飛ばすおっさんで、特にエジミウソンがボールを持つと「17番!」と首をふりエジラー化し、高原が転がると「バカ」と叫んでタカラー化するので非常に腹立たしく、こういう奴には積極的にツバを飛ばしてやろうと思ったので、マスクを外す。というかマスクをしながらコールをすると、マスクがぶるぶる震えて、口の周りがくすぐったいのである。

 試合は、数日前に日本代表監督の岡田武史が「スイッチを入れられる選手」と日本代表に選出した山田直輝が、イエローカードの累積で試合に出られなかったため、我が浦和レッズは誰もスイッチが入れられず、まるでセクス・ファブレガスのいないアーセナルのようであった。

 誰もシュートを打たないなら、私が打つぞ。

 1対1 対大宮アルディージャ

5月22日(金)

 高校の図書室の先生の前で本屋大賞などの話をして欲しいと依頼が来て、都内某所の高校へ向かう。

 学校という空間を心底嫌っている私であるが、会議室に入ると学校の先生がたくさんいて、20年以上前、たまに学校に行くと呼び出される職員室を思い出した。なぜ私はあんなに怒られていたのであろうか。その理由がまったく思い出せないが、先生方に囲まれて頭がカーッとなってつい高校時代教科書を買う金をパチンコに使ってしまい、2年間教科書を持たずに登校していた、いや登校したのは1年の半分くらいで、ほとんど遅刻、欠席、早退を繰り返していたなんて台本にない話をしたら、全員ぐっと目を見開き、私を見たのでおそらく掴みはOKだったのであろう。

 しかしなぜ私はあんなに学校に行かなかったのか?
 いや一応私もダラダラと家を出ていたのである。それでも週に1回くらいは自主的にサボろうと、母親が仕事に出た後、家に戻っていたのだが、私の周りにはそうやって自主的に週1回サボろうとするやつが、4人以上いて、奴らがそれぞれ私の登校コースにクモの巣を張っていたのである。

 ローソンで漫画を読みながら待っていたのはスズケンで、駅の改札にいたのは主ちゃんと、ヘーシで、電車で待ち伏せしていたのはシマダだ。そうやって私がせっかく学校に行こうと思って家を出た日も、結局、家に連れ戻されることになる。あの頃は携帯電話もポケベルもなかったのだが、なぜだかそれぞれどこへどの時間にいるのかわかった。気付いたら私は1週間も学校に行っていないことがしょっちゅうあった。ただ、そういうときは誰かが代返をしてくれていたので、なんとなく学校的には出席にカウントされており、友情がなければ私は高校を卒業できなかったであろう。

 いまでも学校が苦手であるが、今日会った先生たちは、高校生がどうしたら本を読むようになるか真剣に考えておられた。こういう人たちがいたら、いや私にもうちょっと大人の言うことに聞く耳があれば、私は高校にも居場所を見つけられたかもしれない。

5月21日(木)

 飯田橋の深夜+1の店長浅沼さんとゆかいな営業マンたちの飲み会に参加。

 常連メンバーであるD社のKさんやF社のYさんとともに席を囲みつつ、初対面のH書房Tさんと名刺交換しようとしたらその手が震えているではないか。どうしたのかと伺うと、営業になって3ヶ月、書店さんとの飲み会も初めてで、無礼があってはいけないと緊張されていたようだ。

 私にもそういう時代があったなあと懐かしがっていると、D社のKさんが「ここにいる営業マンは存在自体が無礼なやつばかりだから気にしないでいい」と言っていた。

 その後も何となくどういう営業マンが良いのかという話題になり、順々にTさんが聞いていくのだが、ついに私の番になってしまった。

「えーっとですね、私の大好きなサッカー選手にフィリッポ・インザーギというFWがいるんですが、彼は特別上手いわけじゃないんですね。でもですね、なによりDFの視野から消えるのがうまくてDFが視線を切った瞬間にポジションを変えていて、ぐっと裏に飛び出すんですよ。それでパスを受けて、ワンタッチでゴールを決めちゃう。それはもうすごいFWなんです。

 で、営業も一緒だと思うんですよ。書店員さんにこっちが営業なのを忘れさせちゃう。例えば『タカサカさん(仮名)、Green Dayの新譜"21st Century Breakdown"最高なんですよ!』なんて話から音楽の話を小1時間もしていると、こいつは常連のお客さん? それとも古い友達か? って思うじゃないですか。そこへいきなり注文書を出してゴールを決めるんですよ。

 でもね、僕の場合、すっかりそのまま自分が何者なのか忘れちゃって、ああ楽しい時間だったなあって注文書も出さずに帰っちゃうことが多いんです。ただそうするとタカサカさん(仮名)が、心配して『さっき何も注文しなかったけど大丈夫なの? フェアでもしようか?』なんて言ってきてくれる。これを僕は"ごっつぁん営業"って呼んでいるけど、"ごっつぁん"は狙ってできるもんじゃなくて、天性のものだから難しいかも」

 なんて夢中になって話していたら、Tさんはゴボウの天ぷらを美味そうに食べていた。

5月20日(水)

 いまだに続いているランニングは、2日も間が開くと何か全身にどす黒いものが流れているような感じになり、耐えられない。しかし今夜は大竹聡さんと会う約束があるので走れない。そこで朝5時半に起きて、ランニングをした。

 私にとってランニングは身体を鍛えるということよりは、なにか精神的なものに近いと思う。もちろん根底にはサッカーがうまくなりたいという欲求があり、それはそのとおり順調に伸びているのだが、この走っているときの、いろんなことを考えてはどんどん消えて行く感じは、おそらく座禅に近いのではないか。

 そうはいっても脹ら脛や太ももはじわじわとマラドーナ化しており、なぜかそうなると人に見せたくなるのはどういうことか。「ナルシストなオレ」が目を覚ましたのであろうか。飲み会などでつい「オレの脹ら脛触ってみない?」と言いたい気持ちをぐっとこらえ、仕方ないから自分でテーブルの下に隠れた足を触っている。唯一見せても良いかなと思う家族には「だから?」なんて冷たく返され、「ナルオレ」は消化不良。

 しかしもうひとつ問題があって、ランニングで鍛えられるのは足のみ。腹もいくらか凹んだのであるが、脂肪は相変わらず付いており中年であるのは隠せない。ついナルオレの私が、ウエイトトレーニングかボディービルをしようよとささやきかけてくるのだが、そうなるとナルオレの先にいる、ホモオレが出現しそうで恐ろしい。これのどこが座禅なのかわからない。

 シャワーを浴びて出社。通勤読書は、『新潮文庫解説目録』。とある書店さんで、夏100に対抗して裏100を選ぶのを手伝って欲しいと言われているのだ。20冊くらいすぐに見つかるかと思ったが、夏100に入りそうなものを外すとなると意外と難しい。あるいは私が読んでいるような新潮社の本は文庫になっていないのかもしれない。

 しばらくプー太郎をしていた書店員さんが書店に復帰されたので訪問。その目の輝きに驚く。

「もう再就職は本屋さんじゃなくてもいいかなと考えたけど、やっぱり本屋はいいねえ」


 大竹聡さんと酒。インフルエンザが八王子に上陸したなんてことも知らず、爆笑しているうちに夜が更ける。
 

5月19日(火)

 今週は、宮田珠己さんの「スットコランド日記」の更新がお休みで、なんだかとても淋しい。もはやタマキングなしでは生きていけない身体になってしまったのか。禁断症状を抑えるために、7月刊行予定のその『スットコランド日記』のゲラを読む。すでに5回は読んでいるのだが、何度読んでも面白い。これを売らずに私の営業人生はないだろう。

 ......というわけで、6月は大竹聡著『今夜もイエーイ』(サイン本予約スタート)、『本の雑誌 別冊SF本の雑誌』、7月の『スットコランド日記』と、まさにロナウドにルーニーにテベスにベルバトフと素晴らしいサッカー選手が揃ったマンチェスター・ユナイテッド並みの新刊が続くので、いつも以上に多くの書店さんを廻っている。

 そしてやっぱり営業は廻らないとダメだなあと実感する。
 本日初めて訪問した書店さんは、なんとなく足が遠のいていたのだが、お店を覗くとかなり手の入った棚作りをされていて、名刺交換後お話を伺うと「GWはずーっと欠本調査して必要な本を発注してました」ということで、ここにもひとり職人のような書店員さんがいらしたのだ。

 そんな誇り高い話を伺っているのは楽しく、つい初対面なのも忘れて腰を落ち着けてお話を伺っていたのだが、なんだか妙にサッカー本コーナーがしっかりしているなと思ったら、我らが同類サッカーバカであった。しかもどこを応援しているんですか?と伺うと、地元が埼玉なのでと、当然オレンジ色のチームではなく、真っ赤な浦和レッズの名前を挙げるではないか。おお!私もと興奮して手を握ると、なんとこちらの書店員さんも年間チケットを買って、毎度参戦しているとか。

 もう営業なのか、レッズサポ話なのかわからない展開に突入していったのであるが、そこへ別の支店の店長さんが訪れたのだが、今度はそちらはFC東京サポだそうで「まああれですけど、うちのお店にも営業に来て下さいね」とうれしいお誘い。

 実はこのお店に飛び込むか、時間的なことなどを考えつつ、しばし躊躇していたのであったが、頑張って良かった。明日も頑張ろう。

5月18日(月)

  • ジョエル・ロブションのお家で作るフランス料理
  • 『ジョエル・ロブションのお家で作るフランス料理』
    ジョエル ロブション,Robuchon,Jo¨el
    ローカス
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  • ワインのおつまみ ―人気店の初公開レシピ (別冊家庭画報)
  • 『ワインのおつまみ ―人気店の初公開レシピ (別冊家庭画報)』
    世界文化社
    1,980円(税込)
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  • 世界一の美女になるダイエット
  • 『世界一の美女になるダイエット』
    エリカ アンギャル,Angyal,Erica
    幻冬舎
    1,329円(税込)
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 朝、家を出ようとしたら妻からマスクを渡される。これから通勤時にはこれを付けろというのだ。
「うちでばい菌を運んでくるのはあんたしかいないんだから」

 なるほど確かに不特定多数の人間と会うのは私だけで、インフルエンザに一番近いの島にいるのは間違いない。しかし妻よ、私は生まれて一度もインフルエンザに罹ったことがないのだよ。

 埼京線のなかのマスク率は5%。

★    ★    ★

 営業中の話題もインフルエンザばかり。関西への出張やサイン会は結構中止になっているらしい。

 ただでさえ激しい落ち込みの5月の売上が、これ以上落ちるのはシャレにならない、でも自分が一番最初にインフルエンザに罹り、お店が休みになったらもっとシャレにならないと、それこそ私以上に不特定多数の人と接する書店員さんは大変だ。

 自宅待機の間、本を読んでくれればいいのだが、そういうお客さんは外に出られないから、ネット書店で買うのだろうか。

★    ★    ★

 今多くの書店さんの料理書をにぎわせているのが『彼ごはん』なのであるが、本日廻った銀座ではこの手の料理書は売れないらしい。先日ここで報告した高山なおみも苦戦しているようだし、お弁当本や家飲みの本も売れないとか。

 その代わりこの地で売れるのは『ジョエル・ロブションのお家で作るフランス料理』ジョエル・ロブション(インターナショナルラグジュアリーメディア)や『ワインのおつまみ  人気店の初公開レシピ』(世界文化社)なのだそうだ。やっぱり「銀座」である。

 こちらはどこでも売れているのかもしれないが、『世界一の美女になるダイエット』エリカ・アンギャル(幻冬舎)はバカ売れ中だとか。世界一か......。

5月16日(土) 炎のサッカー日誌

 ちょうど一年前のここ埼玉スタジアムで、ガンバ大阪のサポーターから浦和レッズの応援席へ水風船やらいろんなものが飛んで来て、まさに"戦場"と化したのであるが、本日の試合ではまったくそのような雰囲気もなく、「うんこれっず」等の弾幕も出ず、平和的に試合が行われた。

 試合も0対0の引き分けで、もう少しシュートを打って欲しい気持ちもあるのだが、内容はここ数試合の停滞期を抜け出し、満足出来るレベル。今はこうやって浦和レッズの変化を楽しむ気持ちが大切で、順位や勝ち点は気にしないようにしているが、でもやっぱり気にしちゃうのである。

5月15日(金)

 頭が小説脳になっているので、こういうときに一気に小説を読む。

 書店さんの間で評判の良い『男と点と線』山崎ナオコーラ(新潮社)。
「作家の読書道」で「『男と点と線』は純文学系の雑誌というか、各出版社の文芸誌に順々に発表していった作品ということもあって、大分違いますね。大人っぽい本になったと思います。」と発言されているとおり、確かに今までの作品に比べると文学志向が強い。

 新刊見本を提出すると、つい気が緩んでしまう。

 6月は新刊が『今夜もイエーイ』大竹聡著と『別冊SF本の雑誌』の2作もあるからそれどこじゃないんだけど。

5月14日(木)

 私が本の雑誌社に転職して来た時、前任のSさんから「こんなことはどのビジネス書にも書いてあると思うけど、営業で大切なことはお客さんをしっかり名前で呼ぶってことです」と妙に生真面目に言われたことを思い出す。

 それは何も「○○ちゃん」とか愛称で呼べというわけではなく、ふつうに「浜田さん」とか「松村さん」というように、相手を社名でなく名前で呼べということだった。私は前の会社でも営業をしていたのだが、改めてそんなことを注意されたことがなったので、それ以来気にして、名前を呼んでしっかり挨拶するように心がけている。それが役立っているのかはわからないけれど。

 ただし名前を呼ぶには怖い点もあって、200店舗近くのお店を廻っているととどうしても名前が覚えられない、というか、とっさに出てこないときがある。そういうときに間違えて前任者の名前で呼んでしまったらアウト。寝言で妻以外の女の名前を呼んでしまうのと同様で、間違いなくレッドカードで退場になるだろう。

 だから私はお店に入る前に、営業リストを確認する。そこには棚担当者からお世話になっている書店員さんの名前が店舗ごとに記入してあるのだが、それらを一瞥した上で、お店に入るのである。

 それから「逆もまた真なり」で、自分の名前を毎回しっかり名乗るようにしている。

「こんにちは(はじめまして)本の雑誌社の杉江です」

 これは書店員さんが自分のことを認識していると思ったら大間違い。毎日何人、何十人もの営業マンが訪問する書店さんにとって、名刺交換しただけで覚えられるわけがなく、そういう場合、やっぱり先に社名と個人名を名乗って、相手に自分が誰であるかしっかり認識してもらった上で話をしたほうが良いだろう。

★    ★    ★

 通勤読書は、去年の今頃『田村はまだか』(光文社)が、ヒットしていた朝倉かすみの新作『玩具の言い分』(祥伝社)。

 今作は世間的にちょっと「重い」と言われそうな女性たちの恋愛短編集。1歩踏み出す手前ですべての短編が終わっていて、切れ味が素敵だ。読了後、いろんな意味で重そうな事務の浜田にプレゼント。

 著者のブログで「そして、一見、短編集。でも、わたしのなかでは連作短編集なのだった。どんなふうに「連なっているのか」を分かっていただけたら、嬉しいです。」とあるのだが、なんだろう、日付かな?

★    ★    ★

 直行で、取次ぎ店さん廻り。
 今月の新刊『岸和田の血』中場利一の見本が出来上がったのでお届けする。

 地方小出版流通センターのKさんとアマゾンの不思議な発注について議論。

「やたら『3』が多いんだよね」
「世界のナベアツが発注しているんじゃないですか?」

5月13日(水)

  • オウン・ゴール (角川文庫)
  • 『オウン・ゴール (角川文庫)』
    Andrews,Phil,アンドリュース,フィル,亨, 玉木
    角川書店
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 朝ニュースを見ていたら、大日本印刷グループと講談社、小学館、集英社が、ブックオフの株式約30%を取得するとあって、ひっくり返る。これで返品も売り先ができたということか?! あるいはブックオフで新刊を売るのか?!

 大日本印刷はすでに丸善やジュンク堂、主婦の友社などとも資本提携などしており、これはまさに出版業界の銀河系軍団を目指しているのだろうか。あるいはチェルシーのアブラモビッチか。足し算でなく、かけ算になるといいんだけどなあ。

 ちなみに今年のチャンピオンズリーグは、マンチェスター・ユナイテッドとFCバルセロナが決勝に残っているのだが、両チームともぶれないコンセプトの元に作り上げてきたチームである。

 まあどちらにしても地域リーグか県リーグのようなところで出版活動をしている本の雑誌社にはあまりにかけ離れた世界での出来事なので、なんだかまったくわからない。

★   ★   ★

 通勤読書は、サッカーのJFLの用具係(ホペイロ)を主人公にした『ホペイロの憂鬱 JFL篇』井上尚登(東京創元社)。サッカーチームで起こったちょっとした事件や謎をホペイロの坂上栄作が中心となって解いていく。サッカーファンというよりは、ほのぼのミステリー好きにはいいかもしれない。

 ただ、この本のなかで「昔のサッカーボールといえば、黒と白の五角形の皮を縫い合わせ」とあるのは「五角形と六角形の皮」の間違い。私が以前勤めていた会社の編集者もワールドカップに合わせて、なぜか歯科の本の表紙にサッカーボールをデザインしようと企み、五角形をたくさんはめ込んだのだが、丸にならないと嘆いていたのを思い出す。
 
 それとサッカー・ミステリー(?)といえば、『オウン・ゴール』フィル・アンドリュース(角川文庫)が面白かったのだが、もう続編が出ることもないのだろうか。

 紀伊國屋書店新宿本店に行き、文芸書の担当者Kさんが休憩中だったので、2階をぶらついていたら、雑誌売場と文庫売場の間で、とんでもないフェアをやっていて腰を抜かす。

 作家を対決させるアイディアも素敵だが、なんと全著作に手書きのPOPがついているのだ。しかもそれが今の言葉で紹介されており、例えば『富士日記』には「ブログを書いている人にぜひ読んでほしいです。いかに日常を書くか、いかに自分を記すか。武田百合子は日記の神です」と紹介されていた。

 書店営業になって15年以上経つが、今まで見た書店のフェアで1、2を争う好フェア。というかこれが常設でないのが残念だ。

「すごっいすねー」と食事から戻られた文芸書のKさんに話を伺うとなんだか勤続1、2年の若手が集まって半年くらい前から準備していたとか。「応援したくなりますよね」と自分は関わっていないKさんもとっても嬉しそうだった。こういうのを見ると紀伊國屋書店の底力を感じてしまう。

 配られている立派な小冊子は限定のようなので、興味のある方は急がれた方がいいかも。

★   ★   ★

 会社に戻ると浜本が「うちの会社は大蔵省印刷局に買ってもらえないかな」と呟いていた。「そうしたら『本の雑誌』の付録にお札を付けるのに」だと。

5月12日(火)

  • 山手線ぐるり おみやげ散歩
  • 『山手線ぐるり おみやげ散歩』
    美樹, 伊藤
    ポプラ社
    1,362円(税込)
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  • ニッポン・ビューティ 本物の女たちの 美しい生き方
  • 『ニッポン・ビューティ 本物の女たちの 美しい生き方』
    Grazia編集部,Grazia編集部
    講談社
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    honto
 日頃、子どもが起きている時間に帰ることができない私にとって、平日子どもと過ごせる時間は朝の1時間だけである。そのうち30分はテレビ東京の「おはスタ」に負け、残りの30分が私の時間となる。娘とはなぜか習慣となっている相撲&キックボクシングをし、後に娘が名付けた「ラブラブタイム」に移行する。ようは娘を抱っこし、お話をする時間なのだが、このとき娘は昨日あったことのうちに私に報告したいことがあればそれこそ息せき切った感じで話だす。

「パパ、10秒1だったよ」
 随分重くなった娘を抱えていると娘が話し出す。
「何が?」
「だから50メートル走だよ」

 そう言われても私にはその10秒1が速いのかどうかがわからない。記憶を手繰ると自分は6秒台だったような気がするのだが、それは中学校か高校のときの記録だろう。小学校3年生のときは果たしてどうだったんだろう。不思議に思っていると、娘は何で褒めてくれないんだという顔をして話を続けた。

「3年女子の平均は10秒5で、男子の平均は10秒1なの。だから私は3年生の平均より速くて、女子のなかではクラスで2番だったの!」
「ほんとかよ?!」

 私は思わず大きな声で問いただしてしまったが、なぜなら娘は去年まで酷い運動音痴で、1年生の持久走大会では、スタートと同時に転んで、クラスで最下位。運動会だって2年ともビリだったのだ。にわかに信じられない進歩なのだが、娘は漫画のように「エッヘン!」と胸を張っている。

 そういえばサッカーを始めてしばらくしたとき、ミニゲームの最中に一学年下の子から「下手!って言われた」と泣いていたのだ。練習を見る限り娘は初心者としてはふつうのレベルだと思っていたのだが、そこはサッカー王国・浦和である。女の子でもサッカーをやっている子は幼稚園から男女混合チームに入っているから、その女子チームに入団するまでに基礎ができていたりするのである。

 おそらくこれは辞めると言い出すだろうと思ったので、私は娘に読ませていた漫画「キャプテン」や「プレイボール」の谷口の話をした。

「谷口君も最初はすごい下手だったんだよね」
「そうそうユニフォームで間違えられてキャプテンにされちゃって」
「でも上手くなったよね」
「夜、神社で練習したんだよね、壁に向かって」
「お前も練習すればいいんだよ。ほら自治会館の前に壁があるじゃん」
「あっ、説教か!?」

 3年生ともなると素直に話を聞かないのだが、それからしばらくして妻から報告を受ける。
「あの子さ、夕方になるとボールを蹴りに行ってるよ」

 それ以外でも私が始めたジョギングに途中まで付いて来たり、あるいはサーキットトレーニングを一緒にやったりしていたから、知らぬ間に筋力が付いていたのであろう。それが10秒1という記録に繋がっているのだ。

 胸を張る娘の足を掴んで、股とふくらはぎの筋肉を確かめる。そこには確かにこんもりと筋肉が突き出していた。

★   ★   ★

 どうして同じ山手線の、それも一駅しか変わらない本屋さんなのに、こんなに売れ筋が違うのだろうか。

 最初に訪れた五反田の、ブックファーストでは、山手線各駅のおすすめスポットやお土産などをイラストで紹介した『山手線ぐるり おみやげ散歩』伊藤美樹(ポプラ社)が売行きランキングの1位に君臨していたのであるが、隣駅の目黒の有隣堂では、現役で活躍されている80代(!)の女性にインタビューした「ニッポン・ビューティ 本物の女たちの美しい生き方」が売れているではないか。しかもそれらの本が、どちらも売れそうな隣の恵比寿駅の有隣堂ではどうかというと、それほどでもないといった感じなのである。

 うーん、わからない。展開の方法や立地、客層いろんな理由がそこにあるんだろうし、特に今のように特出したベストセラーがないときは、こういうものが目立つこともあるだろう。しかしこれだけ近くの、そしてそれほど規模も変わらないお店でこれだけ違うのだから、本作りや営業も変わってくるだろう。どこのお店の、どこの棚で売ってもらうのか、そこまで考えて企画を出す必要があるかもしれない。

 その帰り道、今、私が一番刺激を受けるお店である、ブックファースト新宿2店を訪問し、いつも独特の売上ランキングを確認すると、こちらにも上記2冊は入っておらず、その代わり『されど"服"で人生は変わる』齋藤薫(講談社)が堂々の1位で、2位に『今日のおかず 季節も食べる!』 高山なおみ(アノニマ・スタジオ)であった。

 やっぱり本屋さんは面白い。

5月11日(月)

  • 原田泰治ART BOX ふるさと日本百景 (原田泰治シリーズ)
  • 『原田泰治ART BOX ふるさと日本百景 (原田泰治シリーズ)』
    原田 泰治
    講談社
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 日曜日に負けると月曜の出社がいちだんとつらくなる。しかも今季ホーム初敗北。我ら浦和レッズは、まだ発展途上のチームなのだと思い知る。

「本の雑誌」6月号の搬入。
 今月号はおそらく「本の雑誌」初の外国文学特集であるのだが、いろんな角度から外国文学を紹介しており、自画自賛ながら相当面白いと思う。社員や助っ人は「本の雑誌」を貰えるのであるが、浜田に680円払ってしまった。

 昼からは『その街の今は』(新潮文庫)がちょうど文庫になった柴崎友香さんへ「作家の読書道」のインタビュー。教科書が大好きだったという話に、教科書を買ってすらいなかった私はおののく。

 その後、リブロの矢部さんを訪問し、もろもろ情報交換。そのリブロで『原田泰治ART BOX ふるさと日本百景』(講談社)を発見。即購入。

 夜は、本屋大賞の会議。

 帰りの電車のなかで「働き過ぎなのではないか」と隣のおじさんに言われた気がした。

5月8日(金)

 東京駅で待ち合わせし、高野秀行さんと宮田珠己さんと電車に乗り込み、一路、内澤旬子さんが引っ越した千葉県某所へ向かう。

 内澤さんはその元・居酒屋の住居でこれから豚を飼うそうなのだが、その住まいの風呂が仮設で湯気が部屋に回ってしまって大変だから壁を作って欲しいというのが今回の依頼である。「塀の匠」である我らエンタメ・ノンフ「大改造!劇的ビフォーアフター」チームは、ホームセンターへ軽トラを走らせたのであった。

 高野さんはホームセンターに興奮していたが、そうか東京の人はこういう場所が珍しいのか、とホームセンターだらけの埼玉県民の私は思ったのであった。ついでに宮田さん共々、内澤邸の周りの田んぼから聞こえるカエルの声を感動していたのであるが、それも私にとっては日常だった。

 元・機械設計科卒の私の図面を元に、几帳面の宮田さんが材料を見つくろい、高野さんがどんどん作業をしていく。いったい私たちは何をしているんだろうか? なんて考える暇がないほど3人は熱中し、内澤さんの想像していた以上に素晴らしい壁が出来上がる。まさに「エンタメ・ノンフは豚を救う」か。

 夜はそのままエンタメ・ノンフ文芸部の合宿となり、それぞれが書いた小説(!)の品評をする。私の処女作は「小説になっとらん!」「慣用表現が多すぎる!!」と厳しい指摘を受け、撃沈。立ち上がれない可能性大である。

 散々酒を飲んで、布団に横になるが、高野さん、宮田さんと川の字になり、内澤さんの手料理を食べる日が来るなんて、人生分からないものである。埼玉スタジアムで田中達也からパスをもらって、私がゴールを決める日もそう遠くない気がしてきた。

5月7日(木)

「幼稚園に行きたくない」と泣き叫んでいた娘に手を焼いたのは4年前だが、今、息子は「早く幼稚園に行きたい」と泣き叫んでいる。そんなに家が嫌なのだろうか。

 連休最終日の昨日は、実家に帰り、兄貴の置いていった本棚から金子光晴の著作などを漁りつつ、ギターを引っ張り出し久しぶりに弾いてみた。すると息子が駆け寄って来て、いきなり歌を歌い出した。

 おれの、おれの、おれのだ〜♪
 おれの、おれの、おれのだ〜♪

 てっきり何かの主題歌だと思って、「なんの歌?」と聞いたところ、「ごーちゃんの歌」と言うから初作詞・作曲をしたらしい。いつも娘とニンテンドーDSやらお菓子やら様々なものを奪い合っているから、この歌詞はまさに息子の魂の叫びなのであろう。
 これぞロック!

 そんな子どもたちからやっと離れられるゴールデンウィーク明けの出社日。

 しかしこちらには貯まっている仕事が山のようにあるわけで、いつも以上に早めの出社から午後2時まで、集中力をマックスにしてデスクワーク。どうにかケリを付けた頃には、なんだか怪しいテンションになっていたが、今度は5月刊の新刊『岸和田の血』中場利一著の事前営業の締切がせまっているので、駆け足で営業に出かける。

 神保町は雨が降るまでゴールデンウィークの売上も良かったようだが、目を引いたのは三省堂書店で店頭ワゴンに展開されていた、真っ赤な装丁の『ネトゲ廃人』芦崎オサム(リーダーズノート株式会社)である。

 その書名どおりネットゲームにハマったっ人々を取材したノンフィクションのようだが、1971年生まれの私たちは、ネトゲではないかれど、受験期にドラクエにハマって高校受験に失敗したり、受験校のランクを下げたやつがたくさんいた。

 その後、丸善お茶の水店を訪問するとすでに2回目の「お茶丸大賞フェア」が始まっており、これから5月末まで展開。前回同様この1ヶ月の売上を競い、勝った出版社の人間がフェア展開できる権利を手にするのだ。私も末席ながら参加させていただいており、応援よろしくお願いします。

 さてその丸善お茶の水店では、有隣堂のUさんとならび、多くの文庫をPOPによってベストセラーに育ててきたYさんが、『転落』永嶋恵美(講談社文庫)に「まさに10年に1冊出るか出ないかの極上ミステリ」とキャッチコピーを付けて大きく展開。しかもつい先日拝見したときは大量に積んであったのに、今日はもうすでにほとんど在庫のない状態でベストテンの2位にランクしていた。すごいな。

 どれだけ長年営業をしてもやっぱり5日も開くと声をかけるのに緊張する。

5月1日(金)

 会社のホワイトボードを見ると、29日からがゴールデンウィークで本の雑誌社は休暇になっているが、昨日は私以外が全員出社し、本日は私とタッキーが出社している。昨年も思ったのだが、いったいこのホワイトボードは何のためにあるのだろうか。七夕の短冊と一緒で願いを書くのだろうか?

「浦和レッズが楽しいサッカーで優勝しますように」

 通勤読書は『荻窪風土記』井伏鱒二(新潮文庫)。営業マンとしてはこのような記述がとても気になる。

「その頃、新宿紀伊国屋の店頭で、『文芸都市』は月に4冊か5冊くらい売れていたが、左翼文芸雑誌『文芸戦線』は百冊配本のうち一箇月で百冊近く売れていたようだ。同じ左翼文芸雑誌でも『戦旗』の読者は素早くて、この雑誌は配本されると同時に発禁になるのを知っているから、配本を待ちかねて紀伊国屋へ買いに来た。百冊配本されて即日百冊売切れになった」
 
 火を吹く怪獣浜田も、大声で叫ぶ浜本も、あちこちにぶつかって悲鳴をあげる松村もおらず、静かな社内でデスクワークが捗る。

『尾道坂道書店事件簿』の3刷目が印刷会社より届く。

4月28日(火)

  • 就職しないで生きるには
  • 『就職しないで生きるには』
    レイモンド マンゴー,中山 容
    晶文社
    1,525円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto
 編集に顔を突っ込んだり、広告の営業もしていたりすると、会社の人間から好きでやっていると思われているフシがあるが、そうではない。私が一番やりたいのは、日本中の書店をくまなく営業して廻ることだ。

 本屋大賞の用意などで、ご無沙汰になってしまっていた小田急線を営業。
 
 町田のA書店で、F店長さんとフェアの話。客層などをうかがっているとどう考えてもうちの本よりも「クイック・ジャパン」や「ユリイカ」のバックナンバーフェアの方が売れそうで、あるいは『就職しないで生きるには』レイモンド・マンゴー(晶文社)を中心にしたフェアがいいのではないかと思わず進言してしまった。

 何をやっているだと落ち込みつつ会社に戻ると、名古屋の書店さんからバックナンバーフェアの依頼が届いていた。ありがとうございます。

 そういえば先日あった営業マンは自社本の悪口ばかり言っていたが、ああいうのはみっともないし、それは社内であれば通用するが、その本を売ったり読んだりしている人の前でやってはいけないことだと思う。

 というか文句があるなら自分で作ればいいのである......ってそういうことをやっていると私のように何が本職かわからなくなるのかもしれないが。

4月27日(月)

 世間では週末より休みでゴールデンウィーク16連休なんて会社があるそうだが、本当だろうか。嘘だと言って欲しい。しかもそういう会社の人がテレビに出て「勉強をする」とか「アルバイトをする」と発言していたが、それでは夢がなさ過ぎる。ヨーロッパに行って、サッカーを5試合見るとか言って欲しい。

 いつかそういう人生を送るために、私は今日も働いているのだから。

 通勤読書は『どくろ杯』金子光晴(中央公論新社)。
 高野秀行さんとお会いした時に話題にあがり、また宮田珠己さんも読売新聞の「空想書店」で推薦していたので、10数年ぶりの再読。そしてその印象の違いに驚く。

 20代前半のとき読んだときはこの本の良さにちっとも気付かず、どうしようもない人間だなあなんて思っていたのだが、40歳を目前に控えた今、再読すると、こうしか生きれなかった人間の叫びであることに気付かされる。アホだった。オレはやっぱりアホだったんだなあ、兄ちゃんごめん。私もこうしか生きれない人間なのだ。

 中央線を営業。
 リブロ吉祥寺店では『ゼロの王国』鹿島田真希(講談社)に「本からオーラが出ています!」というPOPが立っていたが、まったく同じことを先週リブロ渋谷店のYさんと話していたのだ。素晴らしい装丁だ。

 また冒頭の金子光晴を愛読していた山崎ナオコーラさんの新作『男と点と線』(新潮社)もゲラを読んだ書店員さんから大変評判が良く、楽しみである。

 産経新聞から「本屋大賞」の取材を受けた後、夜は御茶ノ水で、第2回お茶丸大賞の飲み会。
 こちらは出版社の営業マンが自社本他社本を1冊ずつ推薦し、期間中に誰が一番売れる本を選定できるかというフェアである。

 若い営業マンが学生のコンパのような酒の飲み方をしていて、思わず「裸にならないように」と注意してしまった。恐らくどこのテーブルでも「裸」が話題になっていたと思われる。

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