« 前のページ | 次のページ »

5月12日(火)

山手線ぐるり おみやげ散歩
『山手線ぐるり おみやげ散歩』
伊藤 美樹
ポプラ社
1,337円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS
ニッポン・ビューティ 本物の女たちの 美しい生き方
『ニッポン・ビューティ 本物の女たちの 美しい生き方』
Grazia編集部
講談社
1,470円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS
されど“服”で人生は変わる
『されど“服”で人生は変わる』
齋藤 薫
講談社
1,620円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS
 日頃、子どもが起きている時間に帰ることができない私にとって、平日子どもと過ごせる時間は朝の1時間だけである。そのうち30分はテレビ東京の「おはスタ」に負け、残りの30分が私の時間となる。娘とはなぜか習慣となっている相撲&キックボクシングをし、後に娘が名付けた「ラブラブタイム」に移行する。ようは娘を抱っこし、お話をする時間なのだが、このとき娘は昨日あったことのうちに私に報告したいことがあればそれこそ息せき切った感じで話だす。

「パパ、10秒1だったよ」
 随分重くなった娘を抱えていると娘が話し出す。
「何が?」
「だから50メートル走だよ」

 そう言われても私にはその10秒1が速いのかどうかがわからない。記憶を手繰ると自分は6秒台だったような気がするのだが、それは中学校か高校のときの記録だろう。小学校3年生のときは果たしてどうだったんだろう。不思議に思っていると、娘は何で褒めてくれないんだという顔をして話を続けた。

「3年女子の平均は10秒5で、男子の平均は10秒1なの。だから私は3年生の平均より速くて、女子のなかではクラスで2番だったの!」
「ほんとかよ?!」

 私は思わず大きな声で問いただしてしまったが、なぜなら娘は去年まで酷い運動音痴で、1年生の持久走大会では、スタートと同時に転んで、クラスで最下位。運動会だって2年ともビリだったのだ。にわかに信じられない進歩なのだが、娘は漫画のように「エッヘン!」と胸を張っている。

 そういえばサッカーを始めてしばらくしたとき、ミニゲームの最中に一学年下の子から「下手!って言われた」と泣いていたのだ。練習を見る限り娘は初心者としてはふつうのレベルだと思っていたのだが、そこはサッカー王国・浦和である。女の子でもサッカーをやっている子は幼稚園から男女混合チームに入っているから、その女子チームに入団するまでに基礎ができていたりするのである。

 おそらくこれは辞めると言い出すだろうと思ったので、私は娘に読ませていた漫画「キャプテン」や「プレイボール」の谷口の話をした。

「谷口君も最初はすごい下手だったんだよね」
「そうそうユニフォームで間違えられてキャプテンにされちゃって」
「でも上手くなったよね」
「夜、神社で練習したんだよね、壁に向かって」
「お前も練習すればいいんだよ。ほら自治会館の前に壁があるじゃん」
「あっ、説教か!?」

 3年生ともなると素直に話を聞かないのだが、それからしばらくして妻から報告を受ける。
「あの子さ、夕方になるとボールを蹴りに行ってるよ」

 それ以外でも私が始めたジョギングに途中まで付いて来たり、あるいはサーキットトレーニングを一緒にやったりしていたから、知らぬ間に筋力が付いていたのであろう。それが10秒1という記録に繋がっているのだ。

 胸を張る娘の足を掴んで、股とふくらはぎの筋肉を確かめる。そこには確かにこんもりと筋肉が突き出していた。

★   ★   ★

 どうして同じ山手線の、それも一駅しか変わらない本屋さんなのに、こんなに売れ筋が違うのだろうか。

 最初に訪れた五反田の、ブックファーストでは、山手線各駅のおすすめスポットやお土産などをイラストで紹介した『山手線ぐるり おみやげ散歩』伊藤美樹(ポプラ社)が売行きランキングの1位に君臨していたのであるが、隣駅の目黒の有隣堂では、現役で活躍されている80代(!)の女性にインタビューした「ニッポン・ビューティ 本物の女たちの美しい生き方」が売れているではないか。しかもそれらの本が、どちらも売れそうな隣の恵比寿駅の有隣堂ではどうかというと、それほどでもないといった感じなのである。

 うーん、わからない。展開の方法や立地、客層いろんな理由がそこにあるんだろうし、特に今のように特出したベストセラーがないときは、こういうものが目立つこともあるだろう。しかしこれだけ近くの、そしてそれほど規模も変わらないお店でこれだけ違うのだから、本作りや営業も変わってくるだろう。どこのお店の、どこの棚で売ってもらうのか、そこまで考えて企画を出す必要があるかもしれない。

 その帰り道、今、私が一番刺激を受けるお店である、ブックファースト新宿2店を訪問し、いつも独特の売上ランキングを確認すると、こちらにも上記2冊は入っておらず、その代わり『されど"服"で人生は変わる』齋藤薫(講談社)が堂々の1位で、2位に『今日のおかず 季節も食べる!』 高山なおみ(アノニマ・スタジオ)であった。

 やっぱり本屋さんは面白い。

« 前のページ | 次のページ »