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6月15日(月)

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)
『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045)』
佐藤 尚之
アスキー
802円(税込)
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 日頃ビジネス書はまったく読まないのであるが、仲の良い営業マンHさんが「杉江さんは絶対読んだ方がいい」と教えてくれた『明日の広告』佐藤尚之(アスキー新書)を読む。

 ネットが普及するまでは、かつての広告が消費者に影響を及ぼし、まさに広告として機能していたが、今はそれが通用しなくなっており、そこで大切なのは消費者本位主義の展開である、という話なのであるが、そういえばこの本は『尾道坂道書店事件簿』児玉憲宗著でも絶賛されていたのであった。児玉さんはこのなかで書かれている「広告」を「書店」に置き換えて読んだそうだが、私は「広告」を「本」に、「消費者」を「書店員」に置き換えて読んだ。

 広告同様、今、出版営業(文芸)の手法は大きく変わろうとしている。かつてはチラシ1枚を持って書店を回っていればそれなりに注文が取れたのであるが、出版点数が増えた今、それでは説得力がないため、出版社は自社の新刊をお客さんの目にとまる以前に、書店員さんの目にとまるよう工夫しだしたのである。

1)チラシ営業
2)ゲラを渡す
3)ゲラを渡した上、感想をもらってそれを帯や広告に活用する
4)出版時に作家を読んで懇親会を開く
5)編集段階から書店員さんに参加していただき、タイトルや帯、装丁、内容などに意見をもらう

 5)のような方法を私は「出版営業2.0」と呼んでいるが、これで大成功したのが、今年の本屋大賞受賞作『告白』湊かなえ(双葉社)である。『告白』は出版前に幾人かの取次・書店員さんが双葉社に集まり、プロジェクトチームのようにタイトルや装丁、広告展開など話し合われていたそうだ。制作段階からここまで書店員さんが絡んだのは、おそらく初めてであろうし、それによって双葉社内も各部署が一致団結してこの本を制作・販促していったようだ。

 今やミクシィ等のSNSのなかで、書店員さんによって日々ゲラの感想が書き込まれる。書店員さん同士の横のつながりも密接なため、それを見た別の書店員さんがまたゲラを手に入れ、そうやって出版前にかなりの新刊の情報が書店員さんに共有化されており、もはや営業の戦いは、書店に並ぶ前に始まっているのである。いや下手したら終わっているかもしれない。

 しかし本の難しいところは電化製品や車と違って、感想が多種多様であるということだ。私がクソ本だと思う本を、他の人が絶賛していることが多々あるし、その逆もあろう。その辺の趣味性を最大公約数にしていっていいのか私にはよくわらからない。けれど今や独りよがりで本を作っていたのでは、店頭にすら並ばないことがある。

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 夜、大竹聡さんが予約注文分にサインをしにくる。
 サインしつつ、「杉江さん朝5時に起きて走ってるんですか?」と聞いてきたので、ついに大竹さんも酒と決別し、清い身体を手に入れようとしだしたのかと自分のランニング体験を事細かに説明する。

 するとなんと大竹さんもこの日の朝5時に起きて、いきなりランニングはつらいと考え、近所を散歩したそうだ。

「いやー慣れないことしちゃいけないですね。多摩川の土手を登ったら思いっきり吐いちゃいましたよ、朝ゲロ。すっきりしたなあ。いいすっねーやっぱり運動は」

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