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6月4日(金)

 昨日の朝、妻がいきなり携帯の画面を見せつけてきた。
 そこには赤色と黒色の手作り風小物入れが映っており、まるで浦和レッズのグッズのようであった。

「幼稚園のバザーに出品されるものなんだけど、なんなら番号入れて作ってくれるってよ」

 そういえばここ数日妻からこれをプリントアウトして欲しいとかいろいろ頼まれていたのだ。そうかバザーが近いのか。じゃあ頼もうかなと画面を見ていると、妻が何番?と聞いてくる。この質問が実はいちばん困るのであった。実は私は誰か特別好きな選手が浦和レッズがいるわけではなく、浦和レッズそのものが好きなのであった。そうはいっても象徴的な番号はあるわけで......と考えていると。

「やっぱり一番好きなの福田でしょう?」

 と聞いてくる。さすが結婚13年(おそらく)。私が唯一浦和レッズ以上にその人そのものが好きな選手はわかっているわけだ。ところがその後妻が漏らした言葉によって、私の家の朝の平和な風景は一転したのであった。

「福田って何番だっけ?」

 まさか浦和に住んでいる人間で福田の背番号を知らない人がいるだなんて知らなかった。というかそんなの人間としてどうなのだ。妻を怒鳴り飛ばし、土下座させ、私は説教を垂れる姿を想像したのであったが、もちろんそんなことはできるわけがないのである。ただでさえ、「散歩の達人の取材だよ」と言い含め、新潟だ仙台だと行っているのを苛立ちながら見られているからだ。

「9番」

 不機嫌に答えるが精いっぱいであったが、妻の前で不機嫌な表情をすることすら日常的に出来ないので、どこか愛想笑いしているように見えたようで、妻は「ああ、9番、9番」とのん気に言い、台所へ向かっていたのであった。

 それが今朝になって妻がまた言ってきたのでる。

「福田って8番でいいんだっけ?」

 8番は広瀬治だ!

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