11月1日(月)
廃人になってしまった。
タバコをやめ、酒も減らし、ランニングをし、体重も7キロ落としたというのに、私はもうダメ人間の奈落の底に落ちてしまった。それもこれも通勤の埼京線で私の隣でニンテンドーDSをやっていた青年がいけないのだ。
その小さな画面を覗いたとき、そこに懐かしいものが映っていたのだ。小さなサッカー選手がちょこまかと動きまわり、試合が終わるとオフィスのシーンに移動した。それは私が学生時代から狂ったようにやってきた自前のサッカーチームを作り運営するゲーム「サカつく」である。そうか、DSで出ているのか。
そこで終われば単なる回顧で済んだのが、会社についてついamazonで検索してしまったのだった。
私が一時期から「サカつく」をやめたのは、そのロードがアホみたいに時間がかかる問題であり、画面が変わるたびに数分の時間がかかり私はテレビの前で「ジー、ジー」と唸るゲーム機の前で呆けたようにしていなければならないのであった。だからゲーム内の時間で一年進めるのに何時間もかかり、それは私の実人生の時間をあっという間に消費していったのでった。
本も読めなければ、仕事もできない。
というわけで、私は新作が出ても「サカつく」に近づかなくなって10年ぐらい過ぎ去ったのではなかろうか。それにしてもあんなに余計な時間のかかるゲームをよくみんなやるなとamazonのレビューを覗くとほとんどが5つ星ではないか。あの頃よりハードが進化したということか。
そして週末、私は気づいたら子どもも連れずにゲーム屋さんにおり、「サカつく」を購入したのであった。そのソフトをニンテンドーDSに挿し込んでから、ほとんど記憶がなく、しかもニンテンドーDSは携帯ゲーム機だから持ち運んでいつでもやれるわけであり、私のカバンの中に息子から奪い取ったニンテンドーDSが入っているのである。
ああ、もう仕事も手につかない。俺は廃人になるだろう。会社もクビになるかもしれん。
頭を抱えて、会社のパソコンで「サカつく」後略サイトを覗いていると、隣から声が聞こえてきた。
「ハイ、晶文社です」
そうか、俺はついに狂ってしまったのだ。
本の雑誌社を退職させられ、いつの間にか犀のマークの出版社に転職していたのだ。『数の悪魔』と植草甚一を営業するのか......。
「す、すいません。本の雑誌社です、ハイ」
隣で編集部の宮潤が真っ赤な顔で電話を手にして頭を下げている。
そういえば、宮潤は以前、晶文社に勤めていたのだ。俺とトレードだったのか......。
違う!
俺はまだ本の雑誌社に勤めていて、編集の宮潤が、間違って電話に出ただけのだ。
だからこそ浜本が「お前はまだ晶文社に帰属意識があるな」と宮潤をにらんでいるのだ。
俺はまだ大丈夫。
さあ、「サカつく」をやりに営業に出よう。
タバコをやめ、酒も減らし、ランニングをし、体重も7キロ落としたというのに、私はもうダメ人間の奈落の底に落ちてしまった。それもこれも通勤の埼京線で私の隣でニンテンドーDSをやっていた青年がいけないのだ。
その小さな画面を覗いたとき、そこに懐かしいものが映っていたのだ。小さなサッカー選手がちょこまかと動きまわり、試合が終わるとオフィスのシーンに移動した。それは私が学生時代から狂ったようにやってきた自前のサッカーチームを作り運営するゲーム「サカつく」である。そうか、DSで出ているのか。
そこで終われば単なる回顧で済んだのが、会社についてついamazonで検索してしまったのだった。
私が一時期から「サカつく」をやめたのは、そのロードがアホみたいに時間がかかる問題であり、画面が変わるたびに数分の時間がかかり私はテレビの前で「ジー、ジー」と唸るゲーム機の前で呆けたようにしていなければならないのであった。だからゲーム内の時間で一年進めるのに何時間もかかり、それは私の実人生の時間をあっという間に消費していったのでった。
本も読めなければ、仕事もできない。
というわけで、私は新作が出ても「サカつく」に近づかなくなって10年ぐらい過ぎ去ったのではなかろうか。それにしてもあんなに余計な時間のかかるゲームをよくみんなやるなとamazonのレビューを覗くとほとんどが5つ星ではないか。あの頃よりハードが進化したということか。
そして週末、私は気づいたら子どもも連れずにゲーム屋さんにおり、「サカつく」を購入したのであった。そのソフトをニンテンドーDSに挿し込んでから、ほとんど記憶がなく、しかもニンテンドーDSは携帯ゲーム機だから持ち運んでいつでもやれるわけであり、私のカバンの中に息子から奪い取ったニンテンドーDSが入っているのである。
ああ、もう仕事も手につかない。俺は廃人になるだろう。会社もクビになるかもしれん。
頭を抱えて、会社のパソコンで「サカつく」後略サイトを覗いていると、隣から声が聞こえてきた。
「ハイ、晶文社です」
そうか、俺はついに狂ってしまったのだ。
本の雑誌社を退職させられ、いつの間にか犀のマークの出版社に転職していたのだ。『数の悪魔』と植草甚一を営業するのか......。
「す、すいません。本の雑誌社です、ハイ」
隣で編集部の宮潤が真っ赤な顔で電話を手にして頭を下げている。
そういえば、宮潤は以前、晶文社に勤めていたのだ。俺とトレードだったのか......。
違う!
俺はまだ本の雑誌社に勤めていて、編集の宮潤が、間違って電話に出ただけのだ。
だからこそ浜本が「お前はまだ晶文社に帰属意識があるな」と宮潤をにらんでいるのだ。
俺はまだ大丈夫。
さあ、「サカつく」をやりに営業に出よう。