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4月12日(火)

WEB白水社にて連載中の「蹴球暮らし」第5回:ヒーローを更新。

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 昨夜、先週金曜日に入学式を終え、通常登校初日を終えた息子が、私の帰宅を待ち構えていたように階段を駆け降りてくる。

「パパ、学校楽しかったよ」

 そのことを一日中心配していた私は、息子を抱きかかえ頬を寄せた。腕から腰にジーンと重さが伝わってくる。
 そうしてやるといつも息子は喜ぶのに、この日は冴えない表情を見せる。

「でもね......」
「どうした? 誰かにいじめられたのか?」
「うんうん。あのね、しゅうちゃんがいないんだよ」

 しゅうちゃんとは、つい先月まで通っていた幼稚園のクラスメートであり、息子の初恋の相手だ。しかししゅうちゃんは学区が違い、隣の小学校に通うことになっている。

「いないか?」
「そうなんだよ。ぼくは1組なんだけど、しんやくんの教室も、なおくんの教室も、さえちゃんの教室も見たんだけどいないんだよ。1年生の教室はもうないんだ。しゅうちゃんはどこにいるのかな」

 息子は今日も学校で、しゅうちゃんを探しているのだろうか。

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 その息子を登校班の班長として連れて行く娘は、今朝、私に向かってこう問いかけてきた。

「パパさ、本の仕事しているんでしょう? じゃあさ、今日発表される本屋大賞って知ってる?」
「えっ?」
「パパの会社、小さいから知らないんでしょう。テレビでやっていたけど、本屋さんがね、みんなで投票して決めるんだって。何に決まるかなあ。私が知っている本か、パパが持っている本ならいいなあ」

 本屋大賞を作ろうと遅くまで会議していた頃、私が帰宅すると赤ちゃんをあやす妻から何度ももっと早く帰ってきて欲しいと嘆かれたものだった。

 第8回本屋大賞の発表は今夜7時です。

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