« 前のページ | 次のページ »

9月21日(水)

笑い三年、泣き三月。
『笑い三年、泣き三月。』
木内 昇
文藝春秋
1,728円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS
『笑い三年、泣き三月。』木内昇(文藝春秋)を読了。

 戦後すぐ浅草に集まった訳ありの男たち(少年含む)が、ひょんなことから演劇場で共同生活を開始する。特別何かの謎があるわけでもないし、一気にストーリーが動き出すわけでもない。それなのにページをめくる手が止まらないのは、明らかにこの著者・木内昇の表現力と物語る力の凄さだろう。浅草の町並みや戦後の人の営みなどが、まるで目の前で動いているようだ。木内昇は、宮部みゆきなどと同様に、まさに小説を書くために生まれて来た人だと思う。

 強烈な台風が近づいており、出社前、発行人の浜本から「会社は休みにしようか?」とメールが届いた。しかしすでに会社に行く準備をしていたので、「これくらい震災に比べたら何でもないです」と答えたのだが、いざ会社に行ってみるといつ電車が止まってもおかしくない天候。

 しばらく営業をしていると「帰っていい」とお達しが届き、喜んで家路につく。その時点で我が頼りなき武蔵野線は15分ほど遅れていたのだが、それから一時間後、運転を中止していた。間一髪セーフ。

 家ではこちらも早く帰っていた子どもたちと騒いで遊ぶ。

「パパ、もしかして酒飲んでる?」
「なんで?」
「パパがこんなテンション上げるなんて酒飲んでいるときしかないから」

 娘はそうやって私の口に鼻を近づけるのだった。
 私のテンションが高かったのは酒のせいではなく、台風のせいだと思われる。

« 前のページ | 次のページ »