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7月1日(水)

私の恋人
『私の恋人』
上田 岳弘
新潮社
1,296円(税込)
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 5時起床。

 早朝読書を始める前にネットをつなげると、「出版状況クロニクル」が更新されており、その冒頭に記されている「15年5月の書籍雑誌の推定販売金額は前年比10.7%マイナスという大幅減」という文字に衝撃を受ける。

 信じられないけれど、確かにどの書店さんも5月はひどいと言っていたし、電車に乗ればほぼ全員がスマホを取り出す時代、すっかりみんな本や雑誌の存在を忘れてしまったかのようだ。参った。参ったけれど、降参するわけにはいかない。

 ファイティングポーズをとっての早朝読書は、お笑い芸人の又吉直樹が落ちたことばかりが報道された第28回三島賞受賞作『私の恋人』上田岳弘(新潮社)。

「私が一人目のクロマニョン人だった頃」なんて文章を読むと、松鶴屋千歳の「俺がむかし夕焼けだった頃、弟は小焼けで」を思い出し、よほどこちらのほうが芸人なのではないかと思ってしまったが、『私の恋人』はクロマニョン人の生まれ変わりの、収容所に捉えられたユダヤ人の生まれ変わりの、三周目の私が主人公の、時も空間も超えた人類の文明を描く壮大な物語である。

 まさにこれぞ小説だからできる表現であり、読み終えたときには思わず拍手喝采! スタンディングオベーション! 芥川賞とのダブル受賞決定だ! と思ったらなんと候補になっていなかった。えっ?!

 午前中は「本の雑誌」の企画会議。午後はやる気を振り絞り、デスクワーク。

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