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1月27日(金)

 上京している内澤旬子さんと銀座で待ち合わせし、「本の雑誌」の連載「着せ替えの手帖」の取材を兼ねて初のオーダースーツに挑む。目標は浅野忠信。

 吉田勝次『洞窟ばか』(扶桑社)読了。素晴らしい。思い起こせば、川口浩探検隊もドラゴンクエストも最もワクワクしたのは洞窟だった。岩と岩の間に身体を埋め、這いつくばって前に進むも、その先に何があるのかわからない。まさに"未知"の世界にドキドキしたのだ。しかしそれをこんな大人が真剣にやっていたとは。そしてまだ世界には未知の洞窟があるだなんて。

1月26日(木)

 仕事が思い通りに進まないと新入社員の高野が、パワーストーンを抱いて持ってくる。入社一ヶ月で神頼み! 来月辺りには社内に神棚ができているかもしれない。

 朝から新刊チラシと注文書、書店向けDM制作に勤しむ。DMの裏面で苦戦し、完成に至らず。高野のパワーストーンに手をかざす。

 夕刻、早速追加注文の入った『Y先生と競馬』を丸善丸の内本店さんに直納。急遽、夜の会合が中止になったので、早めに帰宅し、ランニング7キロ。ここ数日西の空に謎の発光体があるのだけれど、あれはなんだろうか。

1月25日(水)

 著者名五十音順で単行本も文庫も一緒に並ぶHMV&BOOKS TOKYOさんの文芸書の棚が素晴らしい。担当のSさんにお会いできなかったもののしばらくうっとり眺める。

 夜、酒飲み書店員OBの新年会に参加。飲み会の話題の7割が健康の話となり、着実に年を重ねていることを思い知る。そして書店から病院勤務になられたSさんより「牛乳飲むとコレステロールあがっちゃうよ」という衝撃的な発言を聞き、慄く。この2週間の決死の挑戦は、まるで無駄どころか身体に悪影響だったとは。

1月24日(火)

「おすすめ文庫王国2017」の時代小説部門にランクインしていた天野純希『戊辰繚乱』(新潮文庫)が何となく気になり読み始めたのだが、これが「どっひゃー!こんな傑作読み逃していたのか!」と腰を抜かすほどの作品で、昨日今日と寝る間も惜しんでページをめくり大興奮の読了。会津藩士にして新撰組隊士の山浦鉄四郎と薙刀の名手であり烈女・中野竹子の幕末に飲み込まれた運命にどっぷり。青春小説であり、恋愛小説であり、新撰組小説でもある感涙胸熱の大傑作。

 北与野のBookDepot書楽さんへ『Y先生と競馬』のパネルとPOPをお届けす。担当のHさんとしばし本屋大賞に熱く語る。その後、埼玉を営業。しばらくぶりの満足感に浸りつつ、浦和の紀伊國屋書店Nさん推薦のぱぷりこ『妖怪男ウォッチ』(宝島社)を買い求め、本日は直帰。

 凍えるような寒さのなか、ランニング7キロ。走り終える頃、身体があたたまる。

1月23日(月)

  • 逆鱗マニア
  • 『逆鱗マニア』
    日食なつこ
    Living,Dining&kitchen Records
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 通勤ミュージックは日食なつこ『逆鱗マニア』。最近は毎朝これ。一曲目の「ログマロープ」を聴かずして一日は始まらぬ。

 待望の新刊、坪松博之『Y先生と競馬』搬入となる。
 感無量。一刻も早く帰宅し、我が本棚の一等地に並べている山口瞳氏の著作とともに並べたいが、何よりもひとりでも多くの人に、この傑作評伝を読んでもらわねばならぬ。終日、営業に勤しむ。

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1月13日(金)

  • アオアシ 1 (ビッグコミックス)
  • 『アオアシ 1 (ビッグコミックス)』
    小林 有吾,上野 直彦
    小学館
    607円(税込)
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  • それでもわたしは山に登る (文春文庫)
  • 『それでもわたしは山に登る (文春文庫)』
    淳子, 田部井
    文藝春秋
    693円(税込)
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  • タベイさん、頂上だよ (ヤマケイ文庫)
  • 『タベイさん、頂上だよ (ヤマケイ文庫)』
    田部井淳子
    山と渓谷社
    968円(税込)
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  • 【第156回 直木賞受賞作】蜜蜂と遠雷
  • 『【第156回 直木賞受賞作】蜜蜂と遠雷』
    恩田 陸
    幻冬舎
    1,959円(税込)
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 午前中、昨日に引き続き隠密行動。

 昼、一旦会社に戻り、メール送信などした後、駒込の「BOOKS青いカバ」さんに納品にあがる。すると店主のOさんが、とある出版社に取引依頼の電話をかけていたのだが、どうやらその出版社は直取引は一切やっていないらしく取次店経由を薦められていた。

 私はOさんにこれまでお世話になっていたのもあるし、Oさんの仕事ぶりも知っているし、何よりお店を見て本の雑誌社の本をここに並べてもらいたいと思ったので、すぐに直取引の話をしたのだけれど、世の中そう簡単なもんじゃないらしい。

 その後、営業して、会社に戻ると、昨夏、大阪に異動になられた取次店N社のNさんがやってくる。しばしお話。

 そのNさんから教わったサッカー漫画『アオアシ』を買い求めるため閉店間際の御茶ノ水丸善さんに飛び込む。『アオアシ』全巻(1〜7)、田部井淳子『それでもわたしは山に登る』(文春文庫)、田部井淳子『タベイさん、頂上だよ』(ヤマケイ文庫)、『洞窟ばか』(扶桑社)、恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)を購入。

 本を買うときにはいくつかパターンがあるのだけれど、今日はこの本が欲しいと思って本屋さんに行ったとき、思い描いていた3、4冊がきちんと見つかると、投球練習で肩が温まったピッチャーのように次から次へと読みたい本が出てきて、気づけば10冊15冊腕に抱えていることが少なくない。

 しかし逆に、最初の3、4冊が見つからず、例えばそのなかで2冊しかなかったときは、結局その2冊も棚に戻し、本を買わずに帰ってしまうことも多い。

 自分にとって本当にいい本屋さんというのは無意識下にあった興味を棚によって引き出される本屋さんなんだけれど、そう言うと品揃えにこだわった個性あふれるお店に一見思えるが、実はそのじっくり棚に没入できる状態になるには、この最初の3、4冊がなければならず、で、その最初の3、4冊というのはよくよく考えてみるとそんな難しい本ではなく、新聞広告で見かけた新刊だったり、書評で興味を抱いた本だったり、あるいはテレビで知った人の本だったりするわけだ。

 例えば今日買った本なんていうのは、ほとんどそれにあたる。『アオアシ』は人気漫画だし、田部井淳子さんは先日NHKで放送された番組を見て感動し本が読みたくなったものだし、『蜜蜂と遠雷』は直木賞候補作だ。『洞窟ばか』だけは、田部井さんの本の近くに並んでいたので発見できた新刊で、もし今日閉店間際でなければ、店内をゆっくり徘徊し、そしてこの『洞窟バカ』のような発見をたくさんして、腕に抱えられないほどの本を買い求めていたことだろう。

 品揃えがいい、とはいったいどういうことなのか。考えながら帰宅。

1月12日(木)

  • Light Upon the Lake
  • 『Light Upon the Lake』
    Whitney
    Secretly Canadian
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 140bの青木さんと昼飯を食した後、夜まで隠密行動。久しぶりにヘトヘトとなり、帰路、途中下車した武蔵浦和の須原屋さんで半ば放心しつつ、本を眺める。

 帰宅後はベッドに横になり、Whitney「Light Upon the Lake」を大音響で聴く。沁みる。

1月11日(水)

  • 本の雑誌404号2017年2月号
  • 『本の雑誌404号2017年2月号』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    734円(税込)
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  • 本屋、はじめました: 新刊書店Title開業の記録
  • 『本屋、はじめました: 新刊書店Title開業の記録』
    良雄, 辻山
    苦楽堂
    1,760円(税込)
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    honto

 娘は16歳となり、息子は12歳となった。それぞれ行動範囲がぐんぐん広がっている。親の目のなかで過ごして欲しいが、成長するためには制約し続けるわけにもいかない。毎日、最も心をこめて使っている言葉は「気をつけてね」だ。

 2017年最初の「本の雑誌」が搬入となる。巻頭の川出正樹さんの書斎が圧巻。

 午前中会議。
 昼に丸の内のM書店Tさんと博多のM書店Tさんが美術館めぐりの合間に揃って遊びに来てくださる。

「めんめんかめぞう」で今年初のラーメンを食した後、一路津田沼へ。M書店Sさんに新年のご挨拶。年を明けてからの売上がとてもよく、思わず間違っているんじゃないかと計算しなおしてしまったとか。「何かが特出して売れるんじゃなくて、なんとなく来店客数が増え、まんべんなく本が売れている。こういうのがいちばんにありがたい」もちろんそれはSさんはじめお店の方々のひとつひとつの積み重ねの結果なんだけれど、世の中に「本を読もう」という気分が広がってくれるのが確かにいちばんありがたい。

 続いて船橋のときわ書房さんを訪問するとUさんが何やら荷物を作っている。訊けばサイン本の注文をネットで受け付けており、全国から注文が届くのだそうで、中にはまとめ買いされる方もいれば、常連になって上京された折には、わざわざお店に顔を出してくれるお客さんもいるとか。

 そういえば開店一周年を迎え『本屋、はじめました』(苦楽堂)も出版された荻窪のTITLEさんも自前で管理するWEB SHOPへの注文が全国からたくさん届いているそうで、Amazonや大手ネット書店で「便利」に本を購入するお客さんとは別に、送料を負担してでもそのお店で買うという「意志」をもったお客さんが増えているのかもしれない。

 思えばTITLEさんもそうだけれど、最近オープンし話題になり繁盛している本屋さんは、意外と駅からそれなりに距離があったりして、正直、以前の感覚でいえば好立地とは言えないところが多い。当然、家賃との兼ね合いがあっての出店なんだろうけれど、実は「わざわざ行った」という体験をさせることも重要になっているような気がする。もちろんそれはある種の本屋さんに関してなんだけれど。

 その後も営業を続け、遅くなってしまったので直帰。
 牛乳を飲んでから7キロ走ったらお腹壊す。たぶん今まででいちばん速く走った。

1月10日(火)

 午前中に気合と集中をもってデスクワークを片付け、いざ、2017年の書店訪問始め。

 しかし、約10日ぶりの営業は、思考も口も回らず、お店を出た後には肩を落とし反省ばかり。ただ引きずっていると足が動かなくなるので、心にフタをし、とにかくお店を廻ることに徹する。

 夕刻、昨日駒込にオープンした「BOOKS青いカバ」さんを訪問。こちらのお店は昨夏までリブロに勤めていた小国さんが、「GOOD BOOKS」をモットーに古本も新刊も扱う「本」屋さんである。

 思ったよりも広い店内(15坪)は、いつか古本屋をやろうと買い集めていた在庫ではまだまだ不足していたようで、本が並べられていない棚も多い。しかしこのお店が醸し出す雰囲気、なによりも小国さんの知識と人柄ーーすべて本が埋まったとき「BOOKS青いカバ」さんは、東京で重要な本屋さんになるのは間違いない。その変化を見ていくのが楽しみ。

 夜、遅くまで本屋大賞の会議。
 そして、さらに遅くまで飲む。

1月6日(金)

  • ニュー・スキン
  • 『ニュー・スキン』
    CRX
    SMJ
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 引き続き『Y先生と競馬』を読み進む。校了まで時間が許すかぎり目を通し続ける。午後は座談会の進行。夜は第2回「本のフェス」の打ち合わせ。早く書店さんへ新年の挨拶まわりに伺いたいのだけれど、どうやら私の本来の仕事始めは来週からのよう。

 ゴキゲンなギターロック、CRX「New Skin」を聴きながら帰宅。

1月5日(木)

  • ブラックライダー(上) (新潮文庫)
  • 『ブラックライダー(上) (新潮文庫)』
    東山 彰良
    新潮社
    737円(税込)
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  • サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
  • 『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』
    ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
    河出書房新社
    2,090円(税込)
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  • サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
  • 『サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福』
    ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
    河出書房新社
    2,090円(税込)
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    honto

 年末年始の休暇は、初詣に精を出し、できるかぎりの神社やお寺をめぐり、神頼みに勤しんだ。もちろん願ったのは、鹿島アントラーズに掠め取られたJリーグのシャーレ奪還。

 一週間ぶりの仕事も、Yシャツのボタンをとめるとすぐさま仕事モードに切り替わる。というか、よもやいつでもスマホで仕事のメールが読めてしまう時代なので、オン・オフという感覚はほとんどなく、長期休暇中も常にアイドリング状態といったところ。

 通勤読書は、読もう読もうと思っていた『ブラックライダー』東山彰良(新潮文庫)にやっと手を付ける。あまりに状況説明が少なく読み始めは苦戦したものの、映画のような描写とセリフに徐々に引きこまれていく。それにしても登場人物一覧は欲しかったか。

 出社。2017年の本の雑誌社が幕開け。1976年創刊の「本の雑誌」は41年目を迎える。今年は某所で大規模な本の雑誌展を開催予定。

 社員各自と新年の挨拶。昨年いっぱいで編集の宮里が退社したため、新入社員の高野が本日初出社。といっても一年以上前から一緒に机を並べ働いていたので、滞りなく引き継ぎ完了。

 机に向い、今年は初心に戻ることを誓い、筆ペンを握って「心機一転」と書き初めをしていると、事務の浜田より新入社員の荷物置き場づくりを申しつかる。筆ペンをトンカチとドライバーに持ち替え、三段の棚を組み立てる。2017年の初仕事。そののち、3日に締め切った本屋大賞一次投票のFAX投票を必死に打ち込む。

 あっという間に2時。セブンイレブンに行き、意を決して牛乳を買い求める。NHK「ガッテン」で牛乳が尿酸値を劇的に下げると言っており、高尿酸血症と痛風に悩む私には大変な朗報なのであるけれど、実は私、高尿酸血症以前に、心のアレルギーで小学校6年生以来牛乳を口にしたことがないのである。15分ほど紙パックの牛乳とにらめっこし、息を止め、33年ぶりの牛乳を喉に流し込む。

 NHKといえば昨日放送の「クローズアップ現代」で紹介された『サピエンス全史』(河出書房新社)が大ブレイクの兆候。2017年初ベストセラーか。

 午後、印刷会社より、今月の新刊『Y先生と競馬』の紙焼きが届く。明日校了。すべての仕事を中断し、最後の読み込みに勤しむ。何度読んでも面白く、ついつい読み進んでしまうが、確認作業なので冷静に読まねばならぬ。それでも一文一文に魂を注ぎ込みながら読む。「私」という人間を本を通して作ってくれた山口瞳を蘇らせるのだ。

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