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5月22日(月)少年は荒野をめざす日

  • 愛蔵版BOXセット 少年は荒野をめざす 全3巻【分売不可】
  • 『愛蔵版BOXセット 少年は荒野をめざす 全3巻【分売不可】』
    吉野 朔実
    本の雑誌社
    6,600円(税込)
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    honto

 9時に出社。誰もいない社内でデスクワークを集中しめ片付ける。すぐさま会社を飛び出し、東京駅へ。出社前のM書店Tさんとお茶。

 終日営業。
 とある書店さんを訪問すると前回訪問したときと棚の配置が変わっており、リニューアルしたことに気づく。どうなったんだろうと店内を一周してみると文具売り場ができていた。最近のリニューアルでは、たいてい文具か雑貨、時にはカフェコーナーが新設される。もちろん、その分、並べられる本の数は減る。書店の坪数(床面積)の統計はあるけれど、在庫数を比較したらいったいどんな結果になるんだろうか。

 夕方会社に戻ると、吉野朔実『愛蔵版BOXセット 少年は荒野をめざす』が搬入となる。
 あまりの重さに(1.63kg!)、なんでも「ハイハイ直納させていただきます。杉江が持っていきますので」と安請け合いする事務の浜田に、直納は5冊までと言い渡す。

 今週末大阪のクリエイティブセンター大阪で行われる「KITAKAGAYA FLEA 2017 SPRING & Asia Book Market」の出品準備。出張予定の浜田が、食い倒れで飲み倒れるとやる気満々。

5月19日(金)人間ポンプを買う日

 12連勤最終日。自分がどこにいるのかわからなくなってくる。

 出かけるときは、いつも三省堂書店さんの一階を通っていくのだけれど、数ヶ月前にリニューアルされて以来、一階の視認性がとても高まり、ついつい足を止めてしまうことが増えている。

 本日も新刊平台の前で一冊の本に吸い寄せられるように足が止まり、手が伸びる。そして即購入。

 筏丸けいこ『人間ポンプ』(フラミンゴ社)。子どもの頃、テレビで見てなんでも飲み込んでしまうその驚異的な芸に引きこまれた園部志郎の評伝だ。

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 それにしてもいったいどうして時速4,5キロで歩き、流れる視野のなかでこの本がしっかり目に飛び込んでくるのだろうか。本屋さんの奇蹟、というか実は技術。

 終日営業。取引依頼のあった、とある古本屋さんを覗く。

5月18日(木)面白い話をたくさん聞いた日

  • スウィングしなけりゃ意味がない
  • 『スウィングしなけりゃ意味がない』
    佐藤 亜紀
    KADOKAWA
    1,980円(税込)
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    honto

 12連勤11日目。世の中には「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えない人がいるんだな。まあそんなの人じゃないけれど。今後は関わりを持たずに生きていくことにしよう。

★    ★    ★

 早稲田の古本屋「古書現世」に内澤旬子さんが取り組んでいる「小豆島に猪や鹿などの野生獣の食肉解体処理施設(極小)を作るためのクラウドファンディング」のチラシを届ける。

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『早稲田古本屋日録』(右文書院)や『早稲田古本屋街』(未来社)といった著作もある店主の向井さんとは面識はあるもののお店を訪れるのは初めて。早稲田の古本屋街は神保町より敷居が低い感じで思わず均一ワゴンに引き寄せられてしまいそうになるもどうにか関門をくぐり抜け、チラシをお届けす。

 店主の向井さんとしばし雑談。非常に興味深い買い取りの話を伺い思わず原稿依頼しそうになるが、とても活字にできる話でなく残念無念。本当に面白い話は、アンダーグラウンドに眠っているのだ。

 その後、埼玉を営業。「横丁カフェ」の連載をお願いしている北与野のブックデポ書楽の長谷川さんを訪問すると、「今年はこれですね」と言って棚を指さされる。その指の先には手書きで「2018年本屋大賞ノミネート間違いなし」と記されたPOPが立つ、佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』(KADOKAWA)。

 佐藤亜紀といえば『ミノタウロス』(講談社文庫)を「本の雑誌」の年間ベストテン1位にしたくて丸坊主にしたのが懐かしい。(ちなみにその年間ベストテンの座談会だけをまとめた『ベスト10本の雑誌』はこちらで密かやかに発売中)

 大宮で、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」を運営している高校図書館司書の方とお話。学校図書館の現状についてレクチャーいただくも、ひとりでも多くの子に本を届けようとしている姿勢に感動する。

 世の中には「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えない人がいる代わりに、こうやって情熱と愛情を持ってきちんと生きている人もいるのだ。今後の人生は、こういう人と関わって生きていくこととしよう。

 直帰後、ランニング。7キロ。精神安定につとめる。

5月17日(水)初めての読書の日

  • オシムの言葉 増補改訂版 (文春文庫)
  • 『オシムの言葉 増補改訂版 (文春文庫)』
    木村 元彦
    文藝春秋
    1,930円(税込)
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    honto

 12連勤10日目。曜日の感覚がまったく失われている。

★   ★   ★

 中学校に入学した息子が、私の本棚を見上げるようにして「パパ、本、貸してよ」と言ってきたのは、一月ほど前のことだった。訊けば、中学校では「朝読(あさどく)」と呼ばれる時間があって、これから毎日、授業が始まるまでの15分間、本を読む時間があるのだという。

 息子はこれまでほとんど本を読んだことがなかった。読書感想文の宿題で本を手にしていたことはあったけれど、あれは課題であって読書ではない。息子にとって本当の意味での読書が始まる。私は涼しい顔をして息子と一緒に本棚を眺めていたが、内心ではここが大きな分かれ道だと考えていた。

 読んで欲しい本は山ほどあった。それこそ息子の名前の由来である本もあった。でもそれが読めるとは限らなかった。やっぱり読書には順序と経験値があって、本を読み慣れていない人がページをめくり続けるために重要なことが3つあると思っている。ひとつは知りたいことがそこに書かれていること。もうひとつは先の展開が気になること。そして自分と同じ境遇が書かれていること。好奇心、ストーリー、共感と置き換えてもいいかもしれない。

 13歳とはいえ、幼さの残る息子はまだ思春期というほど思い悩んでいるようには見えない。毎日ボールを蹴って、腹いっぱいご飯を食べられれば笑って眠っている。幸せってなんだろう?なんてまだ考えてもいないはずだ。だから本に人生の何かを求めるというよりは、今、いちばん知りたいことが書かれている本か、大きな謎のあるミステリを薦めるかどちらかだろう。

 私は本棚の前で悩みながら息子にいくつかの質問をした。

「どういう話が好き?」
「どういう話って?」
「うーんと、謎があるとか、変な生き物が出てくるとか、悪者を倒すとか」
「みんな好きだよ」
「そうか......」

 腕を組んで本棚を見つめるしかなかった。自分がどんなものを好きなのかわかるにはもう少し時間が必要のようだった。

 うろうろと本棚の前をうろついていた息子がある棚の前で立ち止まる。そこはサッカー本を収納している棚の前だった。メッシやクリスティアーノロナウドといった息子のヒーローの名前が背表紙に刻まれている。

 息子が今いちばん知りたいこと。それは......。
 私は息子の目の前の本棚から2冊の本を抜き取り、手渡した。

『浦和レッズの幸福』大住良之(アスペクト)と『オシムの言葉』木村元彦(文春文庫)だった。

 この2冊は我が家の聖書であり聖典だから、何より読んで欲しいという気持ちもあったけれど、去年の秋から突如浦和レッズとサッカーを観るということに目覚めた息子にとって今一番知りたいことがこの2冊に書かれているはずだった。

 手にした本をペラペラとめくった息子は「面白そう。ありがとう」と言って、自分の部屋に戻っていった。

 それから毎日、私は息子がどこまで本を読み進んだか気になって仕方なかった。カバンを開けた時に覗きこんで、しおりがどこに挟んでいるか確かめようとも思ったし、何気なく本の話題を振ってもみた。しかし息子から何の反応もなかった。単刀直入に訊けばいいのかもしれないが、それでは読書感想文と変わらなくなってしまう。

 3日ほど前のことだった。部屋の本棚を眺めていると、息子に貸したはずの本が元の場所にささっていた。

 これはどういうことだろうか。読み終えて戻したのだろうか。それとも読みきれなくてこっそり戻したのだろうか。やっぱりいきなりノンフィクションは難し過ぎただろうか。謎解きが気になるミステリにすればよかっただろうか。

 本棚の前で首を傾げていると、ちょうど息子が塾から帰ってきた。

「あっ、パパ。ただいま」

 私は2冊の本を息子に見せながら聞いてみた。

「これ、読んだのか?」
「読んだよ。すごい面白かったよ」

 息子は興奮気味に話しだした。浦和レッズの歴史について。オシム監督の凄さについて。しかし何よりも興奮していたのは自分が本を読み切れたことだった。

「オレだって本読めるんだよ」と胸を張って階段を駆け上がっていく。そして途中で振り返ると「パパ、『リバース』って話持ってる? ドラマが面白いんだよね」と言った。

5月16日(火)12連勤9日めの日

  • 愛蔵版BOXセット 少年は荒野をめざす 全3巻【分売不可】
  • 『愛蔵版BOXセット 少年は荒野をめざす 全3巻【分売不可】』
    吉野 朔実
    本の雑誌社
    6,600円(税込)
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    honto

 GW明けからの12連勤9日め。仕事は丸投げ丸逃げされ、宮田さんに指摘されたとおり、本当にブラック企業なのかもしれない。足下がふらふらす。

 8時半に出社。吉野朔実さんの代表作『少年は荒野をめざす』の愛蔵版BOXセットが印刷所から届くのを待つ。本当は昨日の夜に届く予定だったのだけれど、箱詰めやらパッキングやら作業が多く、半日ずれてしまった。

 しばらくすると台車が床を鳴らす音が聞こえ、宝物のような本を運んでくる。包装を解くとすごいオーラ。

 じっくり堪能したいところだけれど、すぐさま取次店さんに見本出しに向かわなければならず、10冊をふたつの袋に詰めて、会社を飛び出す。見本史上最大重量に両肩が抜け、足が地面にめり込む。この重さは、かつて勤めていた医学書の重さだ。

 どうやら5月は新刊が少ないようで、取次店さんの窓口もほとんど並ぶことなく予定通りの進行で受け付けていただく。

 4社廻って、会社に戻り、書店さん向けダイレクトメールを作っていると、NR出版会のTさんから電話。

 NR出版会といえば、最近たくさん出ている本屋さん本のなかでも別格の面白さだった『書店員の仕事』(新泉社)の編者ではないか...と興奮していると、まさにその出版記念会のお誘いをいただく。

 帰りの電車のなかで遠田潤子の新刊『冬雷』(東京創元社)読了。期待を裏切らない遠田潤子の世界。いったいこの怨念のような空気はどこから来るのだろうか。

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