« 2017年8月 | 2017年9月 | 2017年10月 »

9月25日(月)

  • 飯場へ: 暮らしと仕事を記録する
  • 『飯場へ: 暮らしと仕事を記録する』
    拓也, 渡辺
    洛北出版
    2,860円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 予定通り週末に息子のギプスが取れたので送迎終了。息子から「パパ、ありがとうございました」と言ってもらえたから脱臼も悪くない。

 息子も娘もまっすぐ育っている。もしかすると私には、メッシがDFに囲まれてもドリブルで交わしていけるような、あるいはクリスチアーノロナウドがどのような体勢でも正確なキックを蹴れるのと同じように、子育ての特殊な才能があるのかもしれない。

 ギブスは取れたものの、息子はまだ一週間は走ったり、球を蹴ったりしらたいけないらしいので、息子のサッカー復帰は来週とのこと。

 ちなみに私は昨日、痛風発作が出ているにも関わらず、人数が足りないからとフットサルに参加。あまり動かず絶対発作の出ている左足では球を蹴らないと決意していたのにも関わらず、試合が始まってしまえばすっかり忘れ、あろうことかゴール前で左のスペースに球が来た瞬間に左足を振り抜いていた。

 これが普通のサッカーならまだよかったのだけれど、フットサルではトゥキック(つま先蹴り)を多用するため、我が痛風発作の左足は風が吹いても痛いはずが、硬いボールの衝撃を最も敏感になっているつま先で受け、もはや指がぶっ飛んだかの強烈な痛みを発する。蹴った球はゴールネットを揺らしゴールになったものの、私自身も終焉を迎えた。

 痛風で
 やるもんじゃない
 サッカーは

 8時半出社。なんだか最近デスクワークが増えていて、ふと気づくと14時なんてことがあり、これでは本業の外回りが存分にできなくなってしまう。外回りができなければ当然会社の業績は悪化。いかんせん昼寝をしている人間はいても、外回りする人間は私ひとりの会社なわけで、12時までにすべて片付けいざ外回りしたいがため、自主的に始業時間を早めることにしたのである。

 その甲斐あって、昼にはデスクワーク終了。『古典名作本の雑誌』と萩原魚雷『日常学事始』を御茶ノ水の丸善に直納しつつ、そのまま中央線を営業に。

 西荻窪の今野書店や荻窪のTitleを覗くと、この町に住んでいる人が羨ましくなる。羨ましいけれども、我が家の近所にもなんのヘンテツもないツタヤがあり、ここは配本と本部主導の選書の意思のまったく感じられないお店なのだけれど、それでも私にとっては今野書店さんやTitleさんに負けない心の灯台なのだった。

 仕事帰りや休日にまったくオフな気分でツタヤに向かい、あれもない、これもないと嘆きつつ、しょうがないこれでも買ってくかと買い求めた文庫本や雑誌から私はたくさんの発見をしてきたのだ。子どもの頃を思い出せば、本なんて近所の五坪の本屋さんにある本がすべてだったではないか。

「今そこにあるサッカーを愛せ!」とはJFLホンダロックSCのサポーター、ロック総統の言葉であるが、この言を借りるなら、「今そこにある本屋さんを愛せ!」と叫びたい。

 しかしそんなことを言えるは都心で働いているからかもしれない。いざとなれば、いや、いつでも私は好きな本を買える環境にあるのだ。一度広い世界を知ってしまった人間はきっと耐えられないだろう。もし都心で働くことをやめたら、私はきっとAmazonのヘビーユーザーになるだろう。あるいは本との接点が減って、読まなくなってしまうかもしれない。

 それにしても私は、プレミアリーグをこれだけ観ても、愛しているのは浦和レッズだ。もっとも時間をかけ、見つめているのも浦和レッズであり、苦しみも喜びも浦和レッズとともにある。

 なぜだろうか。広い世界を知っても、身近なものを愛する気持ちはどこから湧いてくるのだろうか。なぜ愛し続けられるのだろうか。どうしたら愛される存在になれるのだろうか。

 Titleの棚を眺め、いろんなことを考えつつ、近所のツタヤで絶対棚に並んでないだろう渡辺拓也『飯場へ』(洛北出版)買い求める。この本を近所のツタヤで客注するという案もあるけれど、「今、見つけたところで本を買え!」が、購書のマナーである。

 帰宅後、「URAWA MAGAZINE」の原稿を送る。

9月22日(金)

  • ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス
  • 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
    滝口 悠生
    新潮社
    1,540円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 息子を車で中学校に送っていく。脱臼により装着されたギブスは、明日取れる予定なので送迎も本日が最後か。まあ送迎といっても近所だから五分もかからないのだけれど。

 通勤読書は、『茄子の輝き』(新潮社)を読んで以来、大注目中の作家・滝口悠生の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(新潮社)。いい。すごくいい。

 9時前に出社。ここのところ来客や打ち合わせや野暮用が多く、溜まってしまっていたデスクワークを一気に片付ける。告知、新刊登録、発注、メール。その間に広告代理店のMさんが「Newspaper+Bookstore」を持ってやってくる。こちらは読売新聞、毎日新聞、中日新聞が協力して書店さん向けにつくったフリーペーパー。新聞をどう書店店頭で活用するかとても丁寧に語られている。

 その後、晶文社のSさんも原稿を届けにくる。

 ちょうどデスクワークが片付いたところに、W出版のMさんから「ランチしませんか?」とメールが届く。Mさんのリクエストで、昼から焼肉。美味し。

 ランチ後、会社に戻ると集英社の編集者Tさんがやってくる。元助っ人アルバイトなのでしばし無駄口を叩く。

 営業に出かけると神保町は土砂降りの雨。駅に着くまでにビショビショ。売れ行き好調の『古典名作本の雑誌』の追加注文いただく。

 帰宅後ランニング...といきたいところだけれど雨。しかも実は3日ほど前から痛風の前兆で足の親指の付け根が痛んでおり、ランニングどころか歩くのもつらく痛み止めを飲んでいるのだった。息子のギブスを借りた方がいいかも。

 妻が家の電話が壊れた報告してくるので、速やかにネットで注文す。速やかに、というのが家庭円満の秘訣。

9月21日(木)

  • 今さらヒーローになれやしないが
  • 『今さらヒーローになれやしないが』
    SION
    テイチクエンタテインメント
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

 まだ9月だというのに、残すタイトルはアジア・チャンピオンズリーグだけとなってしまい、心身ともに絶不調。そんななか相変わらずの丸投げをされてうんざり。どうしたらそこまで自分で何も考えず生きていけるのだろうか。

 SIONのニューアルバム「今さらヒーローになれやしないが」が沁みる。救い。

9月20日(水)

 午前中、会議。秋のイベントの担当決め。

 午後、渋谷のHMV BOOKS TOKYOのYさんとSさん来社。とある新刊の応援企画について打ち合わせ。なぜ人は好きな本を応援したくなるのか。

9月19日(火)

 朝、息子を中学校まで車で送っていく。ギブスは今週末に取れるらしい。

 通勤読書は、「本の雑誌」の来月号で服部文祥さんがおすすめする本なんだけれど、これがすこぶる面白く危うく電車を乗り過ごしそうになる。こんな探検サバイバルが出ていたとは。

 8時半出社。FAXで届いていた手書き原稿を一気に打ち込む。

 11時、書評紙の大先輩、「読書人」のK社長来社。取次店N社のFさんの紹介で初対面。書評の現在と未来について語り合っているうちに、実はKさんこそ私が常々知りたいと考えていた出版インフラの近代化の中心にいらした方だと判り、鳥肌ものの話を伺ってしまう。編集の話はとかく表に出、後世に残りがちだけれど、本を届ける営業や流通の話はどうしても表に出て来ずらい。ぜひ本に残してくださいとKさんに懇願す。

 昼は久しぶりに「菊水」のひじきめし。それにしてもここ数年の繁盛ぶり半端ではない。開店からお客さんが途切れることなく、今日も13時半の訪問だというのに店の前には数人並んでいた。しかし、それだけ忙しいのにも関わらずお店の人の対応は心がこもっており、味、接客ともに神保町ナンバー1定食間違いなし。

 午後、営業。新規開店の独立書店を覗くも、志や棚はあるものの、残念ながら本がない。本屋さんを始めたい人はたくさんいるようだけれど、それに対応する流通と支援がまったく不足している。

 夕方帰社すると、すぐ「近くに営業に来てたので」と、レッズサポ仲間のJ出版Hさんがやってくる。少し前、彼女が得意としている分野の本作りについてメールで質問していたので、そのことを詳しくレクチャーしてもらう。

9月12日(火)

  • ニッポンの奇祭 (講談社現代新書)
  • 『ニッポンの奇祭 (講談社現代新書)』
    小林 紀晴
    講談社
    990円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 雨。息子を中学校まで車で送り届ける。雨だからではなく、先週サッカーの練習中に地球を蹴って右足の親指を脱臼してしまい、ギブスで固定してるため。何もできないのに朝練に出る意味があるのか問うと、ひとりグラウンドの隅っこで体幹トレーニングをしているらしい。何て真面目なんだろうか。

 しばらく待ったものの雨は止まず、カッパを着て自転車で駅へ向かう。駅前では雨をものともせず、浦和レッズサポーターの若者が「明日、スタジアムを真っ赤に埋めて、選手を後押ししましょう」とアジア・チャンピオンズ・リーグ準々決勝のビラを配っている。手伝えなくてごめんなさい。でも明日は仕事ほっぽり出して、埼スタで一緒に戦います。

 通勤読書は、小林紀晴『ニッポンの奇祭』(講談社現代新書)。諏訪出身の小林氏は、幼き頃、御柱祭にガツンとやられ、憧れと畏れを持って祭りに接してきた。本書では、日本各地の「大和王建によって神道が国家的祭祀として制度化される以前のものを古層と」呼び、その古層の姿を感じられる祭りを撮り歩いたルポである。

 私は子供の頃から祭りが苦手だった。祭りが苦手というよりは、人が普段と異なる顔を見せ、はしゃいだり激しく感情を表現する場が苦手だった。父親が初午で顔を真っ白に塗って練り歩いているのを恥ずかしく思っていた。

 しかしこの本を読んで気づいたのだけれど、それは傍観者だからであって、本来祭りを行なっている人たちは、その中に、祈りや願い、畏れを強く宿しているわけで、普段と異なる感情を表して当然なのだった。そしてそこで生まれる感情は、私があしげく通う埼玉スタジアムとそっくりだった。

 午前中、書庫座談会収録。

 昼飯は、雨のせいかほとんど並んでいなかった丸香でかけうどんとかしわ天。至福。
 私の不動の神保町ランチは、めんめんかめぞう(新博多ラーメン+替え玉かためん)、菊水(ひじきめし)、丸香(かけうどん+かしわ天)、天丼屋(天丼中盛り)、みやら製麺(ソーキそば)。

 午後、営業。渋谷のH書店Yさんから「宮部みゆきの『この世の春』(新潮社)読んだ?」と訊かれる。昨日も新宿のB書店Hさんから訊かれたのだった。なんだか読後、人と、というよりは私と話したくなるらしい。今夜から読み始める。

 雨が止んだので帰宅後ランニング。7キロ。息子を塾に迎えに行って、毎晩恒例のサッカーゲーム「FIFA2017」を対戦。主審が家本だったのか、謎のハンドの判定で1対2で負ける。

9月11日(月)

「パパ、パパーーー!!」という妻の悲鳴で飛び起きる。

 階段を駆け上がると、食卓で妻が中一の息子の背中をバンバンと叩いている。「喉に!」という叫び声の中、息子は口を開けて、白目を剥いていた。

 妻に変わって背中を叩こうとしたとき、息子の口からおえっと大きな塊が出てきた。バナナだった。

「息できるか?」と聞くも息子は放心状態で、言葉が出ない。
 しかし顔色は戻り、肩を激しく揺らしている。妻は床にへたり込み、荒い息をつきながら先ほどまで必死に息子の背中を叩いた手をじっと見つめた。

 うがいさせるため息子を洗面所へ連れていく。手と口元を洗い、水を注いだコップを渡す。ガラガラと喉を鳴らすも息子はまったく口をきかない。鏡に写る自分が実際に存在しているのか疑うように見つめている。

「怖かったか。もう大丈夫だぞ」と肩を抱くと、突然大きな声で泣き出した。身体を小刻みに震わす息子を強く抱きしめる。泣き止むまで抱きしめ続ける。

 仕事に向かっても動悸が治らなかった。打ち合わせ中も会議中も営業中もずっと息子のことを考えていた。もし上手く吐き出せなかったら、もし妻が異変に気づかなかったら......。

 自分が立っている場所は、想像しているよりもずっと不安定なのだった。

« 2017年8月 | 2017年9月 | 2017年10月 »