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1月6日(日)

  • ノマド: 漂流する高齢労働者たち
  • 『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』
    ジェシカ・ブルーダー
    春秋社
    2,592円(税込)
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 ジェシカ・ブルーダー『ノマド 漂流する高齢労働者たち』(春秋社)読了。年内に読み終えていたらベストに入れるほど面白かった。途中からこれは集中して読もうと取っておいた自分の馬鹿さ加減に涙が出て来る。

 アメリカでは、2008年の金融危機以降、仕事のなくなった人たち、資産を失ってしまった人たち、あるいは少額の年金しか支給されない人たちが、家賃やローンを払えなくなり家に住むことを諦め、車で暮らし始めているという。彼らは仕事を求めて広いアメリカを移動して生活する"ノマド(ワーキャンパー)"と呼ばれ、この『ノマド』はその実態を自らもワーキャンパーとなって迫る傑作ルポルタージュなのであった。

 ノマドの仕事は、シーズン時のキャンプ場の管理人や収穫時期の農場だったりするのだが、何よりも働き場所になっているのはなんとアマゾンの物流センターなのだ。アマゾンも繁忙期の労働者確保のため彼らを"キャンバーフォース"と呼び、駐車場まで確保して雇い入れている。そしてこの著者は、ワーキャンパーにいくら話を聞いても単なる取材では彼らの本当の気持ちには近づけないと、自らも車を買い、ワーキャンパーとして暮らし出すのであった。

 となると当然、アマゾンで働くことになるのだが、いやはや期せずして、まさかのアマゾン物流現場の実情が赤裸々にルポルタージュされている。

 サッカー場十数個分の広さを一日20キロ以上歩かされ、何千回とバーコードをスキャンする。ただそれだけの単純作業なのだが、日に千回近く腰を屈めるたりという肉体的キツさ、単純作業による精神的苦痛、また暑さ寒さといった環境により、多くの人が体調を崩していく。しかし体調を崩すのがあたり前のようで、ジェネリックの鎮痛剤が無料で配られているという。

 ノマドという暮らしの自由さ、不自由さ、そもそも暮らす=生きていくということは何なのかという根源的なことなど考えさせられ、しかもこれからの世の中では、自分だって住む場所を失う可能性がないわけではなく、非常に読み応えのあるノンフィクションだった。

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