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11月18日(水)

  • どうしてわたしはあの子じゃないの
  • 『どうしてわたしはあの子じゃないの』
    寺地 はるな
    双葉社
    1,650円(税込)
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 深く眠れず睡眠不足で10時に出社。早出するよりも遅い時間帯のほうが電車が空いており、出社時間を検討し直す。

 今月の新刊、坪内祐三著『文庫本千秋楽』搬入。

 神保町で坪内さんに背格好の似た人を見かけると思わず声をかけてしまいそうになり、そうしていやもう坪内さんはいないんだったと悲しい気持ちになる。それでも「本の雑誌」や単行本を作るとき、あるいはこの日記を書いたりするとき、いつも坪内さんが読んだらどう思うかと常にその眼差しを感じている。その眼差しは一生持ち続けるだろう。

 ブックファースト新宿店さんに直納。年末のブックファーストさんといえば「名著百選」と「各ジャンル担当者がおすすめする「今年を代表する1冊」」フェアが注目で、納品後、しばしフェアの棚を眺める。こうしてみると知らない本、出たことに気づいていない本、買うのを忘れていた本がたくさんあり、まさに「出会ったときが新刊」なのだった。

 新宿の人出もだいぶ戻ってきたように見える。しかし本日のコロナの感染数発表を受けて、また相当減っていくのだろうか。

 寺地はるな『どうしてわたしはあの子じゃないの』(双葉社)読了。この小説すごく好きだ。きっとこれから何度も読みかえすだろう。

 中学生くらいのときのあの子みたいだったらいいのにと羨んだり妬んだりする気持ちと、あるいはこの狭い世界から抜け出してもっと広い世界で生きたいという想いと、それが大人になって結局自分は自分でしかないのだと諦めたり、生きられるところで生きてしくないんだというという諦観が非常にうまく綴られている。

 主人公の天とミナと藤生のキャラクターがとてもいい。それと長谷川というふわふわした男もすごくいい。寺地はるなはこういう人を描くのがすごく上手い。また多視点で物語を進める構成も巧みだし、この閉塞感の描き方は素晴らしい。

 自分にとって2020年の読書は今更ながら寺地はるなを知った年かもしれない。今年出た新刊では『彼女は天使でなくなる日』(角川春樹事務所)が未読なので読まねば。

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