11月30日(月)
8時30分出社。コロナ感染者はどかどかと増えているものの、通勤電車はまったく空かず。自分もこうして出社しているわけだから当然か。
コロナの影響ではないと思うが、会社に着いてもイマイチ仕事をする気力が湧いてこず。こんなときはと一心不乱で掃除機をかける。きれいになるとなんとなくやる気がでてくる。
午前中、Zoomをつないで「北上ラジオ」の収録。目黒さん(北上次郎)と本の話をしているとむくむくと元気な気分になっていくのはなぜだろうか。耳を立てて収録を聴いていた事務の浜田も編集の高野も笑顔になっている。
午後、内澤旬子さんと電話で長話した後、一転して「おすすめ文庫王国2021」の初回注文〆作業に勤しむ。新型コロナが蔓延して以降、取次店さんへの見本は窓口持参でなくなり郵送となったわけだが、楽チンであるけれど、寂しい気持ちも無きにしもあらず。
3時過ぎにお腹が鳴って昼飯を食べていないことに気づくと、なんと事務の浜田も入稿間近で出社している編集の松村も昼飯を食べておらず、いやはや働き者の従業員に恵まれた会社だこと。もはや食事をする気力もわかず、ファミリーマートで肉まんと野菜ジュースを買って、お腹に流し込む。
定時で終業。秋葉原の無印良品に寄って、シャツとパンツを購入。
帰宅後、これを読んだらもう新刊はおしまいかもと読むのをためらっていた坪内祐三『玉電松原物語』(新潮社)読了。
坪内さんが少年時代から30年ほど暮らしたすごく小さな狭い範囲のことを書いているのに、それは実はとてつもなく大きく広いことなのだった。
ここに描かれているのは、ある時代の日本人の暮らしだ。
それぞれの土地の開発時期によって年代は少しずれるかもしれないけれど、かつて日本人は「小さな町であったのにたいていの店があった」商店街(商店街とは、本屋、おもちゃ屋、お菓子屋、文房具屋、電気屋などがある町をイメージする、と坪内さんは言う)で育ち、その町の人々と関わり、暮らしてきたのだ。
だからこの本は坪内祐三さんの思い出でありながら、私たちみんなの思い出なのだと思う。
それにしても生前坪内さんに「面白い本見つけました!」と『東京組合五十年史』(東京都書店商業組合)の話をし、「今度お持ちしますね」と言ったままになってしまったのはやはり痛恨事だった。『玉電松原物語』で描かれる松原書房がしっかり紹介されているではないか。