12月2日(水)
10時に出社すると、待ち構えていたかのように編集の高野から「おはようございます!すみません、カバーの色校出たので見てください!」と刷り上がったばかりのカバーを広げられる。
おれ、編集長かよ?と思いつつ、「うんうん、いいじゃん」とつぶやいていると、今度は事務の浜田がやってきて、「読者に送る手紙を書いたんで確認してもらえますか?」と差し出される。
おいおい、編集長だけでなく発行人かよ?と感じつつ、その手紙を添削し、そういえばこういうシーンはドラマや映画でよくあるよなと考える。できる刑事とかあるいは有能な建築事務所の所長とかが事務所に戻ってくると、職員や所員が待ち構えていて、順番に様々な案件を抱え、行列を作って報告してくるのだ。
まあ行列といっても本の雑誌社の場合多くて3人なのだが...と顔をあげると3人目の編集の松村が何やら昔なつかしフロッピードライブを手にして立っているではないか。
「杉江さん、すみません。フロッピーディスクが詰まっちゃって出てこないんですよ。......取り出してもらえませんかね」
どうやらおれは、カリスマ編集者でも敏腕発行人でもなく、単なるよろずやだったらしい。