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3月30日(火)

「ついに買っちゃったんです」

 朝、出社すると顔を赤らめた浜田が告白してくる。

 ずいぶん長い間乗り続けてきた自転車を買い替えたのか、それとも応援しているヤクルトスワローズの新ユニフォームだろうか。

「これなんです」

 とガラケーの小さな画面に映し出された不鮮明な写真の向こうには、ビンのようなペットボトルのようなそれにしては周りのものとは縮尺がおかしなものが映っていた。目を凝らしてよく見てみるとそこには青い文字で「好きやねん」と書かれており、どうやら焼酎のようであった。もしやこれはあの酒屋さんやスーパーやドラッグストアで誰がこんなに飲むんだよと思わず突っ込みを入れたくなるあの大五郎のようなどでかペットボトルの焼酎ではないか?

「これ一本で4リットルもあるんですよ。安心感が違います」

 もしや顔が赤いのは恥じらいではないのかもしれない。

「えっ、飲み過ぎたりしませんよ。飲み過ぎないためにこれもちゃんと買ってつけてるんです」

 そうして拡大して見せてくれたのは何やらノズルのようなものでワンプッシュ定量ディスペンサー「一押くん」というらしい。

 一押くん? いくら一押で酒が注がれる量が少なくても何度も押せば同じことではなかろうか。浜田はいったい一晩で何押するんだろうか。

 4リットルが何日で空っぽになるのかは決して口を割ることなく、事務仕事に向かうのであった。

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