千葉の書店員さんが集まり酒飲み話の延長で始まった「酒飲み書店員大賞」が、嘘か誠か第3回を迎えることになりました。そして今回からなんと京都の書店員さんたちが「うちらも参加させておくれやす」と酒飲み書店員京都支部を結成し、酒飲みの仲間に加わりました。
総勢13名14作のノミネート作品を2ブロックに分け、一次予選を行い、各ブロック上位2作計4作品で決戦投票を行います。第1回受賞作『ワセダ三畳青春記』高野秀行(集英社文庫)、第2回受賞作『笑う招き猫』山本幸久(集英社文庫)に続く、酒飲み書店員大賞はどの作品になるのか?! 一次予選の発表は8月初め、大賞作品の発表は秋を予定しております。
皆様も酒を飲みながらノミネート作品を読んでみてください!
※ 尚、人数合わせの為にときわ書房本店の宇田川さんに分裂してもらいました。ミステリ色の強い東京出身の宇田川拓也でBブロックに、青春小説やライトノベルなど幅広いジャンルの作品を読むティーヴァ王国出身(?)のTAKUYA
UDAGAWAというキャラでAブロックに参加することになりました。
■Aブロック■ ノミネート作品 【推薦者五十音順】
TAKUYA UDAGAWAさん<ときわ書房本店>推薦
『ハスラー』 ウォルター・テヴィス著(扶桑社ミステリー) 2007/02
ポール・ニューマン主演の、あの名画の原作がこれ。個人的には、今年読むべき翻訳小説の筆頭に挙げたいほどの絶品である。私はケータイ小説が嫌いだが、それはあの簡潔さが、研ぎ澄まされたものではなく、単なる形骸化でしかないからだ。では、真に密度あるものを研ぎ澄ませた物語とはいかなるものか? それを知るに最高のテクストが『ハスラー』といえる。ストーリーは、簡単だ。天才的ビリヤードの才能を持つ若者エディ・フェルソンが、アメリカ最強と謳われるハスラーのミネソタ・ファッツに勝負を挑むも敗れ、大きな挫折を経験したのち、どん底から這い上がって再び勝負をし、勝つまでの物語。まったくもって直球なお話だが、一読きっと驚くであろうほどの“冴え”が全編に満ち、普遍的テーマを内包した生涯の再読に耐えうる高級な小説であると断言できる。バーボンJ.T.S.BROWNを呑みながら、夜、ゆっくりと深く物語に浸っていただきたい。
大瀧さん<恵文社バンビオ店>推薦
『蘆屋家の崩壊』 津原泰水著(集英社文庫) 2002/03
豆腐好きコンビ・猿渡と伯爵が旅の先々で奇妙な事件に巻き込まれる、怪奇短編集。わりとするすると読めてしまうのですが、ふと我にかえるとぞっとする。ただ怖いだけじゃなくてキャラにもかなり魅力が。特に猿渡・・・不運ぶりに愛嬌がある。そして豆腐、葱、蟹(!)…出てくる食べ物がどれもおいしそう!もちろん酒も。怖面白い一冊です。
杉江<本の雑誌社>推薦
『東南アジア四次元日記』 宮田珠己著(文春文庫プラス) 2001/07
第一回酒飲み書店書店員大賞の高野秀行さんも大推薦!? 独特な文体で独特な世界を見つめる宮田珠己は天才です! 抱腹絶倒の旅話。ぜひ読んでみてください。
高坂さん<堀江良文堂書店松戸店>推薦
『とうとうロボが来た!』 QBB著(幻冬舎文庫) 2005/04
昭和の薫り漂う4コマ漫画。30代以上の男性なら、当時を思い出しニヤけてしまったり恥ずかしくなったりする作品です。
続編的作品でこちらも傑作の「中学生日記」は残念ながら新潮文庫版は絶版になっているので(青林工藝社版は生きています)、この作品も同じ道をたどるのは阻止せねば!と思い推薦しました。
仁礼さん<元・東西書房>推薦
『ツイラク』 姫野カオルコ著(角川文庫) 2007/02
地方出身の現在30代の方ならハマルこと請け合いの大大大傑作の恋愛小説! 地方のとある町の女生徒と男性教師の禁断の愛! 閉塞感あふれまくりの町の人間群像劇! リアルです。Hな場面なんてないのにとってもエロいです。あの時代、あの頃の気持ちを思い出して切なくなります。今、巷にあふれる恋バナ系小説をはるかに凌駕するホンモノです。読むべし~。
沼波さん<三省堂書店そごう千葉店>推薦
『楽園のつくりかた』 笹生陽子著(角川文庫) 2005/06
偏差値大好き少年が、ど田舎に引っ越してきた。
塾も模試もなくて、同級生は個性的野性的すぎて…
どんどん引き込まれるストーリーと真実に絶対に一気読みです!波瀾万丈な中学生活に青春と感動がつまってます!
ランクが高めでコンセプトとずれてしまい申し訳ないのですが、よろしくお願いします!
星野さん<旭屋書店船橋店>推薦
『後宮小説』 酒見賢一著(新潮文庫) 1993/04
読み出したら止まらない架空歴史小説。もう十分売れたでしょうが現在ランク外だからもう一花咲かせたいのです。中国ものは名前とか難しいからと敬遠ぎみな方でも絶対面白いから、既読の方も多いでしょうが、敢えて推しましょう!!
■Bブロック■ ノミネート作品 【推薦者五十音順】
和泉沢さん<旭屋書店水道橋店>推薦
『完璧な涙』 神林長平著(ハヤカワ文庫) 1990/05
この作品のせいで、私は神林作品にはまったのです。ハードコアSFといわれるガチガチのSFで、なれないと少し重いかもしれませんが、いやいやそんなコト言わずにぜひ読んでください。無駄の無い文章、深い感動! 主人公は全く感情を持たずに生まれ、家族から捨てられ、正体不明の『それ』に追われながら、時空を越え彷徨い、そして自分の正体が何かを知らされます。そしてラストに大きな感動が…。気が付くと知らぬ間に涙が…いやマジで。完璧な構成と完璧などんでん返しと完璧なSF。損はしないから手にとって!
岩立さん<スカイブラザ浅野書店>推薦
『明るい悩み相談室その1』 中島らも著(集英社文庫) 2002/08
あなたも、らもさんに相談してみよう!ってもう無理か…。
内田さん<三省堂書店そごう千葉店>推薦
『自転車少年記』 竹内真著(新潮文庫) 2006/11
憶えていますか?
はじめて自転車に乗れた時のドキドキ感を…
風を切って走る爽快感と、家族や仲間たちとの、かけがえのない絆を描いた秀作。心地よい懐かしさを味わえます。とりわけ南房総出身の若き主人公が、自転車で上京する「旅立ち」のシーンは、千葉を拠点とする我々にとってふさわしく思い、オススメします!
とにかく皆さん、陸上で「走る」の次は自転車を「漕ぐ」です! 読み終えればきっと成長した自分に、出会えるでしょう!
宇田川拓也さん<ときわ書房本店>推薦
『男は旗』 稲見一良著(光文社文庫) 2007/03
絵本や児童書が子どもの心に輝きを与えるように、大人の童心をくすぐる、心優しきアウトローたちの冒険譚がこれだ。かつて“七つの海の白い女王”と呼ばれた客船〈シリウス号〉も、いまは鎖に繋がれ、フローティング・ホテルとして第二の人生を送っていた。ところが経営難から、憎き悪徳企業に買収されることとなってしまう。悪辣な連中の手に渡ることをよしとしない心優しきアウトローたちは決意する。鎖を断ち、錨を上げ、ふたたび〈シリウス号〉とともに大海原を疾ることを!目指すは、〈シリウス号〉に隠されていた地図に記された、黄金の眠る宝島。こうして、寄る辺なき者たちの冒険の旅が、ついに始まる……。稲見一良本人といえる登場人物のひとり“ブックさん”が、作中でいう台詞に、「(略)わたしが書きたいと思うのは、ハルヲ・サトーのいう“根も葉もない嘘八百”だ。物語の中の男や女と一緒になって、ワクワクドキドキする小説だ」というのがある。稲見一良という書き手は、現実の厳しさを熟知したうえで、リアリズムの堅牢よりも、ダイナミズムや幻想性といった物語の豊かさを大切にし、目指した作家だった。熟成された酒のふくよかな香りを楽しむように、この物語の豊かさに痺れて欲しい。
小峰さん<ときわ書房船橋イトーヨーカドー店>推薦
『でりばりぃAge』 梨屋アリエ著(講談社文庫) 2006/04
もう子供じゃない。だけど大人にはなりきれない。大人になってしまえば「思春期」という言葉で表されてしまう感情が、ページからあふれてきます。まぶしいような、懐かしいような、ひと夏の物語。
中澤さん<三省堂書店京都店>推薦
『ハミザベス』 栗田有起著(集英社文庫) 2005/07
もっと売りたい、栗田有起! こんなに魅力的なのだから。どこが魅力的って、まず作品タイトルが目に付く独特センス。「ハミザベス」というタイトルから、一体誰が●●●●ーを思いつくだろう。同時収録の「豆姉妹」といい、秀逸じゃぁございませんか?読めばなるほどこのタイトルしかないわ!ってしっくりぴったりくるタイトルの数々。う~ん・・・すばらしい・・・っ!! もちろん小説の中身もおもしろい。特に『豆姉妹』はとにかく良いのよ!おもしろいのよ!としか言えません。タイトルといい、小説といい、栗田有起のこのセンス。ステキすぎ!
三輪さん<SHIBUYA TSUTAYA>推薦
『銭の王』 松田才蔵著(新風舎文庫) 2007/05
著者の実体験を元にしたという、恐るべきリフォーム詐欺の実態を描いた「ちょい社会派」小説。良心を痛めながらも強引な営業をやめることができない営業班長の沢村をはじめ、前のめりな部下のマサオ、”まんまるちゃん”こと顧客の島田などなど、それぞれのキャラがハッキリしていて面白い!あまり読んだことのないジャンルの本だったのですが、読み始めたらどんどん引き込まれてしまいました。お手ごろ価格で安心してお求めいただける一冊です。