宮澤ミシェルさん

自分を支えてくれる言葉を探し続けてきた

Jリーガー時代には、屈強かつ頭脳明晰なリベロとして活躍。ジェフユナイテッド市原のディフェンスの要として、Jリーグ人気をけん引した宮澤ミシェルさん。だが、そのサッカー人生は国籍との闘いの歴史でもあった。

「僕が惹かれるのは自叙伝や成功哲学といった、"生き方"について書かれている本です。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から国籍のことで悩んだり、挫折を経験してきた影響が大きいのかもしれません。日本人のようでいて、日本人ではないと悩みながら、自分を支えてくれる言葉を探し続けてきた。大学時代によく読んでいた、カーネギーとの出会いも、まさにそう。人付き合いで悩んでいた時期に、本屋で偶然見かけたのがきっかけでした」

高校時代には外国籍選手として初めて国体に出場。そして、30歳直前でようやく日本国籍を取得。94年は日本代表選手に選出された。

「仲間が選ばれていくのをただ眺めているしかなかった時期は辛くてたまらなかったけれど、じっと我慢していたら、ある日、状況が変わった。また、現役を引退した時も、当初は別のチームに移籍して続けるつもりだったから、解説者のオファーが来てもすべて断っていたんです。ところが、ケガのせいで引退せざるを得なくなった。その時点では次の仕事がまったくない状態だったんですが、たまたま日本代表に選ばれた時の記者会見に来てくれていたNHKの人から『解説をやりませんか？』と声をかけられた。これまでにそんな不思議な偶然を何度も経験しているからか、江原啓之や中村天風など、"スピリチュアル系"と言われるジャンルの本も読みますね」

いい言葉を見つけたら、すかさず印をつける

最近読んだ本の中で印象に残っているのは、脳科学者・茂木健一郎の『脳を活かす仕事術』だという。

「どんなに素晴らしいアイディアを考えていても、実際に行動に移さないと何も生み出せないという話なんですが、これはサッカー指導も同じ。感覚でわかっていることをそのまま伝えても、選手には伝わらない。何をどうすれば、動きが変わるのかを言語化しなくてはいけない。『仕事術』について書かれた本ですが、子供たちへの教え方をブラッシュアップする上で、すごく役に立つ本だなと思いました」

本を読んでいて、いい言葉を見つけると印をつけずにいられないという宮澤さん。「かなり折るので、すぐ折り目だらけになってしまう」と笑う。

「とくに自分にとってタイムリーな内容が書いてある箇所は、大胆に折ってありますね。その本に書かれているすべてを覚える! という勢いで繰り返し読み込むんです(笑)。実際には全部頭に残っているわけではありませんが、記憶のどこかに残っていて、自分に何らかのプラスをもたらしてくれているように思います」

人生の"壁"との向き合い方を教えてくれる、おすすめの一冊

余命3ヶ月というガン宣告を受けた大学教授ランディ・パウシュの最後の講義、そして家族への想いがつづられた『最後の授業』も、おすすめの一冊だという。

「彼は授業の中で『壁は、僕の行く手を阻むためにあるんじゃない。その壁の向こうにある何かを自分がどれほど真剣に望んでいるか、証明するチャンスを与えているんだ』というメッセージを送ります。僕も子供たちによく言うんです。『どんどん、ガクンと落ち込んでもいい。でも、次は2倍の高さにジャンプするんだぞ』って。夢を叶えようと思ったら、必ずどこかで壁に当たる。その壁を乗り越えるエネルギーを与えてくれる本です」

迷いや悩みを感じたら、本屋をブラブラしてみるといい

人生に悩みや迷いはつきもの。宮澤さん自身、自分が何に最も力を入れていくべきかという"軸"を探している最中だという。

「サッカー指導にしても、本格的なサッカースクールに絞るのか、それとも遊びの要素を加えたものまで視野に入れるのかで方向性は変わってきますよね。そのあたりが、まだ自分の中で悩まされる部分、というのが正直なところ。ただ、面白いもので、そういう時に本屋をブラブラしていると、必ずといって良いほど、自分の迷いを晴らしてくれるような本に出会えるんです。何気なく入った書店で、タイトルが目に飛び込んでくる。そんな偶然の出会いを大切にしていると、必要な本が必要なタイミングで現れるようになります」