第136回:真保裕一さん

作家の読書道 第136回:真保裕一さん

特殊な専門分野を持つ公務員が活躍する小役人シリーズから壮大な冒険小説、時代小説まで、さまざまなエンターテインメント作品を発表している小説家、真保裕一さん。かつてはアニメーションの世界に身を置いて有名作品を手掛けていたことでも有名。ということは、読書歴にもその個性があらわれているのでは? 小説家に転身したきっかけとは?エンターテインナーが生まれる道筋も見えてくる読書歴です。

その3「アニメーションの制作に携わる」 (3/5)

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――専門学校を卒業後は制作会社で働き始めたわけですよね。アニメ業界は相当なハードワークという勝手なイメージがありますが、本を読む時間はありましたか。

真保:ハードワークではありましたね。仕事が忙しくなってスタジオの近所に引っ越しましたが、それまでは家から1時間くらいかけて通っていたんです。行きと帰りで2時間本が読めるということで、なぜかドストエフスキーをはじから読んでいきました。作家になってからある評論家に「あなたはドストエフスキーが好きだったんですか」と訊かれて驚いたことがありました。自分ではそこまで好きという印象を持っていなかったんです。でも『奇跡の人』は『白痴』と近いアプローチになっているし、『繋がれた明日』は『罪と罰』と同じ組み立てになっているし、兄弟ではないけれど3人の仲間が出てくる『栄光なき凱旋』は『カラマーゾフの兄弟』のアプローチに似ていると言われました。その人にしか指摘されていないことなんですが、でもどこかで影響されていたのかもしれませんね。

――引越しをしてからは読書時間はどうなりましたか。

真保:今度は家で細々とミステリを読むようになりました。そこでディック・フランシスの『利腕』を手にしたんですよね。「CWA賞(英国推理作家協会賞)ゴールド・ダガー賞」と「MWA賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)エドガー賞」の両方を受賞したとかで、そんなに面白いの? 競馬でしょ? という気持ちで読んでみたら、もう、申し訳ございませんっていうくらい面白かった。そこから古本屋でフランシスの本を探しだしては読んでいきました。

――もしかして真保さんの初期作品が『連鎖』『取引』『震源』...などといった二字熟語なのは、邦訳のタイトルがすべて漢字二文字のディック・フランシスの影響ですか。

真保:そうですよ。決してアニメの『装甲騎兵ボトムズ』のサブタイトルに漢字二文字が多かったからというわけではありません(笑)。フランシスにハマってから突然冒険小説やハードボイルドばかり読むようになったんです。漫画ももちろん読んでいました。会社に行けば漫画だらけですし、誰かが面白いものを見つけたら持ってきてみんなで回し読みしていましたし。

――お仕事の内容はどういうものだったんですか。あと、スタジオはいくつか移ったとか。

真保:最初はアニメーターです。絵がうまくならないと演出家になれないと思ったんですね。いくつかのスタジオに行ったんですが、絵が下手なものですから描きすぎて腱鞘炎になってしまって。それでシンエイ動画の文芸という、シナリオを集めてくる部署に潜り込むことができました。実は専門学校を卒業する時に採用試験で落とされた会社だったんですが、そのシンエイ動画でシナリオやコンテを書かせてもらえるようになったんです。最初に描いた動画が『忍者ハットリくん』、最初の原画が『パーマン』、最初のコンテは『笑ゥせえるすまん』、最初の映画のシナリオが『ドラえもん』です。もう藤子先生様々ですね。

――それはすごいです。でもそんな人気作品を手掛けながら、しかも忙しいなかで、小説を書こうと思ったのはどうしてだったのでしょうか。

真保:小説を書き始めるより前に、漫画の原作を書くようになったんです。自分でアニメ映画を作りたかったんですが、それなら原作を書いて漫画をヒットさせて映画化させればいいじゃないかという、遠大な計画がありまして。少年漫画の原作を1本書かせてもらったんですがあまり成功しなかった。そうしたら「少女漫画ならドラマにできるよ」と人に言われて、少女漫画の原作の賞に応募してみたんです。講談社の『mimi』という今はもうない雑誌の賞で、内館牧子さんが選考委員にいました。それで賞を獲ったことをきかっけにして、少女漫画の原作はずいぶん書かせてもらいました。

――その作品名は...。

真保:単行本になったのは最初の1本だけで、今はもう手に入らないと思いますが、『あなたの歌を歌わせて』というものです。堂々たるラブロマンスですね。これがまたいい話なんだなあ...(笑)。それから短編メインで6~7本書かせてもらって、なかにはミステリタッチのものもありました。

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