第214回:凪良ゆうさん

作家の読書道 第214回:凪良ゆうさん

引き離された男女のその後の時間を丁寧に描く『流浪の月』が大評判の凪良ゆうさん。もともとボーイズラブ小説で人気を博し、『神さまのビオトープ』で広い読者を獲得、新作『わたしの美しい庭』も好評と、いま一番勢いのある彼女ですが、幼い頃は漫画家志望だったのだとか。好きだった作品は、そして小説を書くようになった経緯とは。率直に語ってくださっています。

その5「好きな女性作家たち」 (5/7)

――そしてどんどん作品を発表するなかで、読書生活はいかがだったのでしょうか。

凪良:やっぱり女性の作家さんを読むことが多かったですね。今でも江國香織さんはむちゃくちゃ好きで。島本理生さんも好きです。最近だと千早茜さんの文章がとてもきれいで好きでした。

――それぞれ好きな作品はありますか。

凪良:江國香織さんだと『ぬるい眠り』と『落下する夕方』。島本さんだと『波打ち際の蛍』。千早さんだとやっぱり『男ともだち』かな。
 『落下する夕方』は、彼氏が他の女の人のことを好きになったと言いだすんですが、その女性が自分のマンションに居候するという。とんでもない話だと思いましたが、でも、読んでいて全然嫌な感じじゃなくて、逆にすごく魅力的で。『波打ち際の蛍』は心療内科に通っていて出会った男女の話ですよね。島本さんはなんというか、すごく微妙なところをいつも突いてきますよね。女性の微妙な輪郭を描かれるところが好きです。
 山本文緒さんと豊島ミホさんも大好きです。山本さんは最近新作をあまり出されていないので本当に寂しいです。豊島さんももう小説は全然書かれていなくて、こちらも本当に寂しいです。

――そうなんですよねえ...。山本さんと豊島さんでそれぞれ好きな作品は。

凪良:山本さんはすべて好き。でも一番というなら『恋愛中毒』と「ネロリ」(『アカペラ』収録)です。豊島ミホさんは『日傘のお兄さん』。あれ、最後、号泣したんですよね、私。ソファに寝転がって読んでいたんですけれど、最後の最後でとんでもないほどの量の涙が出てきて、耳の中に入ってゴボゴボッっていうくらい泣いちゃって。最後、そんな悲しい終わり方じゃないのに、なんであんなに泣いたのかなっていう。豊島さん、今もずっと待っているんですけれど、復活されないんでしょうか。だいたい、私がずっと好きでいると、寡作になっていかれるか、書くのを止めてしまわれるかどっちかになっちゃって。
 大島弓子さんも今はほとんど描いていらっしゃらないですし。大島さんは1000年くらい生きて、ずっと漫画を描いてほしい方です。山岸凉子さんもそう思います。このおふたりは漫画という媒体の限界を突破していると思います。

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