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勝手に目利き
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高橋 美里の<<書評>>

カフェー小品集
カフェー小品集
【小学館文庫】
嶽本野ばら
定価 500円(税込)
2003/4
ISBN-4094080147
評価:A
 野ばら作品というのはとても不思議で読んでいると「いけないこと」をしている気分になってしまうのです。この「カフェー小品集」は野ばらちゃんの愛してやまない「一つの」カフェとの出会いをつづった物語。中には皆さんご存知のカフェもあるかも。上品な匂いを醸し出している野ばらの世界へどうぞ。オススメです。

IX(ノウェム)
IX(ノウェム)
【電撃文庫】
古橋秀之
定価 557円(税込)
2003/2
ISBN-4840222762
評価:A
 その小説の世界に引きずり込まれて読むというのはとても幸せな読書なのだと私は思うのですが、この作品は、オモイッキリ世界に浸れた小説でした。あるところに、五行の力を使うという趙五行率いる村があった。そこで力に秀でた達人達に囲まれて育った燕児。ある日、修行の帰り道に猿と一緒に山で暮らす一人の少年と出会う。この出会いから全てが始まっていきます。この続きは果たしてどうなるのでしょうか?とても楽しみな作品。

宮殿泥棒
宮殿泥棒
【文春文庫】
イーサン・ケイニン
定価 720円(税込)
2003/3
ISBN-4167661306
評価:B-
 「男」の匂いのする作品というのは良くあるのかもしれませんが「少年」の匂いのする作品というのはナカナカどうして胸を打つものに出会えなかったのですが、この作品には「大人の顔をした少年」がたくさん出てきています。オススメは「傷心の街」。離れていく息子と父親の物語。
読み終えた後のせつなさは一級品。親と子というのは遠くて近い。難しい関係なのだなぁ・・・。

私の嫌いな10の言葉
私の嫌いな10の言葉
【新潮文庫】
中島義道
定価 420円(税込)
2003/3
ISBN-4101467226
評価:B
 哲学者という方はとても文章が上手い。土屋賢二さんもそうだとおもうのですけど。
今回のこの作品はタイトルとおり、中島義道の嫌いな言葉に関するアレコレ。
たしかに、自分の生活やその周りを思い返すと「ああ!これは」とうならせられる言葉が多い。言葉っていうのは、とても「カンタン」でとても「タイヘン」なことなんだなぁ。と実感。(日本語が難しいだけなのかしら・・・。??)

停電の夜に
停電の夜に
【新潮文庫】
ジュンパ・ラヒリ
定価 620円(税込)
2003/3
ISBN-4102142118
評価:AA
 今月イチオシ!の一冊。
恋愛や結婚を題材にした作品の多い中で私のオススメは「神の恵みの家」。
新居に引っ越したばかりで掃除や洗濯に明け暮れていたある日、彼らはレンジの上の棚からキリストの置物が出てきた。それをきっかけに、家のあちこちからキリスト教に纏わる置物やらポスターばかり出てくる。自分の持つ宗教とは違うのに彼の妻はそれらを眺めては楽しんでいる。そんな彼女を見ながら、夫である彼は自分に問い掛ける。「果たして本当に愛して結婚したのだろうか?」
・・・・どの作品も「はっ」とさせられるくらい、みずみずしい文章と言葉ばかり。是非是非読んでみてください。