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藤井 貴志の<<書評>>
空中ブランコ
【文藝春秋】
奥田英朗
定価 1,300円(税込)
2004/4
ISBN-4163228705
評価:A
「トンデモ精神科医」伊良部は健在だ! エンターテインメント性が高く、一気に読まされてスカっと笑える。印象としては、前著『イン・ザ・プール』よりも「ぶっ飛び度」がやや下がり、「いい話度」がちょっと上がった感じだ。真剣に悩んでいる患者を前に(その悩み方がまた笑えるのだが……)、ビタミン注射大好きな伊良部と、巨乳ロック娘の看護婦が暴れに暴れる。患者たちは、そんな伊良部に最初は戸惑い混乱するが、やがては無意識に伊良部に惹かれていく。一見、奇想天外な治療(?)だが、こうしたコミュニケーションで色んな角度から患者を揺さぶることで、最後は患者が背負っていた「凝り」のようなものがほぐされていくのだろう。軽く読めてしまう作品だが、構成はしっかり練られており、雑な印象はまったくない。言葉選びも丁寧になされている。前作同様に装丁も抜群に素敵だ。
村田エフェンディ滞土録
【角川書店】
梨木香歩
定価 1,470円(税込)
2004/4
ISBN-4048735136
評価:
A
本書は、およそ100年前に留学した主人公、村田のイスタンブール滞在記。前著『家守綺譚』同様に梨木氏の文章は淡々としているが、それが積み重なることで不思議な味わいが出て病み付きになる。
アジアとヨーロッパの接点、イスタンブールは昔も今も人種の坩堝である。日本人である村田も、下宿の主人のディクソン婦人(英国人)や下働きのムハンマド(トルコ人)、下宿仲間オットー(ドイツ人)やディミトリス(ギリシャ人)といった人種・宗教を異にする人々に囲まれながら過ごしている。習慣や価値観の違いに戸惑いながらも彼らと友情を育んでいく様が、時に爽やかに、時に感動的に描かれている。なかでも、村田が帰国した後に訪れるラストシーンには泣けた。
物語の設定は『家守綺譚』ともリンクしている。村田は『家守綺譚』の主人公である綿貫と同窓で、綿貫や高堂といった前著の登場人物もさりげなく登場する。ファンにとっては嬉しい配慮だ。中村智氏の挿画も内容にマッチしている。1世紀前のイスタンブールの様子を読みながら、1年前に訪れたかの地の風景がよみがえった。
硝子のハンマー
【角川書店】
貴志祐介
定価 1,680円(税込)
2004/4
ISBN-4048735292
評価:
B
完璧なまでにセキュリティ対策が施された社長室で起こった密室殺人。逮捕された専務の無実を証明しようとする女性弁護士と、彼女に雇われた防犯コンサルタント(本業は泥棒)が完全犯罪に挑む。こうしたミステリーでは、読み手は作者に負けじと「きっとこうに違いない!」とトリックを暴こうとするものだが、本書ではこうした読み手の「もしかして……」が次々と潰されていく。それがまた気持ちいい。各種防犯対策への作者の調査は綿密で、細部まで徹底的にこだわっている。
本書は2章構成で、1章で主人公たちは密室殺人の謎を解くためにあらゆる可能性を試すが、いずれもことごとく失敗する。そして第2章で舞台ががらりと変わり、物語は意外な展開を見せていく。
第1章でこてんぱんにやられた読み手としては予想を超える真実を期待したのだが、終盤で明らかになる事実は予想よりスケールが小さい。たしかに現実はそういうものかもしれないが(殺人の動機は今でも腑に落ちないが……)、「やられた!」という読後感を得ることはできなかった。
アッシュベイビー
【集英社】
金原ひとみ
定価 1,020円(税込)
2004/4
ISBN-4087747018
評価:
D
これは賛否両論だろうなあと思った。現代社会に潜む歪んだ性や風俗を描いているのだろうが、読み手としては「それ以上の何か」と求めてしまう。書き手が芥川賞作家で「時の人」であればなおさらである。その点では、僕は「う〜ん……」と感じたクチだ。
主人公のルームメイトが異常性愛者であることが露呈する場面も、効果的な伏線が張りきれていないため、どうしても唐突な印象をぬぐえない。なぜ、彼のそうした異常性が描かれているのか、作者は何を伝えたいのか、まったくわからなかった。また、主人公が村野という男性との出会いをきっかけに、自分をどんどん壊していく過程はこの物語のクライマックスだが、この村野という男の存在意義と役割が最後まで見えてこない。
物語の中心にあるのが「心の闇」といえばそれまでだが、非日常的な衝動によって登場人物を操っていくことが行き当たりばったりに感じられ、ストーリーには何の必然性もメッセージも感じられない。これが日記の類ならそれもありかもしれないが、物語としては味わえない。とはいえ結果的に最後まで一気に読まされたのは作者の筆力なのか……。
禁じられた楽園
【徳間書店】
恩田陸
定価 1,890円(税込)
2004/4
ISBN-4198618461
評価:
B
自分の才能を信じていない「普通の」建築科学生・平口は、同居する姉とともに平凡な毎日を送っていた。そんな彼の前に、世界的なアーティスト・烏山響一が同級生として登場する。近寄りがたい雰囲気の漂う響一だが、平口に対してはなぜか親しみをもって近づいてくる。当の平口は、どうして響一が自分に親しげなのか理解できないが、並み居る取り巻きの中から自分が選ばれたことに密かな優越感を感じる。やがて平口は、同じように響一に見初められた1人の女性とともに、響一が熊野に築いた巨大な作品群を訪れる。そこに待っていたインスタレーションは、見る者の心の奥底にある悲劇を呼び起こす想像を絶する世界だった……。
気になっていた謎がどんどん解けていくのは快感だが、その多くの謎が(ロジカルな事実ではなく)精神世界的な根拠によって解かれていき、少し納得できない面もある。でも、そもそもこの物語全体が非常に禍々しい「精神性」に拠っており、それが本作の魅力であるのだから仕方ないか……。