年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年2月の課題図書 文庫本班

死の開幕
死の開幕
J・ディーヴァー (著)
【講談社文庫】
税込880円
2006年12月
ISBN-9784062755948
商品を購入する
 >> Amazon.co.jp
 >> 本やタウン

  荒又 望
 
評価:★★★★☆
ポルノ映画界を標的とする連続爆破事件が発生した。主人公のルーンは、関係者の1人である女優のドキュメンタリーを制作するうちに、自らも事件に巻き込まれていく。
なんといってもルーンが魅力的。好奇心で目を輝かせながら大都会をいきいきと闊歩する、はつらつとした姿が目に浮かぶ。軽はずみで向こう見ずなところも多々あるけれど、まあこれくらいイキが良くないと、物語は始まらない。
素人が事件に首を突っ込んで、ほーら言わんこっちゃない、という感じで危険な目に遭って、きっとこの人と恋仲になるのだろうと予想した相手とやっぱり恋に落ちて……と、お決まりのパターンではあるけれど、テンポの良い展開がぐいぐい読ませる。
二転三転どころか、四転も五転もするストーリー。ようやく犯人が見つかったかと思いきや、これでもかこれでもかと次々に転がっていく。最後の最後で度肝を抜かれ、すこしだけほろ苦い味が残る。
川面に浮かんだボートに住み、恐竜柄のミニスカートを着こなすチャーミングなこのヒロイン、映像化しても楽しそう。

▲TOPへ戻る


  鈴木 直枝
 
評価:★★☆☆☆
 サスペンス・ミステリーなのだが、ルーンという快活な少女のお陰で、POPな感じで読んでしまった。
 マンハッタンで発生した連続爆発事件を題材に、「自分は映画を作るために生まれてきた」というルーンがドキュメンタリー制作に着手することになった。自身の身の危険を冒してでも撮影を強行する中で見えてくる死者たちの「本当はこう生きたかった」という切なる願いと野望。「あたしたちはみんな本物の女優よ」私には、犯人探しより彼女らのメッセージに心を動かされた。
 ニューヨーク市警の捜査担当者が、事故後間もない爆発現場に市民を入れてしまっていい訳?若干の疑問を持ちつつも、楽しめました。解説で「ボーン・コレクター」についてこれだけ触れられていると読まずにはいられないだろう。本は感染力が強いです。

▲TOPへ戻る


  藤田 万弓
 
評価:★★☆☆☆
 本書はジェフリー・ディーヴァーのデビュー作「汚れた街のシンデレラ」の第二弾である。主人公ルーンのその後、とでも言えばよいのか。
世界的ベストセラー作家として名を馳せ、日本でも人気が高い。『ボーン・コレクター』は映画化もされ、親しみのある人も多いだろう。
著者の特徴として、‘逆転つまりどんでん返し’が挙げられるが、本作においてはその手法が仇となった、と言っても過言ではない。
処女作に近いので未熟さは否めない。ドキュメンタリー作家を夢見る主人公ルーンがタイムズスクエアで起きたポルノ映画館での爆破事件をテーマにデビュー作を撮ろうとしながら事件を追う、という設定自体は魅力的であり翻訳の上手さもあってすいすい読み進められる。
その上、9.11を連想させる作りで興味深いがミステリーとして読者を裏切る、という点ではあまり期待せずに読む方が本書を楽しんで読めると感じた。

▲TOPへ戻る


  松岡 恒太郎
 
評価:★★★☆☆
 読書は雑食です!などと、大きな口を叩いておきながら、実は海外の作品は苦手だった。理由は簡単、横文字の登場人物にめっぽう弱いから。だって横文字の名前って分かりにくいわ、覚えにくいわ、途中からもう誰が誰だか分らなくなって、しまいにはどうでもいっか!と開き直ってしまうから。
だから今までは必要最小限に留めてきた。しかしそんなわけにもいかない、課題図書である以上は読まねばならぬ。あり難いことに主要な登場人物の説明が書かれた栞を発見。コイツに助けられながらズンズン読み進める。
すると、なかなかどうして、はまるもんです海外ミステリー。とにかくテンポがいい。
 二つ目の爆発が起こった頃には、僕の頭に映像が流れ始めた。もちろん火曜サスペンスじゃなくってハリウッド映画ばりの豪華なのが。
いつしか勝気なルーンと僕は、一緒にタイムズ・スクエアーを駆け、また一つ事件の真相に近づいていくのだった。

▲TOPへ戻る


  三浦 英崇
 
評価:★★☆☆☆
 俺は、できる限り人の好悪は言うまい、と心に決めています。とは言え、やはりどうしても好きになれそうもないタイプの人間はいまして。例えば、不要な好奇心のせいで人に大迷惑をかけたり、夢を語る前に、果たすべき数々の義務を怠ったりするような奴は、虫酸が走るくらい嫌いです。……この作品の主人公・ルーンがまさにソレ。おかげさまで、読んでいてストレスの溜まること溜まること。

 ポルノ映画館爆破に端を発し、カルト集団が見え隠れする、錯綜した事件の展開は、緊迫した爆弾処理シーンをはじめ、読みごたえ抜群だったのですが……

 ルーンが、爆破事件とポルノ女優を絡めたドキュメンタリー映画を撮りつつ、事件の「調査」を行う際の、あまりにも無謀で思い込みの激しい振る舞いには「ああもう。素人が余計なことを!」という怒りがふつふつと湧き上がりました。

 目の前にいたら説教してやりたいです、こいつばかりは……明らかに、作者の手に乗せられているんだろうなあ、とは思いつつも。

▲TOPへ戻る


WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年2月の課題図書 文庫本班

| 当サイトについて | プライバシーポリシー | 著作権 | お問い合せ |

Copyright(C) 本の雑誌/博報堂 All Rights Reserved