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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年4月の課題図書 文庫本班

チェイシング・リリー
チェイシング・リリー
マイクル・コナリー (著)
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
税込945円
2007年1月
ISBN-9784151752025

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  荒又 望
 
評価:★★★★☆
  ベンチャー企業の代表を務めるピアスの自宅に、「リリーはいるか?」と何度も間違い電話がかかってくる。はじめのうちはただ迷惑だったピアスだが、なぜかリリーの行方を捜し始める。
 ほんの一瞬の判断や選択が、その後を大きく左右する。「あの時ああしなければ、こんな目には遭わなかったのに」と後悔しても、時すでに遅し。事態は急展開していく。それも悪いほうへ悪いほうへ。どんどんどんどん深みにはまっていくピアスの運命やいかに? と、ぐいぐい読ませる。
 新技術の開発に情熱を燃やすピアスは素敵なのに、リリーに並々ならぬ興味を抱いて軽率としか思えない行動をとる姿はまるで別人のように愚か。元恋人に未練たらたらな様子は、情けなくて泣けてくる。スタンフォード出の若き経営者、と絵に描いたようなエリートではあるけれど、鼻持ちならない男ではなく、かといって単なるダメ男でもなく、適度に普通っぽくて親しみが湧く。
 読み終えて頭に浮かんだのは、「後悔先に立たず」、「出る杭は打たれる」などの教訓。これらの古めかしさと、主人公が身を置く世界とのギャップも面白い。

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  松岡 恒太郎
 
評価:★★★★☆
 ミステリー作品の感想をまとめるのって結構難しい。ネタバレだけは避けねばならぬと、言葉を選んで書いていると何だか一向にまとまる気配がない。
 まとまらないけれど、とにかくこの作品は買いです。間違いないです。保証します。しかしこれじゃ伝わらないな。
 引越しして番号を変えた電話にかかってくるようになったのは、同じ内容の間違い電話ばかり。
「リリーはいるかい?」
 不思議に思って探偵まがいのことに首を突っ込んでしまった世間知らずな主人公を待ち受けていたのは?
 うまい展開です、つくりもとても丁寧です。でもココから先は作品を読み進めつつ解き明かしていただきたいと思います。
 しかし、あえてあとチョットだけことわざに例えて内容の説明を続けるとすれば、薮蛇、骨折り損のくたびれ儲け、壁に耳あり障子にチェイシング・リリーって感じです。

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  三浦 英崇
 
評価:★★★★☆
 先月の『アクセス』の書評でも記したように、俺は電話という奴がことのほか苦手でして。受ける相手の状況を一切考えずに割り込んでくる傍若無人さも嫌ですが、ことに腹立たしいのは、そう、間違い電話。
 しかもかかってくるのが、下心丸出しなエロ電話と来た日にゃもう。原因を突き止めたくなるのも、分からなくはない。分からなくはないですが……でも、この作品みたいなヤバい事態に巻き込まれる前に、たいがい降りますよ。だって、番号変えればこんな鬱陶しい事態からはオサラバできる訳ですしね。
 それでもわざわざ首を突っ込んじゃうから、500ページもかかってえらい目に遭わされる主人公・ピアス。ま、そういう性格でなければ、この手の小説の主人公にはなれないでしょうけどね。
 雑草だと思って抜いてみようとしたら、意外に根が長くしっかりしていて、気が付くと根が自分に絡まって身動きとれずにさあ大変、といった風情のサスペンスであります。

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  横山 直子
 
評価:★★★★☆
  一度も会ったことのない女性なのに、なぜか気にかかる。
 引越し早々にかかってきた間違い電話をきっかけにヘンリー・ピアスの日常が徐々に変化し始める。
 彼は名門大卒のエリート、自分で立ち上げたベンチャー企業も大成功して、順風満帆に見える生活ではあったが、そもそも今回の転居は彼の一つの転機だった。
 正体不明の女性が気にかかる大きな原因は少年時代のある辛い出来事。彼はその埋め合わせをしたいと、危険と思われる橋を渡り始めた…。

 彼が絶対絶命と思われる事態になったとき、実に冷静に自分に強みがあると結論づけて仕掛けられた罠を見破ろうとする様子を見て、舌をまいた。
 あまりにも彼が仕事に熱中しすぎたために、心が離れていった恋人との関係修復の過程も見逃せない。
「粗末な飯を食べ、ただの水を飲み、曲げた腕を枕にする。それで充分しあわせだ。」
彼女の愛読書の一節がなんとも印象深い。

 そしてなにより気になったのが、読書好きな彼女がカウチで読書をしながら食べるピーナッツ・バターとゼリーのサンドイッチ。
 ゼリーは何味?そしてゼリーをパンにはさむなんてどんな食感なのだろう?
 気になってしかたがないのだが、やはりヘンリーの彼女に直接聞くのが一番かしらん?

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