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WEB本の雑誌今月の新刊採点【単行本班】2007年4月の課題図書ランキング

片眼の猿
片眼の猿
道尾 秀介(著)
【新潮社】
定価1680円(税込)
2007年2月
ISBN-9784103003328
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  小松 むつみ
 
評価:★★★★
  心地よい「してやられた感」を味わいたい方に、超おすすめの一冊。
 読みすすめていくうちに、何かあること(ここでそれが言えないのがじれったいが)には、うすうす感づくのだが、果たしてすべてが明らかになるとき、おおかたの予想を大きく裏切ってくれる展開は天晴れである。そして「片目の猿」は単なるエンターテイメントのミステリーに終わらない。
 なんだか、何を言ってもネタばれになりそうで、書けません。ぜび、何の予備知識もなく、まっさらな状態で手にとってほしい。
 最後にひとこと。応援団ができるのも肯けます。ご一読あれ。

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  川畑 詩子
 
評価:★★★
  最後に明かされる事実に、それまでの思いこみは気持ちよく裏切られる。そして、それがテーマと深くつながるものなので、ただの驚かしに終わっていない。他人と違うことで特別視され孤独感を深める人の姿をずっと追いながらも、十分に楽しめる作品だった。  
 映像化は難しそうだが、それぞれに特技をもったアウトロー達のお話はいかにも画面に映えそうで、見てみたい。

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  神田 宏
 
評価:★★★
  ページ毎にめぐらされる奸計。おやっ?と引っかかるところだけでなくあえて触れられなかったところにも秘められた謎解きが隠されていて、ネタバレさせずに紹介するにはほとほと難儀な本である。特異な聴力を持つ私立探偵「三梨」は競合相手の楽器メーカーの盗聴を依頼される。デザインの盗用の証拠をつかんで欲しいとの依頼だ。そこで知り合った優れた眼力の持ち主である女性をリクルートして、耳と眼でその依頼を乗り切ろうとするが、偶然、殺人事件を聞いて(見てじゃないよ)しまったことから、謎が謎を呼ぶ事件に巻き込まれていってしまい・・・・・・とあらすじを書いてみたものの、ここまでにも複数の謎が含まれていて、すべてがエンディングへと繋がっている。行間これすべて仕込まれた謎だらけなので、これはホント読んでみて下さいとしか言いようが、ないですね。読後に、やっぱりと思う貴方は天才です。裏切られたーと思う貴方。そうだったのかと疑心暗鬼に頷く貴方。とにかくチャレンジしてみて。読んだ人としか話せない(読む前に紹介するのは困難な)異色の本である。

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  福井 雅子
 
評価:★★★
  探偵事務所を営む三梨は産業スパイ絡みの大口案件の捜査中に殺人現場を目撃(?)してしまう。謎が謎を呼び、誰が味方で誰が敵なのかすらわからなくなっていく中、今は亡き大切な人の失踪の謎とも絡んで事態は思わぬ方向へ。最後に明かされる驚きの結末とは──。
 堂々の謎解きトリック・ミステリー。謎解きはもちろんのこと、宝探しや間違い探しが好きな人にもたまらない作品だろう。随所にいろいろな仕掛けが施され、伏線がはられているため、1度読んだ後でも再読してその技をもう一度噛みしめたくなる。細かいことはこの際気にせず、とにかく楽しく読みたい作品。登場人物のキャラクター設定も、やや劇画的ではあるがとても楽しい。著者の創造力と構成力に拍手を送りたい。

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  小室 まどか
 
評価:★★★
  特殊な耳を持つ探偵・三梨は、依頼されて盗聴していたビルで起こった事件の「見えない目撃者」になってしまう。事件は、三梨がスカウトした冬絵、事務所兼自宅のあるアパートのおかしな仲間たちも巻き込んで、意外な方向へ展開する――。
 事件自体の謎解きは、出色の出来栄えとは言えない、というか、それ以外の地のストーリーにいくつも仕組まれていた伏線が、終盤に一気に発動する見事さにかすんでしまう。読者を無意識にミスリーディングする巧妙な仕掛けは、あくまでさりげなく登場し、あるいは目を引く出来事の裏側に隠されており、したり顔の予想を小気味よく裏切ってくれる。
 本のテーマはタイトルがすべてを語っているが、コンプレックスと自尊心の問題については、若干雄弁すぎた感もあった。誰もが心に抱える問題なのだから、これほど多くの例を引くと却って現実味が薄れてしまう。そのあたりはむしろ淡々と描いたほうが訴えるものがあったのではないだろうか。

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  磯部 智子
 
評価:★★★
  私にとっては、デビュー作『背の眼』以来の道尾作品。饒舌ぶりは相変わらずで、荒唐無稽な展開が笑いを含んだ言葉で綴られる。ミステリとしてはかなりよめる部分もあるのだが許せてしまう愉快な作風を持つ。主人公の俺(三梨)は探偵、一人称で書かれたミステリは、読み手にとってフェアなのかどうか疑問もあるが、それも織り込みながら読み進める。産業スパイ、謎めいた新入り女性探偵、主人公自身の秘密と「俺」の心に根深く残るある人物の自殺の謎など、とにかく盛り沢山だが、うまくプロットに収拾されているなあと感心する。そして無数に張り巡らされた伏線が解き明かされる度、やられたでもなくガッカリでもなくナルホドそれもアリかと納得し、くすくす笑ってしまう。タイトルの意味にも作家の皮肉な視点より温かみを感じる楽しいミステリ作品だった。

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  林 あゆ美
 
評価:★★★
  私立探偵の三梨は特別な耳をもっている。この特技のおかげで、探偵業界中でも名前が知られているほどの人物。確かに、耳をすませれば、建物の中にいる人の声が聞けるのだ。それと、片眼の猿というタイトルがどうつながってくるのだろうと思いながら、読みすすめていく。話の筋は複雑ではなく追いやすい。少しずつ作者の伝えようとしているメッセージが聞こえてもくる。
 なぜ片眼なのかがわかってからは、ぐーんと話は絞り込まれ、最後にきれいにまとまる。見事な着地。ただ、途中からだんだんと謎の元も見えてきてさみしくなった。

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