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WEB本の雑誌今月の新刊採点【単行本班】2007年5月の課題図書図書ランキング

酸素は鏡に映らない
酸素は鏡に映らない
上遠野浩平(著)
【講談社】 
定価2100円(税込)
2007年3月
ISBN-9784062705820

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  小松 むつみ
 
評価:★★★
 昔、子どものころにたくさん読んだ『少年少女名作集』のような装丁。生成り色の外箱に、表紙の背はクロスで箔押し! 本文も角を落とした仕様で、扉はトレペのような薄紙、という凝りよう。
 ある日、クワガタを追いかけていた健輔は、人気のない公園で、影の薄い奇妙な人物と出会う。不思議な力を持っているらしいこの人物の、不可解ながらも深遠な言葉。猫が落としていった、なにやら価値のありそうな金貨。そして、健輔の不思議な冒険が始まる。
 とは言ってみたものの、どうもこの作品は上遠野氏の他作品とリンクしているらしく、それらを未読の読み手には、不明なことが多く、少々手に負えないところも……。そうはいっても、TVのヒーローもののストーリーが絡んできたり、そのヒーロー役だった少年が、冒険の道連れだったり、伝説の金貨を探したりと、いかにも、現代の少年向け冒険小説。十分楽しめた。でも一番良かったのは、実は「あとがき」。そこで初めて、得心がいった。

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  川畑 詩子
 
評価:★★
 小学生時代の雑誌夏休み号の付録にあった読み物集を思い出す。少年少女が謎めいた人と出会い、事件に巻き込まれて探偵のように解決するというパターンの。その頃に読んだなら、大人っぽくてかっこいいと思ったかな。なにやら株や企業買収事件の当事者を彷彿とさせるような寺月恭一郎と江賀内。よく分からないけど経済の裏の本当の原理を言っているような格好いいセリフ。サイドストーリーのように挿入されるのは善と悪は絶対的では無いといわんばかりの哲学的なヒーロー物。雰囲気は盛り上がるはず。なのに、わくわくできなかった。

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  神田 宏
 
評価:★★
 凝った装丁、懐かしみを帯びた挿画、それはアニメの一場面のようだ。漢字にはルビが打たれ、少し厚めのページは角がまあるくカットされている。少年の頃、学校図書館で読んだ冒険物語を思い出す佇まい。懐かしさの中に『酸素は・・・・・・』の不思議めいた表題。すわっ、これはジュブナイルのニューウェーブかと期待しながら読み始めた。ヒーロー物のTVドラマの主人公を演じる青年や、やや謎めいた「世界の支配者」=「オキシジェン」と呼ばれる青年や姉弟が謎の金貨を巡って冒険活劇に出立。うーん、メタフィクショナルな装いまで仕込むとは。と、うなってみたものの、、ついぞ物語りは立ち上がらず、書割めいた台詞が空しく宙を舞うばかり。『自分だけの確固とした意思、そんなものは存在しない』といった「オキシジェン」のアフォリズムめいた言葉が悲しく響く。この、素敵な装丁に★プラスワンってところで・・・・・・ 

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  福井 雅子
 
評価:★
 公園で出会った不思議な男から受け取った謎の金貨。その謎を追って主人公の健輔とその姉、テレビドラマで正義の味方を演じる売れない俳優の3人が、怪しげな集団と戦うという、ミステリのようなSFのようなヤングアダルト小説。
 ミステリとしてはプロットが甘く、SFとしては内容が浅すぎて中途半端である。文章は、稚拙というべきか、軽くて親しみやすいと言うべきか、これまた悩むところだ。ただ、あとがきを読むと、著者が描きたかったものは「人間にとっての酸素のように、ひとりひとりの心の中に絶対に必要な大切なものというのは目に見えない(存在はしているが普段は認識していない)……それが何かを知ろうとすることが生きるということ……」というメッセージのようだ。だから、10代の若者向けメッセージとしてあえてこの内容とスタイルを選んだと思われるのだ。なるほど、ヤングアダルト層の読者ならまた違った評価があるかもしれない……。

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  磯部 智子
 
評価:★
 困った……子供が読んだら面白いのだろうか? いや子供を十羽ひとからげに考えるわけにもいくまい。我が家の子供に助けを求めたが訳が解らなかったと言うので、ほとんどお手上げ状態になり少し調べてみた。登場人物たちは読者お馴染みのメンバーが何人かいるらしく、本作だけでは、なんのこっちゃ?状態だった暗示的な登場も、その持つ意味が解るらしい。小5の少年が奇妙な男に出会うことから冒険が始まるのだが……文中からの引用をつなげて作者のメッセージを想像する事は出来るが、読み物としては思わせぶりが過ぎ、作家が伝える「大切ななにか」を陳腐な説教だと感じてしまう「感性が一致しない」読み手だけに責任を負わせることが出来ない、物語として説得力を持たない至らなさがある。

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  林 あゆ美
 
評価:★★★
 読んでいて、子どもの頃にもどって読書しているような錯覚におちいった。なぜだろう。不思議になつかしい感じにさせる話なのだ。
 公園でヘンな男性に出会う少年。男はなぞなぞのような言葉を少年に伝え、それから不思議なできごとが起きる。
 著者の作品は初めて読むので、あちこちの言葉が他の作品にどうつながっているのかはわからない。それでも、少年が新しい出会いでもってつながる人たちと、冒険していくのを読むのは楽しかった。周りの音が聞こえなくなるような本読みは、子どもの頃の方が格段に多かった。そんな時間を久しぶりに感じた。

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